「兼さんがお世話になりました!!」
店に戻ってきた堀川くんがそう言って深々と頭を下げたのは、あれから20分後。
改めて自己紹介をして、じゃあまた、と言って別れたのはそれからまた20分後のことだった。
「お」
和泉守さんと顔見知りになって数日後の朝。
起きてテレビをつけて、お味噌汁を作っていると流れ出したのは戦隊ヒーローモノ。
昔はよく見てたなぁ懐かしい、と思い敵と戦うヒーローを見る。赤青黄緑黒、5人が並んで必殺技を放った。
「おー…最近のはCGも凄いんだなぁ」
敵は倒されて、いい感じの決めポーズをするヒーロー達。あ、こういうところは変わってないのね、と思いながら、ぐつぐつと音を立てる鍋の蓋をとった。うん、いい感じ。
「御手杵!ご飯ー!」
何度呼んでも起きてこない御手杵を叩き起こしに行く。御手杵は大きな欠伸をして、キッチンに向かおうとした私を捕まえた。
「お味噌汁冷めちゃうんですけど」
「ん…大丈夫…」
「大丈夫じゃなーいの。ほら、眠いなら食べてからまた寝よ」
「…尻尾も一緒かぁ?」
「一緒一緒」
んー、わかった。そう言ってゆっくり立ち上がった御手杵は声を出しながら背伸びをして、洗面台に向かう。扉に頭を打ち付けるのまで見届けて、出してなかったお茶やお箸の準備を済ます。
TVでは、ヒーローの男の子達が言い争いをしているところだった。
私はその場面で、先日知り合った顔見知りの姿を見つけた。
「…和泉守さん?」
「知り合いか?」
普段聞かない御手杵の低い声に驚いて振り返る。歯ブラシを口にくわえたままの御手杵の表情は、よく見るいつもの無表情。私は胸を撫で下ろして答えた。
「…顔見知りだよ。カフェのバイトの堀川くん、…分かるよね?あの子の同居人なんだって」
「あー…なるほどなぁ」
歯ブラシを数回横に動かして、止めた。
「尻尾が芸能人の名前知ってるのに驚いたぞ。しかも和泉守がカフェの後輩くんの知り合いなんてなぁ。世間は狭い」
「…そうだね。てか、ご飯前に歯磨きしないでよ」
「んぁ、悪い悪い」
にへら、と笑みを浮かべて洗面台に戻った御手杵。さっきのはピリついてたよね、確実に。そう思うけどそれを本人にぶつけることは無い。
TVの中では和泉守さんが喋り倒していた。少し冷めてしまった味噌汁を見て、軽くため息をついてしまった。
「御手杵ー、お味噌汁あっためなおすからちょっと待っててー!」
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