何が英雄だ
どこかに驕りがあったのは確かだろう。
世界の理をその一端だけでも手に入れたということ。
それを手に入れたのが難攻不落と称されるあの神殿だということ。
力を手に入れたことで不可能なことは何もないのだと思い込んでいた。
それを欲した理由は何だったのだろう?
「守りたかった」
生まれ育ったこの土地を。
この土地に生きる人々を。
そして、大切な人を。
そのために力が欲しかった。
それなのにこの惨状は何だ?
守るべき土地は無残にも焼き払われ、
守るべき人々の命も多く失われた。
これは俺の望んだことじゃない。
これは俺の求めたことじゃない。
守るべきものを守れなくて何が「英雄」だ。
ふと上げた視線のその先には、
ひとりの少女が縋るような目で俺を見つめていた。