笑顔の待つ家

ある意味で、その少年は「笑顔」とは程遠い存在だった。
 
生と死を司る紋章、
あるいはソウルイーターとよばれるものを少年は持っていた。
 
死は悲しみ。
死は嘆き。
死は痛み。
 
誰もが避け、忌み嫌うもの。
 
それを運ぶ少年も然り。
 
 
その家はとある帝国の首都にあった。
 
かつては帝国の将を務めた者の持ち物だったらしく質素で無駄のない造りをしていた。
周囲の家と比べると遙かに大きく、そこに多くの人間が生活をしていただろうことが窺える。
 
しかし、そこにはもう誰もいない。
 
その扉が開くことは二度と無い。
その窓に明かりが点ることは二度と無い。
かつてその家に溢れていた笑顔は二度と帰ってこない。
 
 
その家は少年を待っていた。
 
死を運ぶ少年を。
悲しみを運ぶ少年を。
 
かつてその家に笑顔をもたらしていたその少年を。

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