奇妙な男

04

 ホルマジオは基本的に、利用できるなら何でも利用する男である。任務に必要なら、好みではない女だって簡単に口説くし、抱くことだって厭わない。勿論、一般人に残酷なことをする――なんてことにも躊躇なんて覚えないし、拷問なんて得意な方だった。

 だから、リーダーであるリゾット・ネエロから「新入りが来る」と言われた時、「使えるんならそれもいい」と考えていた。暗殺チームは今の面子で十分だ、なんて下らないことは考えていなかったし、それで仕事の効率が上がるなら万々歳だ。

 ホルマジオの新入りに対する印象はその程度のものだったので――彼がアジトの扉を開けた時、ほんの少しだけ、驚いた。

 彼は、リビングの真っ黒いソファに座って、背もたれに腕を預けていた。後ろの窓から差し込む陽の光を、これまたぼんやりと眺めていた。

 髪の色はプロシュートによく似ていたが、前髪の間から覗く赤色の瞳は、赤ともピンクともつかない見慣れない色。長い睫毛と整った目鼻立ちは、ギャングだとか、裏社会だとか、そういったものを一切彷彿させない雰囲気がある。

 最も美しい形で整えた人形。

 彼が瞬きをしていなければ、よもやホルマジオは、彼を人形と見間違えかねないと思った。

「お」

 その煌びやかな目が、陽光の中で舞う埃から、ホルマジオへと移る。

「はじめまして」

 ゆるりと笑みの形に細くなる目元。それから、攻撃的な要素を一切合切取り除いたやわい声。ホルマジオは、これまでに何度も口説き文句として『天使――ベッラ』という単語を使ってきたが、神の御使いという意味では、この男に最もそれがふさわしいのでは無いかと、つい、考えてしまった。

 男はするりと立ち上がって、丁寧に礼をする。
「今日から暗殺チームに配属になります。ガリカ・ロサです」

 ホルマジオは、それに「おう」と言ったのか。それとも「あぁ」と言ったのか。もしかしたら間抜けにポカンと口を開けていたのかもしれない。自分の行動を明確に知覚できないほど、なんというか、ホルマジオは拍子抜けしていた。

「リーダーさんが、チームのみんなが来るまでここで待ってろって言うから、座って待ってたんだ」

 ――予想外。
 ホルマジオの心情を一言で表すなら、それだ。

「勝手に触っちゃマズイかなと思って、特に何もしていなかったんだが」
 『結構ヒマしてたんだ。よかった』と彼が笑うと、ホルマジオは、「なんだ生き物か」なんて、そんなことを思った。

「あー……新人、な。リーダーから聞いてるぜ。んで、リーダーは?」
「奥の部屋。多分、君たちが来るまで仕事してるんじゃないかな。ずっとキーのタイプ音が聞こえる」
「そうか――俺は、ホルマジオだ」

 このあたりで、ようやくホルマジオの思考がしっかりしてくる。名乗っていなかったことを思い出し、それから改めて彼が新人なことを認識し、ホルマジオは口の端を上げた。

「ホルマジオさんか。宜しくね」
「ンな畏まんなよ。ホルマジオで良いぜ」

 ホルマジオが手をヒラヒラさせると、ガリカと名乗った新人は「そうか」と言った。

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