少年受胎
とす、とす、と小さな揺れが微睡みに沈んでいたボルサリーノを呼ぶ。
目を擦って覚醒すると、なんとか布団から体を起こす。
「ふふ、あかちゃん、元気だねェ〜」
ボルサリーノは椛のような小さな手で腹を撫でながら微笑む。まだ幼児といっても差し支えないボルサリーノの腹が臨月の妊婦の如く大きく膨れている様は、まともな人間が見れば異様で悍ましい光景だろう。しかし、この屋敷にはボルサリーノと、彼の旦那様であるサカズキしかいない。まともな人間は存在しないのだ。
「もうすぐ会えるかなァ?早く出ておいでェ〜」
ボルサリーノは幼子らしからぬ慈愛に満ちた、それこそ母親のような顔で優しく声をかける。
────胎の中は空っぽだということも知らずに。
ボルサリーノは毎晩のようにサカズキに抱かれている。
それはボルサリーノにとって日常の一部であり、当たり前の事だった。サカズキの逞しい肉棒で身体の奥まで暴かれ獣欲を受け止める最中、サカズキは決まって、まるで呪いのように「孕め」と囁いて子種を注ぐ。
そんなことを続けていくうちに、いつしかボルサリーノは自分が子を孕めると思い込み、そうしてついにサカズキの子を授かったと言い出したのだ。
確かにボルサリーノの腹は食べ過ぎや胃下垂などとは異なる、まさに妊婦のように膨らんでいる。一日中眠くて堪らないし、特定の食べ物ばかりを好んで食べてしまうし、つわりと思しき吐き気に襲われる時もある。しかし、それらのすべてが思い込み……俗に言う想像妊娠によるものだった。
だが、外界から隔離されて生活をしているボルサリーノに、その事実を教える者はいない。サカズキにしても、ボルサリーノが妊娠などできるはずないと知りながら黙っていた。
なぜならば、たとえ思い込みだとしても子ができればボルサリーノはますます自分から離れなくなると考えたからだ。サカズキのボルサリーノへの執着は、とっくに一線を越えている。彼はボルサリーノを独占するためならどんな手段も厭わない。
そして今日もまた、何も知らないボルサリーノは赤ん坊と会える日を夢見て腹を撫でるのだ。
■■■
灯りの落ちた寝室に粘ついた水音が絶え間なく響く。布団上で絡み合う二つの影が忙しない息遣いに合わせて激しく揺れた。
「あぁっ!♡ひぃッ……♡♡んあぁっ♡♡♡」
ボルサリーノはサカズキの上に跨り、小さな後孔で赤黒く猛々しい肉棒を受け入れていた。ボルサリーノが妊娠した────と思い込んでいるからといって、サカズキはボルサリーノを抱くことを止めたりはしない。今日もボルサリーノが夕餉を食べ終えた頃に帰ってくると、小さな身体を抱き上げて寝室まで運ぶとそのまま犯し始めた。
「あっ♡ふぅ……うぅ〜♡んっ……♡」
「ボルサリーノ、おどれが上に乗るっちゅーからそうしとるんじゃ。もっと気合い入れて動かんかい」
「んっ♡ごめんなさ……いィ……ッ♡」
サカズキの言葉を受けてボルサリーノは慎重に腰を落とす。なにせ、あまり深く挿れすぎるとお腹の赤ん坊に負担をかけてしまうかもしれない。ボルサリーノはその事を恐れ、奥まで挿入せず浅いところでピストンを繰り返していた。
しかし、ボルサリーノの目論見はサカズキにはお見通しだった。
「……そげな甘ったれた動きでわしを満足させられると思うちょるんか?」
自分よりも、いもしない赤ん坊を優先するボルサリーノに苛立ったサカズキは、不意打ち気味に深く突き上げる。
「ひぎっ!?♡♡♡だめぇっ♡♡おなかに赤ちゃんがいるんだからァ……!♡♡♡」
ボルサリーノはサカズキの上でもがいて抵抗するが、足が不自由な上に後孔を貫かれて串刺し状態でサカズキに敵うはずもない。
サカズキは簡単に手折ることのできそうな細い腰を掴み直すと、下から何度も突き上げた。
「ひぃいいいっ♡♡♡ああぁぁっ♡♡♡」
ボルサリーノは身体を仰け反らせ、悲鳴にも似た声を上げる。サカズキの剛直によって腸壁をゴリゴリと擦られ、敏感なしこりを押し潰される度に頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなってしまう。
「は、おどれもこうされるのが好きじゃろう」
「らめ、らえ……♡好きじゃないからァ♡♡」
ボルサリーノは必死になって首を横に振る。しかし、サカズキに抱かれるようになって以来すっかり雌へと変えられてしまった身体は正直で、ボルサリーノはヘコヘコと腰を揺すってより強く深い快楽を求めている。サカズキは腰を突き上げると、小さなボルサリーノの結腸に亀頭がこつんと当たった。
「ひゃうぅっ!!♡♡♡」
ボルサリーノはびくっと身体を跳ねさせる。普段ならこのまま奥深くまで穿ち狭い肉の輪を犯し尽くすのだが、サカズキは結腸口を軽く突くだけに留める。
「ふーっ♡♡ふーっ♡♡」
焦らされたボルサリーノは熱っぽい吐息を漏らしながら物欲しそうに目を潤ませる。サカズキは意地の悪い笑みを浮かべると、ボルサリーノの小さな尻をぱちんと叩いた。
「あうっ……♡」
乾いた音と共に走る痛みにすら感じてしまう。ボルサリーノはきゅうう、と後孔を締め付けた。
「ボルサリーノ、素直にならんのならこのまま止めてもええんじゃぞ。おどれは赤ん坊の方が大切みたいだしのう」
「やだ、やめないでェ……!」
サカズキの言葉にボルサリーノは慌てて懇願する。赤ん坊を守りたい気持ちとこのまま奥まで暴かれて気持ちよくなりたい気持ちとがせめぎ合い、ボルサリーノの心はぐちゃぐちゃになっていた。サカズキは最後のひと押しとばかりにぐりぐりと最奥を抉ると、ボルサリーノの理性は崩れ去った。
「わっしのおまんこにっ♡サカズキのおちんぽちょうだい♡♡あかちゃんのお部屋めちゃくちゃにしてっ……!お゛っ?!♡♡♡」
言い終わる前にサカズキはボルサリーノの身体を持ち上げ、そのまま一気に落とした。ごちゅんっ!という鈍い音が響き、亀頭が結腸を突き抜ける。
「あ゛っ……ぉ……♡♡♡」
視界に閃光が飛び、一瞬遅れて凄まじい快感がボルサリーノを襲い舌を突き出したまま一気に絶頂を迎える。ぷしゃりと潮を吹き、サカズキの下腹部から胸元にかけて盛大に濡らす。あまりの衝撃にサカズキの腹の上に倒れ込むが、サカズキはボルサリーノの尻たぶを左右に割開いて後孔を露出させると、腰を激しく突き上げ始めた。
「あひぃぃぃぃ♡♡♡まっへ、激しすぎりゅッ!♡♡♡」
達したばかりの身体には強すぎる刺激にボルサリーノは悶えるが、そんなことはおかまいなしにサカズキはボルサリーノの身体を上下に揺さぶり続ける。
ぐぽん、ぶちゅ、と淫猥な水音が響く度、ボルサリーノの脳裏には胎内にいるはずの赤ん坊が過ぎり罪悪感でいっぱいになる。しかし、その背徳的な感覚にボルサリーノは興奮していた。
「あひっ♡♡きもちぃいっ♡おくっ♡しゅごいぃっ!♡♡♡」
結合部からは空気が混ざり合った下品な音が漏れ出ている。しかし、ボルサリーノはそれを気にする余裕もなく、ただひたすらにサカズキを求めた。サカズキは上体を起こして胡座をかいて対面座位の体勢をとると、ボルサリーノの華奢な身体を強く抱きしめる。
「ふぎっ!?♡♡♡サカズキ、くるし……♡♡お腹潰れちゃうよォ♡♡♡」
潰れてしまえ、とは流石に口には出さなかったが、ぎちぎちと抱き潰すように力を込めるとサカズキの腕の中でボルサリーノはくぐもった悲鳴を上げて抵抗する。しかし、後孔から肉棒が抜けそうなほど引き抜かれたかと思うと再び根元まで埋め込まれ、乱暴に結腸を責め立てられればボルサリーノに為す術はなかった。
「おほぉぉ♡♡♡イグ、イグゥッ♡♡またイッぢゃううううっ!!♡♡♡」
ボルサリーノはサカズキの腕の中でガクガクと身体を痙攣させながら達する。ただでさえ狭い肉壁がきゅーっと搾り取るように締まり、サカズキの射精欲を高めていく。
「ボルサリーノ、出すぞ……っ!!」
だらりと四肢を投げ出して絶頂に浸っているボルサリーノの身体を思いのままに揺さぶり、吸い付いてくる結腸の奥深くへと亀頭をピッタリと押し当てると勢い良く熱い精液を叩きつける。
「おほっ♡♡出てりゅうぅっ!!♡♡♡あついのきたぁあああっ!!!♡♡♡」
どくんどくんと脈打つ度に大量の精子を吐き出され、ボルサリーノは甘やかな声を上げながら自らも腰を動かして最後の一滴まで残さず受け止めようとする。
「あ゛〜……♡♡♡あへぇ……♡♡♡」
だらしなく開けたままの小さな口の端から垂れる唾液を舐めとり、貪るように唇を重ねる。
「んむぅ……♡♡♡」
サカズキは自身の分厚い舌を差し入れ、ぐちゅぐちゅとわざと水音を立てながら咥内を荒らし、小さな舌を絡め取って吸い上げる。たっぷりと口腔内を犯し尽くしてから口を離すと、互いの舌先から銀の糸が引いた。ずるりと陰茎を引き抜いて肩で息をしているボルサリーノを布団に横たえてやると、限界がきたのかボルサリーノはとうとう意識を失い布団に沈んでしまった。
手慰みに汗でしっとりと濡れた髪や肌を撫でながら、サカズキはじっと眠っているボルサリーノを見つめる。すやすやと寝息をたてる幼子らしい丸みのある頬、細い首、呼吸に合わせて上下する胸に手をはわ、そして最後に不自然に膨らんだ腹へと到達した。
時々赤ん坊が蹴るのだと心底愛おしげに腹を撫でていたボルサリーノの姿を思い出し、サカズキは眉間にシワを寄せた。
────十ヶ月も見逃してやったのだ、もういいだろう。
サカズキはボルサリーノの腹に添えた手にじわじわと力を込めていく。すると、不思議なことに内側から微かに胎動のようなものを感じた、ような気がした。
「おどれはわしらには必要ないけぇ……消えろ」
ぐちゃり。何かが潰える鈍い音に混じっていたのは産声か、それとも断末魔か────……。
■■■
絹を裂くような悲鳴で目が醒める。声の元を視線で辿ると、腕の中で眠っていたボルサリーノが蹲って泣きじゃくっていた。
「ボルサリーノ」
サカズキが声を掛けると、ボルサリーノはビクリと薄い肩を跳ねさせ、弾かれたように顔を上げる。つぶらな瞳からははらはらと涙が溢れ、擦ったのか目元は赤く擦れていた。
「ひっ……ぅ、サカズキ……赤ちゃんが……っ」
そう言われて視線を更に下へと落とすと、針で刺したら割れてしまいそうな程に膨れていたボルサリーノの腹が、まるで何事もなかったかのようにぺたんと平らになっていた。
「あかちゃん、いなくなっちゃったァ……ごめ、なさい、ごめんなさい……」
「…………」
ボルサリーノはしゃくりあげながら謝り続ける。無言のままサカズキが手を伸ばすと、叱られると思ったのかボルサリーノは小動物のように身を縮めて「ごめんなさい」と繰り返した。
「……ボルサリーノ、こっちを向かんかい」
「ごめ、なさ……んむっ?!」
サカズキはボルサリーノの顎を掴み無理矢理こちらを向かせると、そのまま噛み付くように口付けた。驚いて引っ込んでいる舌を引きずり出し、歯列をなぞり上顎をねぶる。暫く好き勝手に口の中を蹂躙してからようやく解放してやると、ボルサリーノは酸欠気味なのか顔を真っ赤にしてぼうっとしていた。
「サカズキ……?」
「赤ん坊ならまた作ったらええ……そがぁに自分を責めるんはやめんさい」
そう言って涙で濡れた目元を指先で拭うと、ボルサリーノは戸惑いながらも少しだけ表情を明るくさせて小さく頷くとサカズキの首筋に抱きついた。
「次は、ちゃんと赤ちゃん産むからねェ」
「……ああ」
サカズキは片腕に収まるほど小さなボルサリーノの身体を抱き締める。仔犬の戯れのように鼻先を擦り付けて甘えてくるボルサリーノをあやしながら、まだ手のひらに残っている腹を潰した感覚に意識を向ける。
────他の誰の手でもなく、自分が何度でも孕ませて、何度でもその希望を潰してやろう。
「サカズキぃ……ね、シよぉ?……♡」
ボルサリーノは甘く蕩けた声でサカズキの股間を撫で回す。先ほどまで泣いていたというのに、すっかり情欲に塗れた表情を浮かべているボルサリーノを見て、サカズキは薄く笑みを漏らした。