小南と私は同時期に入隊した。
厳密に言えば私の方が少し早くボーダーに入ったけど、喧嘩したときに「私の方が少し先輩だもんね」「ほんの少しだけじゃない」という会話に使うくらいしか利用価値はない。
何が言いたいのかというと、それだけ付き合いが長いということだ。さらに同い年ということもあって気が置けない間柄である。玉狛と本部に別れてからもちょくちょく連絡を取り合ったり、ご飯を食べに玉狛へ行ったり、休みの日に遊んだりしている仲良しさんだ。


『もしもし?』
「小南? なまえだけど」
『ケータイにかかってきてるんだから分かってるわよ。どうかしたの?』
「明日暇になったからそっちに行けそうだよ」
『ほんと!? 待ってたんだからね!』


寮に住んでいて、自炊するのがめんどくさいとご飯をぬいてしまう私を心配してか、玉狛のみんな─特に小南とレイジさん─はよく玉狛に食べに来いと誘ってくれる。タダで美味しいご飯にありつけるので、お言葉に甘えて3日に一度くらいのペースで玉狛に行く生活を送っている。行き過ぎて、もはや玉狛の一員なのではと思った時期もあったけど、今はもう気にしていない。レイジさんに胃袋つかまれた。
ただ、最近はごちゃごちゃしていて落ち着かない状態が続いていたので、玉狛に行くのはひさしぶりなのである。


『あ、なまえに言ったっけ?』
「何を?」
『玉狛に新人が入ってきて、あたしに弟子ができたのよ!』
「えーー!小南に弟子?! ちゃんと教えられてるの!?」
『んなっ! なんか失礼じゃない?! あたしだってちゃんと教えられるわよ!』


小南が教えてるところなんてイメージがつかない。だから弟子なんて存在が出来るとは思わなかった。そんなこともあるのか、となんだか感慨深い。
でも、たぶん戦って負かしたあと自分で反省点を見つけなさいって方針だろう。今まで教えを請われてもそんな感じだった。だって小南、感覚派だし。言葉にして説明するとか出来ないと思う。
それにしても小南に弟子か……きっとそれなりに強いか才能がある子なんだろう。弱い子を小南が弟子にするとは思えない。


「そっかそっか。小南に弟子かー。明日楽しみだなぁ」
『しかも明日の当番はレイジさんよ』
「マジか!それは是非とも行かねば!」
『ほんとなまえはレイジさんのご飯が好きねー』
「だって美味しいだもーん」


えへへ〜、と気の抜けた笑い声が出てしまう。小南と話してるとフワフワした気分になってしまうのは何故だろう。きっと、たぶん、実家にいる兄弟と話してる感覚なんだろうな。旧ボーダーの基地はあそこだから、玉狛は私の実家と言っても過言ではない。そういうことなら、小南は双子の片方、迅はお兄ちゃんで、レイジさんはお母さん、林藤さんがお父さん…? 陽太郎はなんだろ。甥っ子かな?
でもまあ、強ち間違いではないかもしれない。


『じゃあ、明日待ってるから!』
「うん、また明日!」


とりあえず、実家に帰るとしますか。

じっか
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