高校一年 07/01(火)


期末試験も終わって、夏休みが始まるまでは短縮授業が続く。高校は中学とちごおて、お笑い三者面談はない。三年は進路選択あるから大変やなー、と考えとると、突然姿を現した小春に行く手を阻んだ。


「緊急会議や!」
「は、はぁ?」


引きずられるように連れて来られたんは、1組の教室。白石が自分の席にどかりと座っとって、向かい側に座らされた。白石の隣には早苗がおって、俺の隣に小春が座った。


「な、なんやの…」
「単刀直入に聞くで、ユウジ」
「お、おん」
「弥栄さんのこと、どない思う?」


またそれか、と内心ため息。答えは分かりきっとるくせに。嫌いや、と短く答えたった。


「やったら質問を変えよか。」
「なんやの、尋問みたいに…」
「尋問してんねん。ユウジ、ほんまに弥栄さん行ってもうてもええん?」


まるで俺だけが行ってほしないみたいな。そない物言いに腹が立って、身を乗り出した。


「せやったら、自分らはどうなん?俺は関係あらへん。早苗はちゃうやろ?大事な友達やろ?ちゃうんか?」


早苗は困ったようにふー、と息をついた。なんやねん、それ。俺が悪いみたいやんか。


「あたしは…舞が菊丸くんに会いたいならしゃあない思っとる。」


菊丸。弥栄の、好きな男。せや、忘れた訳やない。弥栄には前から、恋い焦がれとる男がおる。俺には関係あらへんことやけど。


「な、あたしユウジの応援したいねん。」
「…勝手なこと…言うなや」


ほんまに、勝手なことばっかり。早苗も白石も小春も。夢かなんか知らんけど、幸村やって。この俺が、弥栄を気にしとる?この俺が、弥栄を好き?勝手なことばっかり言いよって。ふざけんなや。


「俺は、あないうじうじした女、一番嫌いや」
「それ弥栄さんのことやないやろ?」


白石の素早い返答に、はっ、と息を飲んだ。せや、弥栄はもう、前みたいにうじうじしとらん。自分に自信持って、俺に向かってきたやないか。ついこないだの話。早苗との関係が危うくなったときも、俺が拒絶したって、いつだって向かってきてたやないか。俺を立ち直らせたのやって、弥栄やったやろ。じゃあなんで?なんで今でも、嫌い嫌い言うてんの…


「ユウジはいつも真っすぐで、自分の気持ちに正直で、裏表がなくて、……けど、ユウジはいつも、肝心なことは最後まで隠すよな?」
「早苗ちゃんのことやって、そうやったやろ?最後の最後まで、隠し通したもんな?」
「けど、弥栄さんはおらんようなるんや。最後までなんて、隠してられんで?」


早苗、小春、白石。ほんまに勝手なことばっかり。分かったような言い方しよって。弥栄は東京に行く。菊丸に会いに。悔しくて、こぶしを握りしめた。


「あ、せや。話は変わるんやけど、ユウくん部室にタオル忘れてへん?」


ほんまにすごい変わりよう。ま、ええか向こうから変えてくれるとは思わんかったから。タオル…忘れとったっけ?確認がてら見に行くか。


「ユウジは、自分に正直でこそユウジやで!」


呑気な早苗の言葉を背に、俺は教室を出た。相変わらず勝手なことばっかり。けど、あいつらの言葉は全くまちごおてない。肝心なことは最後の最後まで隠し通す。ほんまや。