二ヶ月近くぶりに入った御手杵の家は少し埃っぽかった。


窓を開けて換気をして、買ってきた野菜たちを冷蔵庫に入れて、掃除機をかけて洗濯物を下ろして。

一息ついてテレビをつけると、夕方のニュースが流れていた。


「もうこんな時間か」


撮影の進み具合によって仕事の終わる時間は変わると、以前聞いた。だから帰ってくる時間は聞いてない。さっきラインしたとき、「めっちゃNG出される」ってぶすくれてたから、多分遅くなるんだろう。
そう、なんとなく考えて。


「ハンバーグつーくろ」


しばらく会えてない、疲れて帰ってくるだろう彼に好物をつくってあげよう。







日もすっかり暮れて、もうすぐドラマが始まるなって時間に、ガチャ、鍵を開ける音がした。

靴があるから、私が来てるのはすぐに分かるはず。
どことなく軽やかな足音を聞きながら、ハンバーグを蒸してた鍋の蓋を開ける。


「尻尾」

「おかえり、御手杵」


ドア開けたの気が付かなかったよって、笑いながら腰に回る御手杵の腕を撫でた。うん。ただいま。って、くぐもった声で返事された。くすぐったい。


「2ヶ月も会わなかったの、初めてだな」

「そーだねぇ」


ぐりぐり頭を押し付けられて、くすぐったいってば、と抗議すると、御手杵は鼻で笑った。


「なに」

「いや。俺、帰ってきてすぐ尻尾んち行こうとしたんだけど、なんとなく俺んちにいる気がしてやめたんだ。正解だった」

「そりゃ良かった。私今日は自分ちに帰る気無かったからね」

「はは、撮影頑張ってよかったなぁ。御褒美いっぱいだ」


ハンバーグのいい匂いがする。御手杵には好きにさせたまま、遅い夕飯の準備を整えた。



手を合わせて、一口運んで、目の前の彼を見た。
ほっぺを膨らまして、美味しそうに食べていて、目が合うと嬉しそうに微笑む。

いろんな意味でお腹いっぱいだ、なんて、少し恥ずかしいセリフを心の中で吐いた。




この日はこれまでで一番長い夜だったと思う。

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