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日が沈もうとしていた。ひたすらに走って、ようやくクローバーの町、定例会の会場が見えて、無数に生える木の間に2つの影がたっているのが見えた。
「いた!!!」
「じっちゃん!!!」
「マスター!!!」
「しっ」
マスターの姿を確認して駆け寄ろうとした時、大きな手に止められた。
「今イイトコなんだから見てなさい♡」
『へ…』
大きな手の持ち主は、髭の生えた体も大きなおじさんだった。
「てかあんたたちかわいいわね、ウフ♡」
「な…何この人!?」
「青い天馬、ブルーペガサスのマスター!!!」
「あらエルザちゃん大きくなったわね」
『エルザ知り合いなのか』
「小さい時に少しな」
そうか、と青ざめたナツとグレイを見ながら言う。
「どうした?早くせんか」
マスターの声が聞こえた。カゲの笛を吹く体制は整っている。エルザが止めようとするが、また別の、おそらくマスターであろう人に止められる。
「さあ」
マスターがカゲを急かすように言う。ナツがまた飛び出そうとして、ブルーペガサスのマスターに制された。マスターふたりは動かない。それどころか、顔には笑みを浮かべている。
「何も変わらんよ」
マスターには今、何が見えているんだろう。
「弱い人間はいつまでたっても弱いまま。しかし弱さの全てが悪ではない。元々人間なんて弱い生き物じゃ。一人じゃ不安だからギルドがある、仲間がいる。強く生きる為に寄り添いあって歩いていく」
思い浮かんだのは、フェアリーテイルのみんな。
「不器用な者は人より多くの壁にぶつかるし、遠回りをするかもしれん。しかし明日を信じて踏み出せば、おのずと力は湧いてくる。強く生きようと笑っていける。
そんな笛に頼らなくても、な」
マスターが笑った。カゲは笛を落とし膝を落として、「参りました」と一言だけ言う。その頬には涙が見えた。
「『マスター!!!』」
「じっちゃん!!!」
「じーさん!!!」
「ぬぉおぉっ!!?なぜこの四人がここに!!?」
「さすがです!!!今の言葉目頭が熱くなりました!!!」
「痛っ」
マスターがめちゃくちゃ驚いた顔をして、そんなに驚く?と思った。エルザに思いのまま胸に抱き寄せられたマスターは、少し可哀想だった。
「じっちゃんスゲェなァ」
「そう思うならペシペシせんでくれい」
「一件落着だな」
『無事で何よりだよ』
マスターに言葉をかけながら視線をカゲにやったが、俯いていて表情は見えなかった。無理もないか。そう思ったとき、カゲの近くに落ちていた笛から煙が出てきて、なんと喋り出したのだ。
「カカカ…どいつもこいつも、根性のねェ魔導士どもだ」
驚愕の視線が笛に集まる。
「もうガマンできん。ワシが自ら喰ってやろう」
「笛がしゃべったわよっ!!ハッピー!!!」
「あの煙…形になってく!!!」
ルーシィの呼びかけに答えないハッピーに笑った。笑いすぎだとは、自分でも思っている。
「貴様等の魂をな…」
あれ何されるんだっけ?と一瞬思って、ああ食われるのかと冷静に考えた。食われる?
『怪物ー!!!』
「遅せぇんだよおめーはよ!!」
グレイに頭を叩かれた。
「な…何だ!?こんなのは知らないぞ!!」
「あらら…大変」
「こいつァゼレフ書の悪魔だ!!!」
『知らねーって、お前らが使おうとしてた魔法だぞ…』
目の前には怪物。それを見たカゲの言葉に呆れた声を出した尻尾。
「腹が減ってたまらん。貴様等の魂を喰わせてもらうぞ」
「なにーっ!!!魂って食えるのかー!?うめえのか!?」
「知るか!!!」
『うまくても食おうとすんじゃねえ!!!』
キラキラした顔のナツの頭を叩く。ナツを黙らせたところで、ルーシィが呟いた。
「一体…どうなってるの?何で笛から怪物が…」
「あの怪物がララバイそのものなのさ。つまり生きた魔法。それがゼレフの魔法だ」
「生きた魔法…」
「ゼレフ!!?ゼレフってあの大昔の!?」
「黒魔導士ゼレフ、魔法界の歴史上最も凶悪だった魔導士…何百年も前の負の遺産がこんな時代に姿を現すなんてね…」
悩ましげな顔のブルーペガサスのマスター。ゼレフという名は、魔法を使って生活する者達の中で知らぬものではなかった。
『ゼレフ…』
「さあて…どいつの魂から頂こうかな…」
ララバイの口奥から鈍い光が見えた。
「決めたぞ。全員、まとめてだ」
「ひーーっ!!!」
ルーシィが耳を塞ぐ。それと同時に、他4人がいっせいに駆け出した。
「鎧の換装!!?」
エルザがララバイの足を斬った。ナツがララバイによじ登り、顔を蹴り飛ばす。
「小癪な!!!」
ララバイは口から魔法を飛ばした。ナツはよけるが、向かってきた方にはギルドマスターたち。
「アイスメイク"盾(シールド)"」
「氷の造形魔導士か!?」
「しかし間に合わん!!くらうぞっ!!!」
花のように大きく開いた氷。それを見て、ギルドマスターは感嘆の声をあげる。
「速い!!!」
「あの一瞬でこれほどの造形魔法を!!?」
「造形魔法?」
「魔力に"形"を与える魔法だよ。そして、形を奪う魔法でもある」
「アイスメイク"槍騎兵(ランス)"!!!」
ルーシィに説明するハッピーの声。体の半分を削られたララバイは大きく体を傾けた。
「な…なんて破壊力なの!!!」
『重力操作="沈(シェン)"!!!』
「今だ!!!」
尻尾が動けないようにララバイの足を地中に沈めた。グレイの声に、ナツとエルザが攻撃にかかる。
エルザの黒羽の鎧と、ナツと火竜の煌炎。グレイの氷魔法と、尻尾の重力魔法。4つがあわさって、ララバイに致命傷を与えた。
「バカ…な…」
大きな音を立てて倒れていくゼレフ書の悪魔。尻尾は初めて組む割に、なかなか連携も取れてたなぁと息を吐いた。
「ゼレフの悪魔がこうもあっさり…」
「こ…こりゃたまげたわい」
「かーかっかっかっかっ!!!」
「す…すごい…こ…これが…これがフェアリーテイル最強チーム!!!!」
「どうじゃー!!!すごいじゃろぉぉぉっ!!!」
「すごーい!!!超カッコイイ!!!」
驚くギルドマスターの顔と、マスター、ハッピー、ルーシィの笑顔が対照的で、思わず尻尾は笑った。
「いやいや、いきさつはよくわからんがフェアリーテイルには借りができちまったなァ」
「うむ」
「なんのなんのー!!!ふひゃひゃひゃひゃひゃ!!!ひゃ…ゃ…は」
マスターの笑い声が尻つぼみになっていき、ハテナマークを頭に浮かべた。マスターの視線の先に目を向けると、ゼレフ書の悪魔の下敷きになった、会場が。
『やっべ』
たらりと、冷や汗が垂れた。
「ぬああああっ!!!定例会の会場が…粉々じゃ!!!!」
「ははっ!!!見事にぶっこわれちまったなァ」
ナツが笑う。いや正直、笑うところではない。
「捕まえろー!!!」
「おしまかせとけ!!!」
『お前はこっち側だ!!!』
「マスター…申し訳ありません…顔をつぶしてしまって…」
「いーのいーの、どうせもう呼ばれないでしょ?」
その場から逃げながら、グレイと顔を見合わせて『お疲れ』と笑い合った
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