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「ぎゃああああっ、」

『………。』

「うわぁあああっ、」

『……………。』




もう真夜中。香水と少し薬品の香りが漂うローの部屋の中で、私達はサイケホラーな映画を見ている。なんで洋画って怖さをグロテスクで表現するんだろう。とてもじゃないけど見ていられない映像が流れる中で、隣の人物はいかにも無表情だ。



「ね、ロー?怖くないの?気持ち悪くない?」

『ああ。』



うん、即答。そ、そうだよねー…ローはお医者さん。しかも外科医だ。毎日人の身体にメスを入れてるわけだから、こんなのどうってことないだろう。




「ね、面白くないよね、もう消そうよー」

『…もう少し』

「…えー…、ぎゃああああっ!」




映画はクライマックスに入り、主人公がなんか…なんかとにかく凄い事になっている。途切れ途切れ見た為によく分からない終わり方でエンドロールが流れると、私はホッと一息ついた。




「た、楽しかった…?」

『別に。リアリティ無くて笑えたがな』

「え?」

『あんなとこ捌いてもあんなに臓器は出ねぇ』

「そ、そうなんだ〜…へぇ〜」



ローはさして興味もなさそうにテレビを消して立ち上がった。



「んじゃー…私もう寝るねー…」



まだ頭の中にあの血まみれた女性の姿が離れない。私は身震いする身体を摩って扉の方に向かった。大体、シャチがあんなDVD持って来るからいけないんだ。私が怖いもの苦手な事を知ってて誘うローもローだけど。



『寝れんのか?』



少し鼻について笑った声でローは言った。



「ね、寝れるに決まってんでしょー!もう子どもじゃないんだからね!」

『ほー』



いや、本当は眠れない。でも一緒に寝よう、なんて可愛い事言えるわけでもない。しかもローが仕事を終えて寝るのは大抵朝方だ。どうしようもない。



「じゃ、おやすみー」



私はバタンとドアを閉めて寝室に向かった。





……眠れない。


どうしよう。私も明日仕事あるのになぁ…目を瞑るとあのグロテスクな光景がどうしてもリピートされてしまう。私はもぞもぞとベッドの中で出来るだけ丸くなりながら足を抱えた。すると、


「っ、」






や、どうしよう…身動きが取れない…金縛り…?身体が重い。そう言えばあの映画の始まりはこういった主人公の異変から始まった物だ。私は怖くなって声が出せなくなった。



(ロー…!)




私は祈るように名前を呼んだ。暫くすると視界が明るくなる。





『やっぱり寝てねーな』

「なっ、」



掛け布団を取られて私は手持ち無沙汰になってしまい、わたわたと辺りを見た。






『…電気も消してねーし、』

「あ、はは…ちょっと、やっぱ、なんか…怖かったかなー…」




ローはそんな事だろうと思った、と溜め息をついて私の横に入ってきた。私は少し動いてスペースを作る。




「だ、だって金縛りが起きたんだよっ、」

『おれが上に乗ったからだろ』

「え、うそっ、」

『ダセェな』

「…いじわる」

『さっさと寝ろよ』





私はいじけたが、ローが腕枕をして抱き寄せてくれてくれたので少し顔が緩んでしまった。





眠れない夜に







「…もうああいうの見ないからね」

『面白かったじゃねーか』

「え?ロー興味なさそうだったじゃん」

『お前の反応の方だ』

「!」




やっぱりローは意地悪だ。









(2012.12/05)


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