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「みんな無事!!?」
『…ん』

ルーシィの声が聞こえて目を開けた。

「おおっ!!!着いたのか!!?ガルナ島!!!」
「どうやら昨日の大波で海辺に押し寄せられたみたいね」

ナツの声もする。あたりは明るく、太陽も高い位置にあるようだった。

「大丈夫か?」
『グレイ…』

うつ伏せたままのグレイが下から覗いてくる。縄はほどけたらしい。

『無事でよかった』
「お前のおかげだ。助かった」
『いんや。運が良かったんだ』

グレイがふっと笑う。そして少し考えた後、村に向かおうとするルーシィ達を止めた。

「何だよ!!!ここまで来たらもうつれ戻せねーぞ!!!」
「いや、オレたちも行く。やっぱりおまえらだけ先に2階行くのもシャクだし、破門になったらそれはそれでつまらん」
『私が行くことは確定なのな』
「行くだろ。S級さんよ」
『行くけど』

2人が笑う。グレイも笑って、尻尾も笑った。

「行こうぜ」
「おおっ」

そうして向かった村。その門前には、大きく"KEEP OUT"の文字があった。

「立ち入り禁止…って一体どんな村だよ」
『悪魔がいるんだろ?』
「シャレにならん」
「すみませーん!!!開けてください」
「まいったな。壊すか」
「ダメ!!!」
『お前はもう少しものを大事にすることを学ぼうな、ナツ』

二言目には壊すだの殴るだのいうナツを諭すと、上から声がした。

「何者だ」
「!魔導士ギルドフェアリーテイルの者です…あの…依頼を見て来たんですけど…」

こちらからは暗くてよく見えないが人らしい。しかし、ルーシィが説明するも受理されたとの報告は来ていないと言われ、口篭る。

「何かの手違いで遅れてんだろ。村に入れねえなら帰るけど」
「オレは帰らんぞ」
「黙ってろ」

こういうとき、悪知恵が働くのはグレイだ。

「ギルドの紋章を見せろ」

言われたとおり、それぞれが体につけている紋章を見せた。ナツは右肩、ルーシィは手の甲、グレイは左胸、ハッピーは背中、尻尾は…右の腰骨の上。

「本物のようだぞ」
「う〜む…その女の服を脱がせ」
「何で!!?関係ないでしょ!!!コラ!!!脱がすな!!!」
「うむ…すまん調子こいた」
「尻尾!!アンタも脱がすんじゃないわよ!!」
『いや私女に見られないし…』
「女なのに変わりはないでしょ!!」

素直に認めた門番に、もう1人の門番が呆れたように見えた。そして尻尾は怒られた。ナツとグレイも脱がせてたのに。入ることを許され、進んだ先で少し待つと体を布で覆った団体が現れた。

「よくぞ来てくださった。魔導士の方々…」

喋りにくいのかほがほがと言う先頭の村長は、「これを見て頂きたい」と周りの村人に布を取らせ、自身も布を取り去った。

「やはり……」

尻尾も息を飲む。足が黒く刺々しくなった者、額にツノが生えた者、羽毛に覆われた腕、鋭い鉤爪、エトセトラ…みなどこか、体の一部がヒトでないものになっていた。

「スゲェモミアゲ!!!」
「いや…見てほしいのはこっちじゃ…ほが…」

ナツは見てるところが違う。誰もツッコミはしなかった。

「驚かれましたかな?ほがほが…この島にいる者全て…犬や鳥まで例外なく、このような呪いにかかっております。ほが」
「言葉を返すようだが、何を根拠に"呪い"だと?はやり病とは考えねえのか?」
「何十人という医者に見てもらいましたが、このような病気はないとの事です、ほが。それに…こんな姿になってしまったのは"月の魔力"が関係しておるのです」
「『月の魔力?』」

ルーシィと尻尾の声が揃う。村長は語る。

「元々、この島は古代からの月の光を蓄積し、島全体が月のように輝く美しい島でした。しかし何年か前に突然、月の光が紫色に変わり始めたのです」
「紫!?そんな月見た事ねーぞ」
「うん」
「外から来た者は皆、そう言うのですが…ほがほが」

だが、この島の月は紫になった。そして紫の月が現れ始めてから、村の人達の体は変わりだしたのだという。

「月が出てきた!!」

気付かないあいだにあたりは暗くなっていたらしい。ハッピーの声に上を向くと、確かにそこに浮かんでいたのは。

『紫の月…』
「本当だ…紫…」
「気味悪ィな…コイツは…」
「これは月の魔力の呪いなのです」

村長がそう言った瞬間、村の人が全員、苦しみ出した。

「な…何!!?やだ…どうしちゃったの!!?」
『オイ!!!』

そしてその姿は全身、悪魔のような姿になってしまった。

『………』
「驚かして申し訳ない…紫の月が出ている間…ワシ等はこのような、醜い悪魔の姿へと変わってしまう。これを呪いと言わず…何と言えばよいのでしょうか?」

尻尾は開いた口が塞がらない。子供が泣いている。親が慰める。皆、つらそうな表情を浮かべ、泣いていた。

「朝になれば皆…元の姿に戻ります…しかし…中には元に戻れず心まで失ってしまう者が出てきたのです」
「そんな…」
「心を失い魔物と化してしまった者は殺す事に決めたのです」
「元に戻るかもしれねえのにか!!?」
「放っておけば皆がその魔物に殺される…ほが…幽閉しても牢など壊してしまうのです。だから…ワシも息子を殺しました。心まで悪魔になってしまった息子を…」

村長が泣きながら取りだした一枚の写真。それには昨日、船まで運んでくれた船乗りのボボが写っていた。

「……!!!」
「その人…ええ!!?でも…あたしたち昨日…」
「しっ」

グレイがルーシィを止めた。

「ようやく消えちまった理由がわかった。そりゃあ…うかばれねえわな」
『………』

尻尾は言葉を失って、写真から目を逸らす。あの時忽然といなくなった彼は、何を思って自分たちをここまで運んでくれたのだろう。

「さぞ高名な魔導士方とお見受けします、どうかこの島を救ってください…このままでは全員…、心が奪われ……悪魔に……」
「そんな事にはならねえっ!!!」

深々と頭を下げる村人たちにナツが叫ぶ。尻尾は紫の月を見上げた。

「私たちの呪いを解く方法は一つ…月を破壊してください」
「え!!!?」
『…え?』


驚いて村長を見る。村長はまっすぐ、こちらを見つめていた。

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