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ビルの屋上にてボイ……金髪の女性との邂逅を遂げてから約一カ月。それ以降特にトラブルに巻き込まれることもなく、今まで通り忙しく過ごしていた。眉なしの男?知らんなそんな奴は。

俺達にはとにかく、金がいる。それも半端な額ではない。そして情報もいる。その情報を集めるにはやはり、金がいる。よって、多少のリスクがあろうと仕事を選ばずせっせと働く必要があった。嘘。明らかにやばそうな臭いのするものはきっちり弾いている。
ハンター専用サイトの依頼板から近場かつ高額報酬のものを適当に印刷して選別。もちろん印刷すら不可な依頼もあるが、そういうものは大抵きな臭いものを抱えているのでそもそも候補にすら入れない。今回はこの国の中で済む依頼を適当に漁ってきた。

絶滅危惧種の捜索、調査。あり。
外交官の護衛。んー……なし。
珍味の調達。あり。
行方不明者の捜索。なし。

「これなんか面白そうだと思うけど?」
「“盗まれた美術品の奪還”だあ?なしだなし。それ盗ったの幻影旅団っつー噂だし」

印刷した依頼の簡略資料を捲る手をはたと止める。そして落としていた視線を恐る恐る上げると、見知らぬ金髪イケメンが人懐っこそうな笑みを浮かべてこちらを見ていた。

「あんた誰」
「ただの通りすがりの通行人A、かな」

そう言って笑みを深めた金髪いけ好かねえイケメン野郎は件の資料をひらりと振った。欲しいならやるよ。俺は別の仕事を探すから。無視を決め込み、また資料を捲る作業に戻る。
香水の材料集め、あり。じいさんを寝かし付けるぅ?とりあえず保留。あとは……。
次の紙を捲ろうとしたところへ再び“盗まれた美術品の奪還”の文字が現れた。無言で破り捨てた。

「あーあ。一番報酬高かったのに」
「お前もうどっか行けよ」
「つれないね」

金髪マジでいけ好かねえイケメンクソ野郎は肩を竦めるだけで俺の前から消えようとはしない。オープンカフェなんかに腰を落ち着けたのが間違いだった。勝手に相席しやがって。これがこの間の金髪女性だったら……ちょっと待て、最近金髪に会うこと多くね?バッドカラーかよ畜生。
もう相手にする気にもなれず、乱雑に資料をまとめて席を立とうとした。すると視界を遮るように紙が現れ、自然と追った文字は“盗まれた美術品の奪還”と読めるではないか。先ほど俺が破り捨てたはずの紙が、なぜか目の前にあった。

もともと、幻影旅団の噂が絡んでいたのだから印刷するまでもなく弾いたはずの依頼。だが、資料は確かに束の中にあった。そして確かに、破り捨てた。もし複数枚あったとするなら、それはつまりこいつが“あのサイト”にアクセスする術を持っているということで、

「……お前、同業者か」
「ご名答。更に言うと俺が依頼人だったりするんだけど」

これにはさすがに驚いた。金髪……もうクソ野郎でいいや。クソ野郎は百点満点の笑みを顔面いっぱいに称えながら「君に依頼を受けて欲しい」とのたまった。
お断りだ。明らかな手練れの癖に他人に依頼する意味が分からない。胡散臭い。そもそもこいつは好かん。なんかうぜえ。以上の理由から二枚目の資料はライターで火を点けて燃やしてやった。クソ野郎はまた「つれないね」と言って肩を竦めるだけだった。

「じゃあ次はもう少し違う依頼を持ってくるよ」
「二度と来んな」

予定変更。俺は今すぐこの国を出るため、手早く飛行船の手配を済ませた。



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