高校一年 07/20(日)
携帯を開いてもメールなんか来とる訳なくて。待受が無情にも今日の日付を伝えてくる。7月26日まで、あと6日。携帯を閉じ、ポケットにしまいながら、ため息が出た。
「ユウジ、ほんまに大丈夫?」
大丈夫な訳あらへんやろ。今頃弥栄は菊丸と会っとるんやで?俺は大阪におって、何もできひんし。ケンヤの言葉を聞こえない振りをしながら、残りのパフェを口に運んだ。
「せやから言ったやろ?はよ言っとけばよかったんや。」
「なに?なんの話?」
白石の真っすぐな視線が突き刺さった。ほんまにケンヤは空気読めへんようで。俺は白石を睨んだ。ほんまのこと言われて、悔しかったんや。
「ユウくん…」
心配そうな小春には申し訳あらへんけど。ほんまに、ちょっとつらいんや。俺、何回叶わん恋せなあかんの?報われんにも、程があるやろ。
「っちゅーか、なんでそない空気悪いんすか。人様の誕生日なんすけど?」
せや。今日は財前の誕生日。運ばれてきた白玉善哉を頬張りながら、めっさ不機嫌そうにしとる。でも財前の周りには白玉善哉が9個も並んどって(全員一個ずつ奢ることになっとる)見てて少し恥ずかしい。ファミレスの店員さんもびっくりしとった。
「っちゅーか、あれっすね。弥栄先輩もう行かはったんすね、東京。」
思わず反応してまう話題。触れられたないことに、俺は肩を揺らしてしもた。それを当然のように見とった白石夫妻はわざとらしくため息ついとる。
「ユウジがそないヘタレやったなんて…」
「謙也とキャラかぶりすぎやろ、ほんま…」
「黙れ白石夫妻ッ!」
「ユウジ先輩は昔っからヘタレやないですか。何を今更」
「お前は黙って善哉食っとれよ!」
「ユウくん、ちょっと落ち着きや?他のお客さんに迷惑やろ?」
「小春うぅ〜…」
隣に座る小春の腰に抱き着くと、「や、アタシ味方な訳やないからな」と辛辣なお言葉をくださる。しまいには「っちゅーか、はよ認めてまえよコラ」なんちゅーことまで。
「あ、せや。光、あんた舞に余計なこと言うたやろ?」
「余計なこと?…や、なんも」
「え?やって舞が光から聞いたって…」
何の話かよう分からんかったけど、財前の「あぁ、ユウジ先輩のこと?」っちゅー発言で理解。思わずテーブルに両手を叩き付けて立ち上がった。
「おまっ、なに、あ、あいつに言うたんか!おいっ!」
「あ〜、そないなこともありましたかね」
「はぁっ?」
「やって弥栄先輩、明らかにユウジ先輩に恋しとりますって顔しとったから。釘さしとこ思ったんすわ」
ぴしゃり、と水を打ったような沈黙。遠くでファミレスのBGMが流れとる。押し黙る俺らをよそに、財前はもくもくと白玉善哉を食っとった。
「っちゅーか何?ユウジ先輩、やっと吹っ切れたんすか?」
「え…?あぁ、まあ…」
「そっすか。おめでとうございます。今度は両想いっすね」
棒読みの台詞やのに、かあっと熱くなる頬。みんなの前で、何言うとんのこいつ。いてこますぞ。とか思いつつ、何も言葉が出てけーへん。やって、財前までもが根拠のない勝手なこと言いよるから。
「…ちょっと光、当事者おるんやけど。」
「ええやないっすか。昔のことなんやから。」
せやなぁ。早苗を過去に出来たのも、弥栄のおかげやったな。ほんまに、東京行ってまうんかな。中学の頃、当たり前やったこのメンツ。高校に上がってたった何ヶ月かで弥栄がおるんが当たり前になった。
『まだみんなと一緒にいたいの』
あいつはそう言ったやないか。なんで、行ってまうんや。騒がしいチームメートの隣で、俺は視線を窓の外に流した。