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「だーかーらー! ぜったいこっちのフォーメーションのほうがボクの魅力を引き立たせるって!」
「おや? 桃李くんは千夜お姉さまが決めたformationにいちゃもんを付けるのですか?」
「いちゃもんじゃない! 千夜に文句なんか付けないよ! ただボクは単純にこの音でお前と並んで一緒くたにされるのが嫌なわけー!」
「それを言ったら私だって桃李くんと並んで踊るなんてまっぴらです! できれば仙石くんとchangeして頂きたいと思ってますが、お姉さまの決めたことだからこっちだって黙ってるんですよ! それなのに貴方はbooingを……!」
昨日、一年生のことを一瞬でも心配した自分が馬鹿らしく思えた。今日の朝、突然司くんが教室に来て「千夜お姉さま! 昼休み、私たちのclass matchのレッスンをつけてくださいませ!」と言い逃げされた言葉によって、私はこうして防音練習室にいるのだが。
「千夜殿〜一体どうしたらいいでござるか……」
言いながら縋ってくる忍くんがとても可愛くて、同時に同情してしまう。きっとユニットが決まった時から司くんと桃李くんはこんな感じだったのだろう。忍くんの性格上、どちらかにつかずひたすら仲裁し続けていたのだろうけれど、それが一番大変なポジションであることは言うまでもない。よしよし、と忍くんの頭を撫でながら、どうしたもんかと考える。でもまあ……
「二人がそんなわがまま言うんだったら私もう帰っちゃおうかなあ〜」
「だめ!」
「それはいけません!」
「なら、二人ともこんなことで争ってちゃダメ。こっちの事情がどうであっても、来てくれたお客さんが一番楽しめるものを提供するのがアイドルでしょ? それに、もう一人の大切な仲間のことも考えてあげて」
とん、と縋り付いていた忍くんの背中を軽く押す。今までお互いの顔を睨み付けあっていた二人が、ようやくもう一人の顔を見た。ごめんなさい、すみません。バツの悪そうにそう謝った二人と、全然大丈夫でござる! と嬉しそうに笑ったもうひとり。フォーメーションについてもなんとか納得してくれたみたいだし、これにてひとまず一件落着……だと思ったのは、数分前のことで。
「ユニット名はAngels! 忍もボクに劣るとしてもまあ可愛い方だと思うし? これで決まりだよ!」
「そんな一方的な意見聞けません! 忍くんはともかく、桃李くんはDevilがお似合いでしょう!」
「あっ確かにプチデビルのボクとか可愛」
「ユニット名はweaponでどうでしょう? 私のsword、忍くんのしゅ……りけん! 桃李くんはまた適当に考えましょう。いいと思いますよね忍くん!」
「え? えーっと、拙者はどっちもいいと思うのでござるが……!」
先ほど私が偉そうに説教したのはなんだったのか。いや、二人とも忍くんのことも一緒に考えて発言しているのだから多少は違うのかもしれないが。やはり犬猿の仲というのはそう簡単に修復されないものらしい。
「そ、そうだ、ジャンケンで決めるのはどうでござるか?」
「えージャンケンー? やだよそんなテキトーに決めるの!」
「ふむ……まあ確かに、fairな方法ではあります。……あ」
おっ、何やら思いついたのか、司くんが動き始めたぞ。彼がごそごそとポケットから取り出したのは……どこかの国の、コイン? 何でそんなものがポケットに入っているのかわからないが、御曹司というものは色々あるのだろう。知らんけど。
「Coin Tossで決めるのは如何でしょう?」
その一言に、言った当人と、それからあとの二人がはっとする。三年生に対抗する挑戦的な一年生という立場。運も味方につけないといけないようなライブ。すべては、ギャンブルのようなものに近しい。
「『Coin Toss』……決まりでござるな」
偶然決まったぴったりのユニット名の彼らは、きっと強い。