運命に嘲笑われるのはごめんだね

何が一番嫌かって、もう二度と顔も見たくない奴の顔が僕のそれとそっくりだってことさ。
 
いや、正確に言うとそっくりなのは僕の方。
というか、全く同じ顔。
 
鏡を見るたび虫酸が走る。
いっそのこと仮面でも付けてしまおうかと何度も思ったけれど、取り敢えず今は保留中。
 
実はもうひとり僕と同じ顔をした奴がいる。
僕より先にこの世に現れたそいつは「土」の力を与えられ、あの国で「神官将」として軍事の一端を担っている。
 
器と駒の両方を手に入れたわけだ。
 
そんなこととは露知らず、我が兄上は神官将であり続けるのだろう。
 
あいつを妄信的に信じて。
もしくは、疑う余地すら与えられず。
 
僕はそんなの御免だね。
 
誰かに指図されるのも、
誰かに決められた運命を辿るのも、
誰かの下に付くこともまっぴらだね。
 
だって僕は「風」だから。
 
本当はここにいることだって嫌なんだ。
師匠の言い付けだから仕方なくいてやるけどね。
だけど、僕は星の示す道なんてこれっぽっちも信じちゃいないってこと覚えておいてよね。
 
運命なんて、そんな曖昧なものに嘲笑われるのはごめんだね。

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