かいはつは
山田と初夜
『山田⋯⋯ごめん、私初めてだから、上手く出来ないと思う』
山田「気にしないで。俺だって慣れてないし」
『うそ、』
山田「それと、こういうときくらい名前で呼んで」
『りょうすけ、』
山田「うん。大事にするから、なまえの事もらうね」
もらうって、なんか⋯⋯これからセックスするだけなのにお嫁に行くみたいな言い回し。山田の首に伸ばした腕を絡める。
『涼介にならあげる』
だから涼介、優しくしてね。耳元にそっと口付けたのを合図に、涼介の欲深んだ瞳に捕らわれ目が逸らせなくなった。
***
山田「痛くない?」
『んっ、ちょっとだけ⋯⋯っ、でも、へいき』
山田「大丈夫になったら言って」
『りょ、すけ、もうだいじょぶ、だよ』
山田「辛かったら言ってね?」
『うん』
事後 山田賢者タイム
そういえば⋯⋯初めての割に思ったより痛がらなかったなあ。本当は処女じゃないのかと疑ったけど、シーツに小さく赤い花が咲いている様子を見るに嘘ではないみたい。
本当はめちゃくちゃ痛かったけど、俺に心配させないようにすげー我慢してくれたのかな。痛みに強いと本人は言うけど、物凄く堪えてるだけでそうでもないと俺は思うから。
山田「⋯⋯ありがと、」
俺を受け入れてくれて。
『ん?』
なまえを想いのまま強く抱きしめる。
『わ、なになに』
くすぐったいのか、身を捩りながら俺の腕の中でくすくすと笑うなまえのその姿に心までもが満たされる。
山田「あー⋯⋯」
『なあに?』
なにも言わない俺を不思議に思ったなまえがキュルンと潤んだ瞳で俺を見上げる。あー⋯⋯、俺の彼女最っっ高に可愛い。
山田「幸せだなあ、って」
『んへへ⋯⋯ばか』
⋯⋯聞いた?皆様聞きました?うちの彼女、目を伏せて唇をはむっと薄く結んで、消えそうな声でバカって言いましたよ。俺にしか聞こえないような小さな声で。照れ隠しの仕方10000000000点満点可愛いくて心臓の辺りがぎゅーーーと締め付けられときめき苦しくなる。
山田「っ、」
『ど、どうしたの?』
山田「幸せすぎてツライ」
眉間に皺を寄せ口を一文字に結び歯を食いしばっていたら、勘違いしたなまえが心配そうに眉を寄せる。
『どこか痛いの?』
山田「こころ⋯⋯こころが痛い」
『ええ!なに?』
山田「なまえ、なおしてくれ」
『薬とかあるの?とってくるから場所教えて?』
山田「なまえがここに、ここにちゅーってしてくれたら治るから、お願い、助けて〜」
うーっと唇を突き出してなまえからのキスを待つ。すると、聞こえてきたのはなまえの冷めた声。
『は?』
山田「俺を救えるのはなまえしかいない。頼む!」
ね、ね、となまえに唇を突き出して求愛していると、呆れたように小さくため息をついたなまえがもぞもぞと俺の腕の中から抜け出す。
『仕方ないなあ、』
なまえからキスして欲しいと思ってることがバレたんだろう。照れながらも控えめに触れるだけのキスをしてくれたことが嬉しくて、にやける顔を隠すためになまえの頭を胸元に寄せた。
『おにいさん、治りましたか?』
山田「んー、多分」
『ここからすごいどくどく聞こえるけど大丈夫ですかあ?』
心臓に近い位置にいるなまえに、俺の鼓動の音は全て筒抜けのようだ。間抜けな自分が情けなくて顔に熱がこもる。
『⋯⋯ふふ、ダメみたいだね』
ひょっこりと俺の腕の間から顔を覗かせたなまえがしてやったり顔で俺に笑顔を向ける。なにをしても可愛くてしょうがなくて、思っていたよりなまえのことを本気で好きだったんだと自覚した瞬間でもあった。
山田「⋯⋯情けなくてごめん」
『んーん、可愛くて好きだよ』
山田「それ俺の台詞な」
『私が思ったことだよ』
山田「⋯⋯はぁ、俺の負け」
『何にも競ってないんだけど』
くすくすと笑っていたなまえだけど、俺の雰囲気が違うことに気付いたなまえは小さく俺の名前を呼んだ。
山田「キスしていい?」
『⋯⋯⋯⋯うん』
一生大切にする。言葉には出来なかったものの俺は心の中でなまえにそう誓った。
***
北斗「ほら、」
寝る前、毎度お馴染みのマグカップに入眠しやすくなる紅茶を淹れてなまえにだす。これ飲むと不思議と一度も起きることなくぐっすり眠れるんだよね、となまえのお墨付き。困ったら、悩んだら、疲れていたら、北斗の家でこの紅茶を飲む。そしたら次の日には疲れも取れて体が軽くなっているはずだから。たまに寝過ぎて体痛い時もあるとは思うんだけどね。
『ほくちゃんといると、よく眠れるみたい』
寝る支度を終えたなまえは、俺の腕の中にすっぽりと収まる。
北斗「安心してお休み」
とろんと降りていくなまえの瞼。長いまつ毛の影が揺れる。
北斗「俺が、全てのものからなまえを守るから」
眠ってしまった なまえの柔らかい頬を撫でる。この時間がとても好きだ。無防備に幼い寝顔を晒すところも、どこか俺の素肌に触れてくるさり気ない甘えたさも、浅く深く呼吸するたびに微かに動く小さな肩幅も、全部が全部愛おしくて堪らない。
寝ていて抵抗されないのをいいことに、最初になまえに手を出したのはいつだっただろうか。なまえとキスしたい欲望を抑えるために、寝ているなまえの色めきぷるんとした小さな唇にこっそりと口付けたのがきっかけだったと思う。そこから俺の支配欲と優越感が徐々に膨らんでいき、気付けばなまえは寝てる間に俺に体を弄られるようになってしまって。これも全てなまえのため。でもまあ、そんなこと、なまえは一切気付きやしないんだろうけど。
↓
『うっ、う、あ♡や、やぁ⋯ほくっ』
北斗「んぅ?なぁにがヤなのよ」
『んっ♡こんなの、しらな⋯ぁ♡あ、ずっときもちい、のぉ』
北斗「なまえのいいところ全部知ってるの、俺だけだから、さ⋯⋯っ」
『あっ♡や♡やら⋯っ、きもちいの、とまんな、ぁ』
俺の下でとろとろに溶かされて鳴されて、気持ちいいってことしか考えさせないくらいになまえのいいところを知ってるのは当たり前でしょ?なまえのことが好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで、なまえのいいところを開発したのは俺なんだから。どこが弱いのかも勿論全部把握済み。
北斗「あーもー、涎まで垂らしちゃって。勿体ない」
『んぅ、ん、んっ♡あ、むり、むりほく、ほくっ♡』
北斗「⋯っ、」
『ほく、ほきゅ、きも、ち♡あ♡』
堕ちたな。そう自信を持てたのは早かったかもしれない。なまえの目にはハートが浮かんでいる。
こんな淫らな表情を見せてくれるなんて、なまえはいつも俺の予想の何倍も上をいくからお陰様で俺が堪えきれない。
『んぅ♡や、なんか、おっき⋯♡あん、なんれ、ぇ』
北斗「⋯⋯っ、なまえのせい」
『ちが、なまえわるくなぁ⋯っ、も、らめ、だえ、』
北斗「ん、」
『あ、ん、あたま、あたまおかしくなる、んっ♡』
北斗「なまえ」
『んあ♡』
なまえの頭を掴んで耳元に顔を寄せる。
北斗「それが本当の"キモチイイ"だよ」
吐息が耳に当たったからか、包まれている中にキュッと締め付けられる。
北斗「⋯⋯ふ、キモチイイ?」
『ひあっ、んぅ⋯んっ、あんっ♡きもち、きもちい♡』
きもちいよお、ほく、すき。なまえの口から甘ったるい声で甘い台詞が出る度に俺自身も堪えるのがキツくなってきて。
北斗「ごめん、そろそろいく」
『なまえは、も、いっちゃう♡ひゃんっ、いきそうなの♡』
北斗「ん、エライね、もうちょい待って、な」
『むり、むいむい、まてな、あ♡らめ、いく、!も、いっちゃう⋯⋯!』
北斗「だめ、まだ我慢して⋯っ」
『むりらめ♡あっ♡も、いく、いく、あ、んっ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯んぅ!』
北斗「くっ、」
北ちゃんとするえっちって、なんでこんなにキモチがイイんだろう。他の人とするのが不満ってことじゃなくて、北ちゃんだけが何故か異様なのだ。どこがダメでどこが弱くてどこがイイのか、ピンポイントで全て知られているから体だけじゃなくて頭もこころもどろどろに溶けておかしくなってしまいそうで怖くなる。えっちの最中は頭の中が"キモチイイ"で埋め尽くされて、それしか考えられなくなるから自分が自分でいられなくなってしまう。その分なのか、他と比にならないくらいの脱力感にも襲われるんだけど。
『あ♡あ、ン♡うごいちゃらめ、とまって』
北斗「ごめん、もすこし頑張って」
『や、やさしくないの、や、いや、あ♡も、へん、へんになっちゃ、あ♡や、なのにぃ⋯⋯んん♡』
北斗「あー、きっつ⋯⋯、俺もイく、」
事後
↓
どろどろにイかせた後、デロデロになったなまえとキスをするのがとても好きだ。
『んっ♡』
北斗「口開けて」
『あ⋯⋯♡』
イったあとで感度が上がっているのだろう。両手で顔を固定して逃げ場を与えずなまえのイイところを責めつつも俺のやりたいように口内を犯せば、なまえは鼻から抜ける甘い声を出して、俺を捉えているのかいないのかわからない朧げな瞳を潤ませる。名残惜しく、最後に下唇をはむっと甘噛みして離れると、高揚したなまえの女の顔にまた股間が元気を取り戻してしまうけど、明日なまえの体がもたなくなっちゃうからなあ。
『も、おしまい?』
名残惜しそうな顔
北斗「ふふ、きもちかった?」
『ん、ずっときもちい』
北斗「ほんと、なまえは俺とのえっちすきだよね」
『すき、すき⋯』
北斗「うん、俺も好きだよ」
ご褒美におねだりされたキスをお見舞いすれば、なまえの瞳に映るのは卑しく満足気に微笑む俺だけ。それも興である。