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「ほ〜ら、見てよ先輩! これが『Bound』で使う予定の超大技! んでこれにスピンを加えて、更に視線を集めちゃったり〜☆」
「部室の天井突き破っちゃうよ!? こんな所で暴れちゃだめっ、ゆうたくん!」
「え〜。でも俺たち普段からここで柔軟してるし、今さらじゃないですか〜?」
「そうそう、アニキの言う通りですよ千夜先輩」
「んん……なんじゃなんじゃ……どったんばったん大騒ぎしよって……我輩の眠りを妨げんでおくれ……」
「Welcome to ようこそジャパリパーク! 今日もどったんばった」
「だ〜〜〜!!! うるせえんだよテメ〜ら!! 全員散れっ!!」

晃牙くんの大絶叫が部室に響いた。相当お怒りなのだろう、ギターの演奏をやめ、ギターを振り回す気なんじゃないかという勢いでこちらにドスドスと歩み寄ってくる。まあ、晃牙くんに限って楽器を壊す真似はしないだろうけど。

「おい双子! テメ〜らクラスマッチの『ユニット』は別々なんだろ〜が! だったらチームメイトと練習しろっての!」
「いや、これはただの自主練ですって」
「そうそう。俺もゆうたくんも、メンバーの子たちとはちゃんと練習してますんで」
「ここで暴れんなって言ってんだよ」

良い笑顔で晃牙くんがそう言った。まあ、無法地帯という四字熟語(?)がピッタリなこの部室だから、突き通せばなんでもできちゃうけどね。頑張れ葵兄弟、晃牙くんを退けて市民権を獲得するんだ――! 

と心の中で応援しつつ、私は零さんの要望によって『ようこそジャパリパークへ』の歌詞の続き(ダンス付き)を披露している最中だ。布教は一日にしてならず――私は私の意思を突き通して、こうしてオタクを増やす為の活動を……

「おい、一応歌ってるから見逃してやろうかと思ったけど動機が不純なんだよ」
「はっ!? こいつ、直接脳内に――」
「これわんこや。我輩は今千夜のお遊戯を見ておるのじゃから、邪魔しないでくれんかえ?」

お、お遊戯……。こ〜ちゃんが犬扱いなら私は赤ちゃん扱いなのだろうか。これでは一生布教が実を結ばない可能性が――と私が危機感と共にスッと真顔で歌うのをやめたと同時、晃牙くんを助けるかのように部室の扉がガラリと音を立てた。

「失礼する。――やはりここにいたか、千夜」
「敬人? ……あっ……」
「やっと思い出したか貴様。どこで道草を食っているのかと思ったぞ。いや、道草を食ってるのは間違いなくここだとは思っていたが」

度し難い、といつもの台詞とともに敬人が眼鏡をくいっと上げた。友也くんの可愛さにやられていたところに、ゆうたくんが「部室に来てくださいよ〜」と声をかけてくる……という後輩コンボに頭が溶けてしまっていたらしい。いかん。

「ごめんね……すっかり遊んでたよ」
「む。……まあ、俺もLINEで『何時に集合』と明確に記載していなかったからな。今回は不問としよう」
「ほんと? ありがとう敬人!」
「副会長って、なんだかんだ千夜先輩に甘いよね〜」
「ほんと。意外と仲いいよね、二人とも……これは怪しいわよ奥さん」
「やだ、あの奥さん朔間先輩から副会長さんに浮気かしら?」
「貴様ら……よほど説教が聞きたいと見えるな?」
「逃げようかゆうたくん!」
「そうだねアニキ!」

わいわいと賑やかすだけ賑やかして去っていった葵兄弟。その背を見送った敬人は、やれやれと苦笑した。

「俺たちも続くとしよう。明日はリハーサルということもあるし、書類上の【クラスマッチ】の最終調整を済ませるぞ」
「はぁい。英智も待ってるよね」
「当然だ」
「ふむ。……では、蓮巳くんよ。少し伝言を頼もうか」

私たちの会話を静観していた零さんが、ふいに声をあげた。ほぼ二人同時に振り返ると、彼はスッと赤い目を細めて笑う。

「『Infinity』を初戦で負かすユニットがあらば、さぞ面白いことになろうよ……とな」
「……面白い。あんたと正面で戦える久しぶりの機会だ、可哀そうだが『Role』は初戦で敗退して貰おう」
「くっくっく……♪ 楽しみじゃのう」

悪戯っぽく笑う二人。懐かしいこの雰囲気に、思わず三学期という文字を思い出しそうになる。

【クラスマッチ】――最後とは言わないけれど、私たち三年生にとっては一つの節目になるかもしれない。慎重に、でも面白おかしく、事を進めていきたいな。