雨が降ってきたな……

男は迷っていた。
 
敬愛する主への忠誠か。
その主の息子への情か。
 
 
彼は元来簡単な男だった。
 
口より先に体が動く。
 
故にその行動は誰よりも正直で真っ直ぐ。
同僚の飛刀使いは「短絡的」と称していたが。
 
普段の男であればそれを見たならば迷わず皇宮へと走っていただろう。
 
しかし「それ」は、
彼の小さな主の唯一の親友で、
彼にとっては気の合う弟のような存在で、
そして、すぐには動かせる状態ではないほど傷ついていた。
 
そっと窓から外を窺うと何かを探している体の近衛兵の姿があった。
 
 
主への忠誠か?
幼い主への情か?
 
 
「雨が降ってきたな・・・・・・」
 
男の腹はもう決まっていた。

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