たとえば、(T主)

もしもあの時、僕に力があれば君を守ることができただろうか?

300年生きてきたってことも、
呪いの紋章を持っていたって事も、
正直そんなことは僕にとってどうでもよかった。
僕にとって問題だったのは親友を置いて行かなければならなかったこと。
僕のことを親友と呼んでくれた。
僕のことを信じてくれた。
その親友を置いて僕は逃げなければならなかった。
大切なものを託してくれたあいつを僕は見捨てなければならなかった。

あいつは笑ってた。
だけど、泣いてた。
そのどっちもあいつの印象の中にはない表情だった。
だから余計に痛かった。
だから余計に悲しかった。

僕に力があったら君を守ることができただろうか?
僕に力があったら君を見捨てずに済んだだろうか?
一緒に戦って、一緒に逃げることができただろうか?

「一生のお願いだよ、おにいちゃん」

ああ、僕はまた君を見捨てるのか。
記憶の中にあるあいつよりも小さな体。
継承されたばかりの『死神』
ああ、僕は何も変わってない。
あの時と同じ笑顔。
あの時と同じ涙。
いつも明るいあいつとは正反対の印象だ。
だから余計に痛い。
だから余計に悲しい。

僕にもっと力があったら君を守ることができただろうか?

小さなあいつの泣き顔と記憶の最後にあるあいつの背中が重なって見えた。

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