お題:好きor嫌いなところ



「あ?コビーの嫌いなところ?んなもん、普通にめちゃくちゃあるっつーの!お前らはコビーのこと素直ないい子とか思ってるかもしれないが、とんでもねぇ!おれァあんなに頑固なやつは会ったことがねぇよ。今でこそ身体も成長して海兵らしくなったけど、初めて出会った頃なんてこーんなチビで顔も手も丸っこいへなちょこなガキだった。そのくせ一丁前に海軍将校になるとか言って、朝から晩まで雑用三昧でクタクタなのに寝るまも惜しんで海兵になるためのお勉強なんぞしてよぉ……ったく、あの頃はランプの灯りが眩しくて中々寝付けなくて本当に迷惑したぜ!それだけじゃねえ!あんなに必死こいて勉強してたのに、気ぃ抜いて罪人に人質にされた馬鹿を助けるために上官に楯突いてまで助けに行っちまう、考えなしのアホだ。運よく助かったからよかったものの、殺されてたっておかしくない状況だったんだぞ?誰も助けてほしいなんて頼んでねぇのに、友達だからって言って聞きやがらない。昔からそうなんだよ。困ってたり泣いてたり、助けを求めているやつを見ると、そいつがどんなに救えないクソ野郎でも放っておけない。お前も知ってるだろ?コビーは民間人だろうと海賊だろうと、善人であろうと悪人であろうと助けを求められれば絶対に見捨てないし、自分にできることは全部やって救おうとする。おかげで、新しい元帥殿にはすっかりと嫌われちまったから世話ねーよな。大佐に昇格したのは奇跡だよ、奇跡。あと俺の涙ぐましい献身のおかげかな。……どいつもこいつもあいつのことを優しいとか言って持て囃してる見てーだけど、俺は出会った時からコビーのそういうところが気に食わないんだよ。別に、人に優しくするのはいいさ。海賊にも分け隔てなく接するのも、百万歩譲って許す。でも、肝心のあいつ自身に優しくできねーのはどうなんだ?いっつも人のことばっか心配して、守って、戦って……それじゃあ命がいくつあっても足りねェだろうが。現に、あいつはあの時の戦争で死にかけた。ああいうのが本当に許せねぇ。夢のためだなんだと命投げ出しやがって……少しはこっちの気持ちも考えろってんだ……まぁ、もう二度とあんな真似しないようにこのヘルメッポ様が目ぇ光らせてるから大丈夫だとは思うが……お前、もしコビーがなんか無茶してたり……いや無茶しそうだなって思ったら絶対におれを呼べよな。いいか、絶対だぞ!?……大体、ちょっとおれより強くて見聞色の覇気が使えるからって調子に乗りすぎなんだ。お前は知らないだろうけど、目醒めたばっかの頃は毎晩眠れない〜っておれのベッドに潜り込んで泣きべそ書いてたのに、コントロールできるようになったら『今、今日の仕事は上官がいないから適当でいいかとか考えてたでしょ?わかるんだなぁ、見聞色の覇気使いなので』とかドヤ顔で自慢してきたからな?!うるせーなおれだってそのうち覚醒してやるからな!!そうだ、調子に乗ってると言えば、あいつ最近女の子にモテてるらしいな?確かに昔と比べたら背も伸びたしシュッとしちゃけどなぁ、元々丸っこくてかわいい顔してたんだから今更だろ。でも、あいつの私服ホント引くほどダッセェってことを世のコビーファンの女の子たちに教えてやりたいぜ。そもそも、あのバンダナがダサい。お前、あのバンダナはあれだぞ?ガープさんに修行つけてもらってた時に髪が邪魔だって言うから、おれが箪笥の肥やしにしてたやつを冗談で渡したのにずーーーーっと馬鹿みてぇに着けてて逆にこっちがびっくりしたわ。あいつはセンスが終わってる。素材がいいんだし、給料だって殆ど手付かずなんだからいいモン買ったらいいのに一年中ジャージ着やがって……デートなのに軍の支給ジャージで来られたおれの気持ちわかるか?バッチリとキメた服着てるおれがめちゃくちゃ気合い入ってるみたいじゃんか。髪も、毎朝梳かしてやってるのになぜか跳ねるんだよなぁ……昔は普通にさらさらだったし、やわらかいけど癖毛ってわけじゃねーのに……やっぱ定期的に美容院に行くべきなんだよ。なのにあいつ『怖いから……』とか意味わかんねぇこと言って毎回逃げんだよ。ああ見えてコミュ障なのは相変わらずだわ。いや、人当たりはいいし誰とでも上手く付き合えんだけど、どうやらそれもかなり神経使うらしくて、部屋に帰るともう閉店ガラガラって感じ。クッション抱えて動かないから、おれがホットミルクいれてやったり抱きしめてやんなきゃなんないから、世話が焼けるぜ……」

ーーーーどうしよう、完全に話題のチョイスを間違えてしまった。

今日は華の金曜日。とはいえ、世界の平和を守る海軍に休みはない。が、今日は珍しく自分の所属するコビー隊は明日丸ごと休養日を与えられたため、こうして街に降りて酒場でみんなで楽しく宴会を開催していた。唯一、コビー大佐だけが急用で呼び出しをくらっていなかったが、仕事が終わったらすぐに向かうと言っていたので、俺たちは遠慮せずに飲み始めた。そのうち、仕事を終えたガープ中将と隊の者も混ざりはじめる。うちの隊は元々ガープ中将の隊にいた海兵が多いし、上司である大佐と少佐が中将のお弟子さんなので、普段から交流も盛んなためみんな仲がよかった。
わしの奢りじゃ!というガープ中将の雄叫びに俺たちのボルテージは天元突破。普段は酔い潰れないようセーブしているヘルメッポ少佐がいい感じに出来上がっているのを隣で見た俺は、ついこう聞いてしまった。

「ヘルメッポ少佐って、コビー大佐の嫌いなとこってあるんですか?」

少佐と大佐がラブラブであることはコビー隊のみんな……いや、本部の海兵なら周知の事実だ。海軍の中でも年若い二人の仲睦まじい姿に密かに癒されているし二人の愛を疑ったことは微塵もないが、なんというか、独り者の意地悪な質問が酒の力を借りてついぽろっと出てしまったのだ。
だが、結果はご覧のとおり。好きと嫌いは表裏一体とはこのことか。頼みの綱であるガープ中将とボガードさんはニヤニヤしながら見ているだけで、コビー大佐への不満と称した盛大な惚気を据わった目でノンブレスで捲し立てるヘルメッポ少佐を止められる者はいなかった。

「コビー大佐……!お願いします、早く……早く来てください……!!」

「あ?おい何よそ見してんだよ。話はまだ終わってねーぞ」

天に向かって祈っていると、首をホールドされて逃げ道を塞がれる。結局、一時間後にコビー大佐が酒場にやってくるまでの間、俺は延々とヘルメッポ少佐からコビー大佐の嫌いなところを聞かされる羽目になったのだった。

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