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街が見渡せる駅のロビー。階段を降りていると、人がまだ多く残っているのが見えた。
「き…君!!さっき強引に中に入った人だね。中の様子はどうなんだね…え…あ、ちょっと…」
駅員の問いにエルザは答えず、拡声器を奪い取る。
「命が惜しいものは今すぐこの場を離れよ!!!!駅は邪悪なる魔導士どもに占拠されている!!!!そしてその魔導士はここにいる人間全てを殺すだけの魔法を放とうとしている!!!!できるだけ遠くへ避難するんだ!!!!」
『やり方が荒いんだって』
後ろから一部始終見守りながら尻尾は言う。駅員が慌てて駆け寄るが、本当の事だ、君たちも避難した方がいいというエルザの言葉に悲鳴をあげて逃げていった。それにしても、風が強い。短い髪が視界の邪魔をするのをかき揚げてふと後ろを振り返ると、とんでもない光景が目に入った。
『エルザ!!駅が…!』
「…こ…こんな事が…駅が風に包まれている!!!!」
大きな駅を包むさらに大きな風。自然のものでは無いそれを呆然と見つめた。
「ん?なぜハエが外に2匹…そうか…ヤジ馬どもを逃がしたのはてめえらか」
「エリゴール!!!貴様がこれを!?」
「女王様よォ、てめェとは一度戦ってみたかったんだがな…残念だ。今は相手をしてるヒマがねえ。中でじっとしてな」
「くっ」
『エルザ!!』
エルザが魔風壁の中に吸い込まれる。エリゴールを睨むと、「そう怖い顔をするな」と笑われた。
「呪いの赤髪。てめェのことだな」
『それがなんだ』
「てめぇの呪いには興味があったんだがな。魔力に違和感はあるがそう強くはねぇ。所詮噂か」
『………』
「フン。仲良く風の中で喚いてな」
『待て!!!重力操、がっ!!!』
ふいをつかれ、風の中に飛ばされる。尻尾の体はエルザに受け止められた。
『エリゴール!!!』
「待て!」
『離せエルザ!!』
「やめておけ…この魔風壁は外からの一方通行だ。中から出ようとすれば風が体を切り刻む」
『!』
飛び出そうとした尻尾がエルザを見ると、エルザの右手はボロボロだった。服はちぎれ、切られた細かな傷からは血が流れている。エルザはそんな傷には目もくれず、エリゴールに叫び続ける。
「エリゴールこれは一体何のマネだ!!?」
「鳥籠ならぬハエ籠ってところか。…にしてはちとデケェがな。てめェ等のせいでだいぶ時間を無駄にしちまった。オレはこれで失礼させてもらうよ」
「どこへ行くつもりだ!!?エリゴール!!!話は終わっていないぞっ!!!」
返ってくるのは風の音だけ。どうやら立ち去られたようだった。
『…逃げられたか』
「一体…どうなっているんだ…この駅が標的じゃないというのか!?」
『わからん。が、手を見せろエルザ。止血だけでもしておく』
羽織を端から破き、エルザの腕に巻き付けていく。
『で、一度駅のホームへ戻ろう。まだアイツらが転がってるハズだ』
「そうだな。聞くのが手っ取り早い」
『っし、完了』
「行くぞ」
『おう』
言い終わるより早く、走り出した。
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