しあわせの味



ガープ隊には『おにぎりの日』というものがある。
なんのことはない。まるで海王類の如き食欲のガープ中将や腹ぺこ海兵たちは三度の食事では全く足りないので、持ち回りの当番でおにぎりを握り、みんなで食べるのだ。
おにぎりは握った人の個性というか、人柄が滲み出るとぼくは密かに思っている。
たとえばガープ中将のおにぎりは一目で彼が握ったとわかる。なんせ、サイズが大砲の砲弾くらいあるからだ。具材も骨付き肉が丸ごと入っていたりして、豪快で野性味のあるガープ中将らしい。
ボガードさんのおにぎりはまるでお手本のような綺麗な三角形で、何個作っても形が崩れたりしない。具材はシンプルに大きな梅干しが一つだけで、スマートで仕事のできるボガードさんらしい。
ヘルメッポさんのおにぎりは……特にこれといった特徴はない。形は丸寄りの三角で、具材は鮭のハラミを入れがち。それくらいだ。
でも、作った本人ですら見分けのつかないそれを。何百個のおにぎりの中からヘルメッポさんのおにぎりを見つけられる自信がぼくにはあった。
今日も大皿に山のように積み上げられたおにぎりから、ヘルメッポさんが握ったものを見つけて手に取る。海苔越しに伝わってくる熱々のお米に何度も持つ手を変えながらかぶりつくと、具材はやっぱり脂ののった鮮やかな鮭。

「お前、ホント美味そうに食うよなぁ」

リカが握ったやつじゃなくてもいいのか?浮気じゃね?と隣に座るヘルメッポさんの揶揄する。ぼくは口の中に入っていたおにぎりを咀嚼し、ごくんと呑み込んでから口を開く。

「だって、"この"おにぎりが一番美味しいんだもん」

そうニッコリと微笑むと、ヘルメッポさんは「どれも同じじゃね……?」と理解に苦しむといった表情を隠さなかった。本人に意図は伝わってないけど、別に構わない。
ぼくは残っていたおにぎりを口の中に放り込み、しあわせの味を噛み締めた。

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