高校一年 04/14(月)
一年は基本は基礎トレと球拾いなんやけど、俺らは一応全国行った実力あるし、せやから部長は現レギュラーとまではいかんでも、先輩らと一緒にコートに入ることを許可してくれた。ま、今のレギュラーにも負ける気はせぇへんけどな。とりあえず、俺ら一年は校内ランキング戦があるまではあんま試合できひんから、部活後に自主練っちゅーことでテニスしとるんやけど。
最後に球拾いを終え、早苗がボールのかごを持つと白石が駆け寄ってかごを奪っとった。
「ちょっ!ええよ持たなくて!」
「ええって。部活終わった後も自主練の片付け手伝わしてしもてるし。それに今日めっさ助けてくれたやろ?たまには甘えとき。」
部室へ向かう途中で二人の会話が聞こえた。あまあまやな、こいつら。けど、さっき気付いたように、嘘みたいに何とも思わん。友達が幸せそうやと、自分も嬉しなるわ。
「蔵リンおっとこまえ〜」
「小春!浮気か!」
「あ、せや、アタシ青学の海堂クンからメール来てたん忘れとった。」
「え!いつの間にメアド交換!?小春ううぅ!それはれっきとした浮気やで…」
「嘘や。」
抱き着く俺に向かって小春は爽やかな笑顔で、言い放つ。ケンヤなんて隣で、珍しくユウジがへこんどる!言うて爆笑。むかついたから一発殴っといた。
部室では中央のテーブルで弥栄がなんや書いとった。あぁ、部日誌か。さっきのことで、ちょっと気まず思ったけど、相手はそうでもなかった。俺らに気付いた弥栄は顔を上げ、白石に携帯が鳴りっぱなしだと告げ、再び部日誌に視線を落とした。
「な、なんやこれっ!」
白石の声に、自分のロッカーを開けっぱなしのまま白石に近寄った。携帯を見ながら神妙な顔しとる。今日誕生日やから、どうせ女からのメールが多過ぎ、とかそないなことやと思ったんやけど。
「うわ…、なんやこの着信…」
「19回やて。こわッ!」
カチカチと着信履歴をスクロールするのを横から覗き込んだ。それは予想とは反して、全部財前からやった。え、あの財前が?とみんな同じ表情を見せとる。着信は放課後になってから5分10分おき。こ、こわ…。すると着信履歴を出しとった画面がパッと光り、着信中、の文字。それはやっぱり財前光の名前が浮かび上がっとって。恐る恐る白石が携帯を耳に持ってく。それを俺らは周りで聞き耳を立てた。
『白石いぃぃぃぃ〜!!』
思わず全員が全員、耳を塞いだ。
「な、金ちゃん!?」
『おっそいわー白石!何回もかけたんやでー?』
財前の携帯から電話をしとったんは金ちゃんやったらしい。いや、まあ、そっちのが納得や。財前があないに白石に電話しとっても気持ち悪い。
「金ちゃん、こないだ二年生なって携帯買ってもろたやろ?なんで財前の携帯から?」
『なくしてしもた!』
こないだって、まだ二週間もたっとらんで?さすがは金ちゃん。
「こ、声でか…」
「なんやー財前やなかったんか。」
「金太郎はんでしたか。」
「あー納得やわ。毎年恒例やもんねー。」
白石の後ろで俺、ケンヤ、師範、小春の小声での会話。っちゅーかほんまに声でかすぎ。ここでも電話の内容が聞こえる。
『白石ィー!タコ焼き行くで!』
「はいはい。もうちょっと待ってなー?今まだ部室やから。」
『はよはよ!財前が怒っとるで!』
「やから金ちゃんが電話しとるといつまでも着替えられんし、そっち行かれへんのやけど。」
『ほな2分後に校門とこで!はよ来てや〜』
…財前が怒っとる理由はそれやないと思うで、俺は。しっかし金ちゃんの世話大変そうやな。財前大丈夫なんやろか?あいつも毒手つこてたらおもろいのに。
「ユウくんはよ着替えるで?タコ焼きや!」
「あーいつぶりや?ケンヤの誕生日以来か?あ、ちゃうか。金ちゃんの誕生日?二週間前やんか…」
「タコ焼きばっかやなぁ、アタシら。」
苦笑いを見せる小春。俺らは、金ちゃんの意向もあって、誕生日は道頓堀のあのタコ焼き屋でパーティー。財前のときは例外でぜんざいパーティーやけど。今日は高校入って初、白石の誕生日タコ焼きパーティーや!俺はプレゼントのお笑いDVD『お笑いプリンス』が鞄に入っとることを確認し、制服に腕を通した。