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ギルドマスターたちの命を狙ったテロから数日後。
太陽が真上を通り過ぎた頃に、尻尾とグレイはいつも通りギルドに向かっていた。
『?グレイ、そっちはギルドじゃねえぞ』
いつもなら左に曲がる道を、まっすぐ進むグレイ。グレイは振り返って答えた。
「知ってるよ。ルーシィを迎えに行くんだ」
『?』
「忘れてそうだからな。おォ、ここだ」
『…なんでルーシィん家知ってんの?』
「ナツに聞いた」
ふぅん、と言って、ルーシィの家に上がり込む。鍵とかそのへんは割愛。広くて、女の子らしい部屋だった。本人の姿が見当たらなかったが、水の音が聞こえて納得する。
『シャワー中か』
「しゃーねえ待つか。にしてもすげぇ本の数だな」
『文学少女らしいからな』
「へぇ」
『ルーシィ、上がったみたいだ』
水の音が止まって、扉を開ける音がする。「隠れよう」とグレイに言われて、物陰に隠れた。機嫌が良さそうなルーシィ。服を着て出てきた彼女は、何かを書き始めた。
『小説かな』
「さあな。行くぞ」
小声で話すがグレイには特に相手にされず、そろりと近づいてソファに座った。ルーシィが背伸びする。「やっぱりじぶん家はおちつくくなァ」と言ったところで、グレイが声を出した。
「これで家賃7万Jは確かに安いなぁ。いいトコ見つかったなルーシィ」
『おじゃましてまーす』
「不法侵入ーーーっ!!!!しかも人ん家で服脱ぐなー!!!」
「ぐほぉ」
ルーシィの蹴りが綺麗に決まった。グレイに。思わず拍手をしたが、「アンタもよ!!!」と怒られた。
「ちょっと待て…誤解だ…!!脱いでから来たんだが」
『私は脱いでないし』
「帰れ!!!尻尾はそっちじゃない!!!」
『まぁまぁ落ち着いて』
尻尾は怒鳴るルーシィを宥める。やれやれと言ったようにグレイが口を開いた。
「例の"アレ"今日だぞ。忘れてんじゃねーかと思って来てやったのによォ」
「アレ?」
「やっぱり忘れてんじゃねーか。出発前にナツが言ってただろ?」
『ナツとエルザの対決だよ』
目玉がとび出そうなくらい驚いたルーシィの顔に笑う。慌てて出ていったルーシィのあとを追いかけて、ギルドに着くとそこでは既に観衆がエルザとナツを囲んでいた。
「ちょ…ちょっと!!!本気なの!?二人とも!!」
「あらルーシィ」
「本気も本気、本気でやらねば漢では無い!!!」
「エルザは女の子よ」
「怪物のメスさ」
『失礼だな』
フェアリーテイルの男どもはエルザのことをなんだと思ってんだ。尻尾がそう呟くと「少なくとも人間じゃない」との答えが返ってきた。誰かまでは問い詰めないが、エルザに聞かれたらたぶっ殺されると思う。横ではルーシィとグレイが最強チームがなんだかんだと言い合いしていて、最終的にミラを泣かせていた。
『なんだ?ミラ泣かしたのか?』
「違っ…、ミラちゃんごめんって!!」
グレイ、そういうとこあるよな。そう言われたグレイは撃沈。反対側では最強に反応したエルフマンが口を開く。
「確かに…ナツやグレイの漢気は認めるが…"最強"と言われると黙っておけねえな。フェアリーテイルにはまだまだ強者が大勢いるんだ。オレとか」
「最強の女はエルザで間違いないと思うけどね」
「最強の男となるとミストガンやラクサスもいるし」
「あのオヤジも外す訳にはいかねえな」
『最強が沢山いて大変だねえ』
「あ、女は尻尾もいたね」
『レビィ?』
いつも優しいレビィが辛辣だった。聞くと「早く本返してね」と言われた。やべえ借りっぱなしなの忘れてた。謝るがレビィは聞いてくれない。傷心の尻尾はミラに助けを求めるも、ミラはまだ泣いている。
「私はただナツとグレイとエルザが一番相性がいいと思ったのよ」
「あれ?仲が悪いのが心配って言ってませんでした?」
『ミラの言動は真に受けない方がいいぞ』
「なんにせよ面白い戦いになりそうだな」
「そうか?オレの予想じゃエルザの圧勝だが」
見つめ合うナツとエルザ。2人は言葉を交わし、本気で行くと告げたエルザが換装したのは炎帝の鎧、耐火能力の鎧だった。それを見たハッピーは少し考えてカナの元へ向かう。
「やっぱエルザにかけていい?」
「なんて愛のないネコなの!!!」
『カナが主催の賭けかぁ…』
「尻尾!!アンタも賭けてきな」
ええ、賭けた分全部持ってかれそう…と言うが、カナは聞かないふり。
『んー…じゃあナツに1000J』
「おや、大穴狙いかい?」
『いや、今後の成長を願って。』
「あたしこーゆーのダメ!!どっちも負けてほしくないもん!!」
「意外と純情なのな」
『可愛いな』
気づいたら、戦いは始まっていた。
初手はナツ。炎を纏った右腕で殴りかかるも簡単に避けられ、エルザが大きく刀を振った。再度蹴りをかますがまたも避けられ、更に支えていた手を蹴られバランスを崩す。すぐに口から炎を吐き出すが避けられ、そのまま横に振った炎が観客を襲った。
「あちち」
「こらナツ!!てめェ!!!」
「すごい!!!」
「な?いい勝負してるだろ」
「どこが」
『避けられてばっかだなー』
笑う尻尾。再び向かっていく2人。そこに大きな破裂音が響いた。
「そこまでだ。全員その場を動くな。私は評議員の使者である」
鳴らされたのは手のひら。観衆を押しのけて出てきたのはカエルだった。
「評議員!!?」
「使者だって!!?」
「何でこんな所に!!?」
「あのビジュアルについてはスルーなのね…」
『喋るネコもいるからな』
とはいえ、なぜフェアリーテイルまでわざわざ来たのか。その疑問は、直ぐに解消される。
「先日の鉄の森テロ事件において、器物損壊罪他11件の罪の容疑で…エルザ・スカーレットを逮捕する」
「え?」
『は?』
「なんだとぉおぉっ!!!?」
ナツの叫びがこだました。
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