※女主




「今年も彼氏できなかったなぁ」

隣でそう呟く同期の女は、学生時代からクリスマスイブの度に毎年そう言っていた記憶がある。言わなかったのは、去年の12月24日だけだ。百鬼夜行での大規模な戦いに駆り出されたからだと言えば、聞こえはいいかもしれない。

「それ毎年言ってない?」

去年のことは知らないふりをして、そう問いかける。毎年のように彼氏ができては、クリスマスイブを迎えることなく別れていることを知っているので、ちょっとした皮肉になってしまったが、彼女は気にしていないようだった。

傑がいなくなってから、その纏う雰囲気に大きな変化はなかったけれど、外面を繕うのが上手いこの彼女のことだ。あの青春の3年間の片思いを捧げた男のことを、忘れられているはずもない。

「そうだっけ?」

へらりと笑う、その顔がずっと昔から好きだった。伝えれば、深く考えない性格の彼女のことだ。恋人という関係性に昇格できる可能性もあるかもしれない。互いにもう適齢期だし、それなりに言えば婚約なんかもできるかもしれない。五条家は面倒な家柄ではあるが、優秀な呪術師である彼女なら、家の奴らも納得するだろう。
だけど。

「これからは毎年、五条と此処に来て、傑にお花を添えるんだろうね」

特別な名前のつく関係になったらきっと、この12月24日を彼女と過ごすことは、未来永劫ないのだろう。その他の364日を手に入れられるのに、たった一日を親友に明け渡すことがどうにも悔しくて、僕はまだ何も言えずにいる。

いくらこの眼がよく視えるといっても、未来が視えたことなんてないけれど。きっと僕は来年も、この聖夜を好きな女の子と過ごしているに違いない。この一日を手放さないたった一人の親友の呪いを、恨めしく思いながら。

タイトル:1/365の埋葬

短すぎて女主夢サイトに載せられなかったやつ供養