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よしよし。いい具合に、問題だった桃李くん、司くん、忍くんのユニットも動き出した。

『Coin Toss』とか名前かっこいいよね。絶妙にオタク心をくすぐるネーミングセンスをしていて大変いい。そして何だか縁起も良さそうで、結成に立ち会った私まで運気が上がりそうな

「とうとう見つけたのだよ、この愚か者!」
「おわあああ!?」

耳元で大音量の叫び声が聞こえてきたせいで、私の叫び声まで大音量になってしまったじゃないか。

なんて苦情もそこそこに、来てしまったか……奴が……と思いながら振り返る。するとそこには、やはりというか何というか、今にも噴火一歩手前の火山みたいな、非常にデンジャラスなご機嫌具合の宗が立っていた。

彼は腕を組み、ギリギリとした目で私を睨み上げている。もしかして:とても恨まれている――!

「どういうことなのだね、これは」
「な、なんでございましょうか」
「とぼける気かね!? これだよ、これ!」

私の顔面に押し付ける勢いで突き出してきた資料。目を通さなくても分かる、クラスマッチのものに他ならない。

そして現在お怒りの斎宮宗サマが所属するは――

「『チョコクロ』に何か問題がある?」
「問題しかないのだよ! このっ、君の仕業だろう!?」
「待って待って、いやほんと違いますってマジで……勘弁してくださいよぉ斎宮パイセン」
「その低俗なしゃべり方をやめたまえ! 不愉快なのだよ!」
「じゃあ宗もいったん落ち着こう? ね? 要するにユニット名が気にくわないんでしょ?」

あまり怒らせると後に響くので、すっぱりと要件を先に述べる。すると宗は、渋々ながらテンションを落としてくれた。うん、一回理性的に戻った彼ならば、会話は容易に成立する。元来宗は理性的すぎるくらいなんだからね。

「……分かっているなら、初めから言えばいいのだよ」
「あはは……ごめんごめん。でもさ、本当に私が決めたユニット名じゃないんだ。だから、怒られても納得のいく理由は説明できないよ」
「そうか……。君ならば、あるいはこの低俗な名前に、僕の納得がいく理由を提示してくれると思っていたのだがね。関係ないと言われれば仕方ない」
「ごめんね。理由が聞きたいなら、薫くんか斑に……」

何この連絡がつかなそうな人選。宗含めて。本番になって行方が分からなくなりそうなユニットランキング一位独占だよ。

「僕は携帯はあまり好かないのだがね。それに、羽風など特に、男の僕が電話をかけても出ないだろうに」
「否定できない……あれ? じゃあ、私がかければ出てくれるかな?」
「逆説的に、そうなるだろうね」

ふむ。では宗のご要望を叶えるためにも、電話をかけようじゃないか。
と若干宗の影響を受けた口調で軽口を飛ばしながら薫くんの名前をタップ。電話番号をも一つタップ。さあ羽風選手、何コールで出る!? 最短記録は日々樹選手の0コールだ!

『もしもし? 今日は『UNDEAD』のレッスンないんじゃなかったの〜?』
「3コール……修行が足りぬ!」
『いきなり何!? 俺、千夜ちゃんから電話かかってきた〜ってちょっと期待してたのになぁ。ボケラッシュはキツイよ、精神的にさ〜?』
「ポプペロ☆」
『ボケ重ねてこないで貰えるかな? 俺ともあろうものが女の子との通話自分から切りそうになったよ?』

すいません、切らないでください。
そして後ろで宗も「早く要件を話すのだよ」と急かしてくる。しょうがないので、とりあえず宗に聞こえるように電話をスピーカーに切り替える。

「あ〜、ごめん! 実はね、『チョコクロ』のユニット名を付けた経緯? 理由? を聞きたくて。薫くんじゃないの?」
『え? あ〜、俺だけど。別に経緯って言われてもね〜。俺は女の子が好きで、斎宮くんは女の子の人形が好きなんでしょ? で、三毛縞くんがさぁ、俺は祭りが好きだな! 女の子のお祭りと言えばひなまつりか! はたまた日本じゃバレンタインか!? わはははは! って言ってたね』
「ほう……」
『で、バレンタインも時期的に近いし、そっち方面で名前つけてみようかなって思ったんだけど……ここで斎宮くんの好きな物その2を思い出したわけ』
「クロワッサン?」
『そ。で、そういやこの前マックでチョコパイ食べたけどうまかったな〜って思い出してさ。で、『あれ? チョコパイじゃなくてチョコクロワッサンにすればいいんじゃね?』ってノリで書類に書いて提出したんだよね〜。三毛縞くんもなんも言わないし、斎宮くんは文句しか言わないだろうから、そのままポイっと生徒会に投げてきたって感じ?』

……隣の空気が二度くらい下がってるのを感じた。『Coin Toss』の名前で運気が上がりそうとか思っただろ? あれは嘘だ。

「……ほう? これが僕の、納得のいく理由、なのかね?」

節々で区切らないでください。怖いので。マジで。