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灰色の瞳


第1話


 玄関にぐったりと伏せた少年を見下ろし、男は息をついた。高鳴る胸を押さえ、速くなる息を生唾ごとゴクリと飲み込む。
 少年は白い小さな尻が剥き出しになっている。シャツは胸まで捲り上げられ、ピンク色の乳首が露出していた。
 男は曝け出した自身の性器を撫でる。赤黒く長大なそれは濡れ光り、すでに1度少年の肉体を貪ったのは明らかだ。それでもまだ暗い欲望は損なわれず、血管を浮き上がらせ硬く屹立している。
 男は喉の奥で笑うと、少年の細い首筋にキスした。吸いつき、うなじまで舐めしゃぶると少年はビクンと震えた。
「……めて」
 まだ性別の区別もつかないような声が哀願する。男は再び深く息を吐くと少年を抱き上げた。
「君の部屋に行こう。場所ならわかってるから」
 男の家は少年の家の斜向かいにあるマンションだ。そこから望遠鏡で少年の生活をずっと観察してきた。
 両親と妹が1人、幸せを絵に描いたように仲睦まじく、愛し合う夫婦と快活な子供達。
 少年にはいつも登下校を共にする親友がいたが、彼は少年にべったりだった。少年の手を取り腕を取り、時には肩を組む姿に男は年甲斐もなく嫉妬した。そうして男は気づいたのだ、自分はこの少年に惹かれているのだと。
 以来、登下校はもちろん帰宅してからの様子もつぶさに観察しては、いつか少年の身体に触れる日を夢見ていた。
 今日も少年は親友と共に帰宅したが、男は宅配業者を装って少年を呼び出すと、そのまま中に押し込んだ。
 少年の身体は想像以上に華奢で、年齢らしく日に焼けた肌はきめ細かく、触れると自身の手の平がいかにガサついているかを実感した。男の愛撫に粟立ち強張る様は可憐で、男はそのか弱い肉体に夢中で愛欲を叩きつけた。
 少年ははじめのうちは抵抗したが、妹を人質に脅すと急におとなしくなった。その物分かりのよさがまた男の好みに合った。

 少年の部屋は物が少なく、よく整頓されていた。ベッドに横たえると、少年は潤んだ目を開く。
「誰なの……お願い、もうやめて」
 目尻に溜まっていた涙がホロリと頬を滑る。男はその涙を唇で吸い取り、少年の懇願を裏切って無抵抗の身体をまさぐる。
 汚された後孔に指を挿れると、少年は下唇をきつく噛み締め顔を歪めた。年齢に似合わぬ艶っぽいその表情は、男との行為のうちに表われたものだ。自分の手技で少年の身体が作り変えられていくことに、男は満足する。
 いやらしい音をさせて中を虐めると、少年は泣き喘いだ。筋肉もまだそうついていない、精通も迎えていない身体は、男に無理矢理開かれたことで不均衡な淫猥さを放つ。
「はぅっ……う、あっ」
「さっきまで何も知らなかったのにね。さて、可愛い顔を見せて」
 男は少年の身体に覆い被さる。足を掴み肩までぐっと押し上げると、柔らかい身体はすんなりと男を受け入れる体勢になった。
「や、」
「やめないよ」
 男は漲る怒張を少年の中に突き挿れた。少年は声も出せずに仰け反り、シーツをきつく握り締める。最奥まで貫くと、男は恍惚の笑みを浮かべた。
「っあぁ、すごい……僕の精子欲しがるみたいに中が痙攣して。あは、またイッてる? 精通してないのに中イキするなんて、本当に女の子だ。ねぇほら、自分のお尻見てごらん」
 男は少年の顎を取ると、繋がった場所が見えるようにさらに少年の身体を折る。しかし少年の色の淡い目は宙を彷徨ったまま焦点が合わない。
「わ、かんな……」
「ここだよ、ほら」
 男が穴を広げるように手を添える。少年はやはり曖昧な視線で眉を顰めると、唇を震わせた。
「僕は、目が……見えない、」
「え?」
 少年のガラス玉のように透き通った瞳からポロポロと涙が落ちる。
 あの、やたら親し気に見えた親友――彼は、少年の目の代わりだったのだ。
「そうだったのか……ごめんね、可哀想に。でも大丈夫」
 言いながら、男はゆっくりと律動を開始する。繋がったところからは精液が溢れ、少年の唇からは虚ろな喘ぎが。
 少年は性行為がどんなものか見たこともないのだろう。自分が何をされているのかさえ正確に把握できていないかもしれない。あまりに純真無垢な少年に、男は神秘性を感じて震えた。
「なんて美しいんだ。今、君と僕がしている行為は……」
 無抵抗の少年を犯しながら、感極まった男は落涙する。
「ねぇ、気持ち好い? 今、僕と君の身体は繋がってるんだよ。僕のおちんちんでここ、君のお尻の奥を突いてるんだ」
「おち、んち……? う、そ、きもひぃ……っ」
「気持ち好くていいんだ。君には見えなくても、身体で感じてることが本当だ。もっと身を委ねて……正直になっていいんだ」
 男はゆっくり労わるように少年の中を出入りしながら、優しく口づける。少年の手から力が抜け、愛撫に応えるようにゆらゆらと腰が揺れ始める。
 少年の内壁はうねって絡みつき、時折キュンと締まった。
「んっ、ふ……っは、そこっ……あっ、すき、そこぉっ……あぁんっ」
 反応を見ながら、男は角度や速さを変えて少年を責めた。
「はっ、はぁ、あっ! いい、きもちぃ、よぉっ……あ、あンッ、んっ!」
 少年は男の首にしがみつく。堪らず、男の腰の動きはますます速くなる。
「頭、飛びそうになったらイくって言って」
「ふっ、う……ぁ、すき、すき、そこっ、イく……イく、イッちゃ……ひあぁっ!」
「もう少し我慢して」
「あああっ! ぁ、あっ! 待って、ん"――ッ! あ、なに、あっ、あっ、あ"っ!!」
 激しい動きの下で少年は目を見開くが、何も見えていないのかと思うと男は切なくなる。乳首を乱暴に可愛がると、少年は何度も達した。
「ううっ、う! うぁ、あっ、あうっ!!」
 高く鳴きながら、少年は少しずつ狂っていく。半開きの口から涎を垂らし、舌を出すと男の唇を探した。
「き、す……して、」
 掬い取るように奪うと、少年は必死に応えた。奥が狭くなり、男もギュッと目を閉じる。迫りくる頂きに抗いながら、がむしゃらに少年の身体を突き上げた。
「はっ、あっ! あ、あ"っ、あ"ぁっ、イく、イくッ」
「僕も、イくッ――!!」
 絶頂し続ける少年の最奥に、男は精を吐き出した。
「はひっ――ひ、ひぁ、あ"っ――」
 快楽に濁った目で男の顔がある辺りよりやや右後方を見つめると、少年はうっとりと微笑んだ。
「あ、はぁ……ひゅご、ぃ……こんな、」
 少年の腹は男の射精を受け止めてジンジンと熱を持ち、続きを強請る。挿入の度に擦られた前立腺は少年の身に余りある快楽をもたらしていた。
 幼い性器はうなだれたままだったが、代わりに乳首は恥じらいなくピンと起って雄弁に快感を語っている。
「これからは僕が君に世界を見せてあげる。まずは君の身体の中に、僕の愛をたっぷり描いてあげるからね」
「あ、は……おなかのなか、あつくて、おくズンズンされるときもちぃよぉ……もっと……もっとしてぇ……っ」
 男の性器を受け入れたまま、少年は腰を前後に揺する。その動きに男の欲望は刺激され、少年の体温に包まれたまま再び硬くなっていく分身を自覚していた。
「いいよ。天国を見せてあげる」
 男は少年の柔らかな頬を包み込んだ。
 少年の灰色の瞳の中にはもう、男の顔しか映っていない。

2018/01/06


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