カランコロンと、軽やかな音が鳴る。
「いらっしゃいませー!…あ、和泉守さん」
「よう」
あれから、和泉守さんは度々カフェに来てくれるようになった。
「国広は休憩中か?」
「いえ、少し買い出しに出ています。さっき行ったばかりなので、すぐには帰ってこないかと。すみません」
「そうか。いや構わねぇよ。コーヒー1つで」
「はーい、かしこまりました」
話すうちに和泉守さんの敬語が取れて、多少フランクに話すようになっていた。私はと言うと、同い年だから敬語はいらないと言われたものの、和泉守さんが芸能人だということが頭によぎってしまい、なかなかそう出来ないでいる。
「アンタまだ敬語取れねーのな」
「あは…そうですねぇ、すみません」
「謝るこっちゃねーがよ、」
「店員ですし、ここじゃ勘弁してください」
ではごゆっくりどうぞ。そう告げて和泉守さんのテーブルから離れる。うーん、やりにくい。
「おまたせしました。コーヒーおひとつお持ちしましたー」
「おーサンキュ。」
失礼します、と言ってすぐテーブルを離れる。スマホ片手にコーヒーを飲むその姿は、どこから見ても絵になるなぁと思った。
「ただ今戻りましたー!あ!兼さんまた来てたの」
「おう国広。急にあとの撮影がなくなってな」
「今日のスタジオ遠いところじゃなかった?わざわざ来てくれたの?」
「ここのコーヒーが好きなんだよ」
いいだろ別に、と言いたげな顔に堀川くんが「そっか」と笑って答える。カウンターに向かってきた堀川くんに話しかけた。
「買い出しありがとう。重かったでしょ」
「全然!このくらい重くもなんともないですよ」
「頼もしいなぁ」
力こぶを見せるようなポーズをして笑う堀川くん。この間の和泉守さんの意地の悪い笑顔を思い出した。堀川くんはにこっと朗らかな笑い方をする。顔は似てるのに、笑い方はこうも違うのか。
「相模さん?」
「いや、なんでも」
少しほうけていたらしい。兄弟じゃないんだし笑い方まで似てるわけないかと思い直し、「じゃあ休憩行ってきますね!」という堀川くんに返事を返す。休憩と言いつつ彼は、エプロンを外して和泉守さんのテーブルに向かったのだが。
prev next
back