初事件
The First Incident





刑事になって初めての事件は私の家がある場所、米花町で起こった。まあでしょうね。予想通り寸分の狂いもなく。

みんなが車に乗り込む中、佐藤警部補と高木巡査部長に声を掛けられた私は少し思案する。実は、免許をとったばかりのペーペードライバーなのでこの緊急事態に運転をするのは怖いのだ。そう、案外チキンハートです。


「あの、お二人とも」
「どうしたの?」
「あ、何だい?」
「お二人で向かっていただいても良いでしょうか?」


そう言えば、頭にクエスチョンマークを浮かべる二人。いやあ、こういう時こそ私のアリスの使い時だよね。あ、兄に入れてもらったものではなく、私が元々持っていた方のアリスで。


「私はアリスで先に向かいます」
「あら、いいけど……」
「アリスって、瞬間移動みたいなのですか!?」


興奮する高木さんにそんな感じです、と適当に返して目を瞑る。……特定した。よし、と気合いを入れるのと、私が瞬間移動をするのは同時だった。ふと消える間際に見た高木さんの驚いた顔が面白くて印象に残った。

私のアリスのひとつは、『位置移動』。その名の通り、位置を特定してそこへ瞬間移動するアリスだ。だから、刑事として働くに於いてはとても有用なのである。





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