玉狛によくお邪魔している私ではあるが、屋上に来たのは久しぶりだ。生暖かい風が首をスルッと撫でるように吹いている。汗がじわじわと染み出してきて不快だと感じるものの、この星空を眺めていたいという思いの方が強く、動く気にはなれなかった。
そんなとき私は突然思いついた。この暑苦しい状況を緩和する方法を。

それは、最近流行りの夜に入るプール、ナイトプールだ。
確かにここにはオシャレな灯りもないし可愛い浮き輪もないけど、綺麗な夜空とよーたろーの子ども用のビニールプールがある。これを使えば出来るはず。我ながらナイスアイデアである。よし、小南と栞ちゃん誘って、女子会〜ナイトプール編〜 をやろうではないか。アイスを食べながらでもいいかもしれない。考えるだけで楽しくなってきた。そうと決まれば行動あるのみ!



* * *


「えーーーなんで迅しかいないのーーーー!!!?」
「おれだけで悪かったな」


そして決行当日。玉狛に向かえば、女子はおらず。迅の姿しかなかった。まあ、迅以外の男性陣は分かる。よーたろーはもう寝てるはずだし、とりまるは基本おうちに帰ってる。レイジさんはきっと飲みに行ってるのだろう。本部を出るとき風間さんと諏訪さんと雷蔵さんが一緒に帰ろうとしてたから、たぶん21歳組で飲みに行くのではないかなと勝手に思っている。そしてここのボスである林藤さんはよく分からない。私、あの人の私生活が全然想像出来ないんだよね……じゃなくて、女の子2人は? ちゃんと連絡したのに。


「なんで!? 小南は? 栞ちゃんは?」
「女性陣は帰りました」
「うっそーーん!!」
「だって何時だと思ってるの…」
「今は10時だね……じゃないよ! 私はちゃんと小南に伝えた! そしたら待ってるって言ってた!」
「え? ………あー…そういうことか」
「そういうことってなに!? どーゆーこと!?」


聞いてもはぐらかして2人が来ない理由を迅は教えてくれなかった。小南みたいに胸ぐら掴んで揺らしても白状しない。それに意外とこれ疲れる。プラス暑い。トリオン体の迅とは違ってこっちは生身なの。仕方ない。


「もう迅でいいから一緒に入ろうよ」
「え、その小っちゃいプールに2人で?」
「そうだよ?」
「無理だろ」
「大丈夫だって。というか迅はなんでトリオン体なの?」
「おれ入る気なかったし」
「えーー入ろうよーーー」
「それに水着持ってない」
「別に水着じゃなくたってよくない? トリオン体じゃつまらないじゃん」
「だって外暑い」
「暑いところで水遊びしながら星を眺めるっていうのが最高なんじゃんか〜!」


足をバタつかせて抗議する。やっぱり暑い。
プールに早く入りたいけど残念。まだ水を入れてないのです。
そして結局、迅は私の粘りに負けて着替えに行った。私はビニールプールにホースを突っ込んだあと、お着替え。とは言ってももうすでに中に水着を着用しているため、Tシャツとホットパンツを脱ぐだけ。まあ、これで下着忘れてたらまじやらかしなんだけど。ちゃんとあるよね。家を出るときにも確認したけど再度鞄の中を確認する。大丈夫。ちゃんと上下ありました。
プールに水が溜まる様子をジーっと眺めていると、迅が戻ってくる音がした。おかえり、と振り向くと、そこには膝下のジーパンを履いた上半身裸の男が立っていた。


「わぁ…」
「…………なんだよ」
「……迅ってそんなに上半身…ふぁ………」


あのね、やばい。すごくやばいの。
なにがやばいって、引き締まっててかっこいい身体してるの。腹筋割れてる。胸筋もレイジさんみたいに服の上から盛り上がって分かる程ではないけど、キュッてある程度鍛えられてて……まじか。すげぇ。なにこの胸の高まり……まさか恋?!なんてね。私、脱いだら意外と筋肉ありますみたいな身体が大好物なんです。ありがとうございます。まさかこんな近くにいるなんて思ってなかった。
しかもなんかエロい。いつもの水色着ないだけでこんなに大人っぽく見えるのか。伊達に高校卒業してるだけある。はー…まじか。19歳無職すげぇ。


「え、触ってもいい…?」
「………えっち」


いや、それは人のおしり触りまくってるおめーに言われたかねぇよ。


なつのよる
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