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スタジオから逃れてそっと2Aの扉を開ける。するとそこにいたのは、北斗くんだけではなかった。
「やぁねえさん、思ったより早い再会だったネ?」
「夏目くんっ!? ってことは、……そっか北斗くんと組んでたんだ」
さっきの資料には北斗くんたちのユニットも載っていたはずだけれど、外野の騒々しさと『SASHIMI』のインパクトが強すぎて記憶からぶっ飛んでいたらしい。
北斗くん、夏目くん、そして残る最後の一人は真くんだった。
「千夜先輩、どうやら生徒会長の魔の手からは逃れたようだな」
「魔の手……はは、確かに間違いではないか」
あれは確かに悪質な勧誘行為にも等しい気がしないでもない。英智は何事も早急に手を回したがるから仕方ないが。
まあ、公平なプロデュースの為にも、北斗くんが3Aにカチコミに来るという情報は結局吉と出たということにしておこう。
「カチコミじゃない。正当な主張だ、先輩」
「あっ、はい」
「ふふ。とはいえ、やっぱりこういう奇策が僕ら『Trickstar』の強みだよね。まあ今は、僕と氷鷹くんだけだけど!」
「そうだヨ、ボクを仲間外れにしないで欲しいネ?」
くすくすと夏目くんが笑った。どう考えても仲間外れにしないでという性格ではないが、そこはスルーしておけということだろうか。
「うむ、そうだな。俺たち……『8bit』で勝利を掴もう」
「『8bit』かぁ……ゲームっぽくて好き!」
「うんうん、千夜先輩なら絶対そう言うと思ったよ! というか事実ゲームをテーマにしてるからね!」
「そうそう。上手く印象を操作して、千夜ねえさんを篭絡する作戦だヨ……♪」
見事にやられてる私チョロいな!
「篭絡なんて人聞きが悪いことを言うな。単に旧・現『ゲーム研究部』の部員が居るから、そういう名前にしたんだろう?」
「ああ、そういうことか……真くんもゲー研だったもんね」
できることなら私もゲー研に入りたかったが、泉に「あんたがそこ入ったら部活動しかしなくなるからやめときな」とか、零さんに「我輩の城を出ていく気かえ!? 絶対退部させんからのう!」とか言われたから結局入れずじまいなんだよね……。兼部とかありだったのかな?
「退部しちゃったけど、僕は今でもゲーム好きですよ! 今回の【クラスマッチ】では、僕らしばらくゲー研の部室を根城にする予定なんで……レッスン終わったらみんなでゲームするとかどうかな?」
「いいね! みんなでスマブラしよう!」
「すまぶら?」
「大乱闘……なんて説明要らないよネ。ていうか、レッスン後の予定を立てるなんて余裕だネ、みんな。良い事だとおもうけド」
「うむ、……ともかく、大きく構える姿勢は大事だろう。俺たちは三年生のユニットを押しのけてでも勝ちたいんだ」
北斗くんは堂々とそう言った。
確かに下馬評を作るとしたら、三年生が有利と予測するのは当然のことだろう。だからこそ北斗くんは、『Infinity』にプロデューサーを独占させるのを避けようとしたのか。
思えば一年生にとってはなかなか厳しい勝負なのかな。彼らのことだから、自信満々に挑んでくれそうではあるが。