どうやらあのドラマ、身長差をテーマにした少女漫画の実写ドラマらしい。
身長差あるカップルとないカップルのあるあるーをふんだんに取り入れた…ような内容。

と、原作をさっき読み終えた私は思いました、まる。
見覚えがあったのは、中学生の頃に友達から借りて読んだ漫画のなかにこれがあったからだった。漫画は買ったのではない。おそらく御手杵がマネージャーさんに読めと渡され、そのまま部屋に放置していたであろう漫画本を私が見つけたのである。
…これ多分御手杵読んでないな。紙袋から出した形跡が無かった。



「身長差があるカップル、か」



実を言うと、ドラマの身長差カップルとまではいかないが、私と御手杵もそこそこ身長差がある方である。
その差35cm。私の身長は157cm。
ドラマの設定上の身長差は45cm。ということは、相手役の彼女は身長が147cmということになる。うわ小さい可愛い。
女の子の小さくて可愛いは武器になる。金髪碧眼ってもうこの子男の夢を詰め込んだとんでもドリームガールじゃないか。胸はないみたいだけど。おっとこれは彼女に失礼だ。
御手杵もこんな子に迫られたら悩殺だよなぁ、


「うわぁっ」


仮にも彼氏を信用してないような言葉が出てきたところで、急に体が持ち上げられた。
犯人は言わずとも、御手杵。昨日ドラマ放送後にうちに泊まりに来た御手杵は、寝惚け眼で一旦私を床に下ろすと、すぐに膝裏に手を回し勢いよく持ち上げた。


「何も言わずにベッドから居なくなるのやめろよぉ…」


びっくりするだろ、と御手杵は掠れた声で話す。
私は少し驚きながらもごめんね、と返した。


ふらふら、とそのまま連れていかれる先は寝室。
御手杵は優しく私を布団に運ぶと、その隣にゴロンと寝っ転がった。


「御手杵。相手役の人、私と同じくらいの身長なんだね」

「……全然違う…尻尾の方が少し高いし、あからさまな上目遣いはしないだろぉ…」

「早速色仕掛けかけられてんのね。」


可哀想に、とは口にしなかったけど、御手杵はそれを分かってるんだろう。少しの間沈黙が訪れて、口を開いたのは御手杵だった。


「ドラマの中で、立ったままキスするのが難しいとか、たまに目線が同じ高さになると変な気持ちになるとか、身長差ありすぎて兄妹に見られるとか、抱きしめた時息ができないとか、…いろいろやるんだけどさ」

「あぁ、身長差あるある」

「全部がなんとなく物足りないっていうかめんどくさいっていうか…。尻尾だったら欲情するのに何も感じないんだよなー」

「それは…」


彼女としては嬉しい限りなんだけど。


「今の演技、上手じゃないのはわかってるんでしょ」

「相手役が尻尾ならいいのに」

「話聞いて。それはもう相手役の人のこと私だと思うしかないじゃん…ってそうじゃなくて。いややっぱそういうことだよ」

「どういうことだ?」

「演技できないなら、普段の御手杵を出すしかないでしょ。でもって、それは私相手じゃないとできないなら、目の前にいるのは私だと思う他ないじゃん」

「それはそうなんだけど…んー…」

「なに」


ギシッとスプリング音をたてて御手杵が体制を変えた。
遠慮なく下の私に体重を乗っけてきて、重い重い。


「やっぱり、尻尾じゃないと意味が無いんだよなぁ」


顔に髪があたってこそばかった。瞼を持ち上げると茶色の瞳に射抜かれる。
また顔が近づいて来るのがわかったが、御手杵はピタリと動きを止めた。


「首痛ぇ…」

「む、」


降ってきたのは口じゃなくて、胸板だった。痛いのはこっちだ。


ドラマ初回が放送されて、数日後の話だった。

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