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「ねえお兄さん! こんな所で寝てたら風邪ひいちゃうよ? おうちに帰らなくて大丈夫?」

 子供の気配で目が覚めた。狸寝入りを決め込んでおけばそのまま諦めるだろうと思ったのに、体を揺すってまで起こそうとするから仕方なく起きた。五、六歳くらいの小さな女の子だ。好奇心旺盛なのは結構だが、知らない男にほいほい声をかけるなんてこの国は大丈夫なのか? いつか誘拐されても知らねえぞ。

「せっかく起こしてくれたところ悪いが、俺は自分の意思でここで寝てたんだよ」
「えー。お兄さんおうちないの? お仕事は?」
「家はこの国にはない。仕事は今日探す予定だ」
「おうちもお仕事もないなんて……お兄さん、もしかしてヒモだったの?」

 ヒモっておい。この国の教育はどうなってる。

「お兄さんは誘拐されてこの国に来たの。ヒモじゃない」
「誘拐!? でも、それなら外にいるのは変だよ。普通はどこかのお部屋に監禁されてるものだもん」
「……嬢ちゃん、難しいこと知ってるな」
「ふふーん! なんてったって、歩美は少年探偵団だから!」

 アユミちゃんね。少年探偵団がなんのことかは分からんが、子供のごっこ遊びか何かだろう。未来であっても子供は子供ということか。ちょっとませてるけど。
 根が優しいらしいアユミちゃんは「お兄さん悪い人じゃなさそうだし、お仕事決まるまでアユミのおうちに来る?」と言ってくれた。しかし、どう考えても親御さんの胃が爆発しそうなのでお断りした。だから渋るな。警戒心がないにもほどがあるぞ。
 なかなか折れてくれないアユミちゃんに困っていると、彼女を迎えに来たという男の子たちが現れた。おにぎり坊主に三白眼のそばかす。不審者を見るような目が痛いのなんの。もう面倒だからさっさと行きなさい。

「ホームレスのおにーさーん! お仕事見つかるといいねー!」

 去り際、元気に手を振る彼女の一言は心を抉った。



03

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