トップページへ
目次選択へ
投稿日:2021年02月23日






 ルーフェンが出ていってしまうと、アレクシアは、ハインツに囁いた。

「ねえ、結局貴方達ってどういう関係なの?」

「関係?」

「貴方と、召喚師様と、トワリスの関係よ。まだ王都がアーベリトだった頃から、一緒だったのでしょう?」

 ルーフェンが出ていった扉を見つめたまま、ハインツはこくりと頷いた。

「……関係は、一言では、言えない。でも多分、友達……みたいな」

「友達?」

 そう聞き返して、アレクシアがちらりと笑った。

「……なに?」

 ハインツが、不機嫌そうに声を低くする。

「いいえ、別に? 友達にしては、異常に仲が良いと思っただけ。……言っておくけど、馬鹿にしたわけじゃないわよ? 私、なんだかんだ貴方やトワリスのことは気に入ってるもの」

「…………」

 眉を上げて妖艶に微笑むアレクシアを、ハインツはしみじみと見つめた。

「アレクシアは、まだ、ルーフェンのこと、嫌い?」

「……嫌いとか、そんな安っぽい感情じゃないわ。自分でも、よく分からないけれど。ただ、好きじゃないのは確かね。だって私達、目の前で彼に同輩を殺されてるんだもの」

 アレクシアは、目を細めて笑った。
そして、ルーフェンが出ていった方に顔を向けた。

「まあ、戦場での出来事だから、仕方がないとも思うわ。でもあの時、召喚師様はアーベリトの人達まで殺したでしょう? そのことを思うと、割り切れない部分もあるのよ」

 ハインツが、黙ったまま首を横に振った。

「違う。ちゃんと理由、ある」

「言えない理由なんて、ないのと同じよ」

「…………」

 言葉を詰まらせたハインツに、アレクシアはため息をついた。

「……教会の関係者でなくたって、シュベルテには召喚師のいない国を望む人は多かったのよ。だっておかしいでしょう? 国の存亡が、召喚師なんていうたった一人に委ねられてるなんて。……だから教会は、アーベリトを攻めたのよ。再び王都となって、召喚師ではなく国民による国造りを実現させるために」

 そう言ってから、アレクシアは肩をすくめた。

「正直、簡単に勝てると思ってたわ。アーベリトなんて、召喚師がいるだけの街だったから。でも実際は、一瞬で皆消し飛んだ。……召喚師の前じゃ、どんなに大勢で挑んだってまるで相手にされてないって、その時思ったわ。世界で召喚師の存在が重宝されているのも、少し納得してしまった。ただそれでも、余所みたいに国の守護者だと崇める気にはならなかったわね。むしろあの姿は、守護者というより死神のようだった。……アーベリトの死神って、誰が言い出したのかは分からないけれど、彼にはぴったりのあだ名だと思うわ」

 俯いて、ハインツは口ごもった。

「……シュベルテの人達が、ルーフェンを怨むのは、仕方ない。けど……」

 アレクシアは、しばらくその言葉の続きを待った。
しかし、ハインツが完全に黙り込んだのを見て、苦笑した。

「……無駄話ね、不快にさせたならごめんなさい。でも大丈夫よ、少なくとも魔導師団は、召喚師様に盾つこうなんて思ってないもの。彼を良く思っていないのは事実だけど、今はそれ以上に、教会のやり方が気に入らないから」

 ハインツが、ふと顔を上げた。

「教会が、国のこと後回しで、ルーフェンをミストリアに、送ろうとしたから?」

「まあ、それもあるわ。というより、そもそも召喚師を完全に消そうなんて、現実を見ていないイシュカル教徒共の戯れ言よ。あの時戦場に立っていた人間なら、きっとそんなことは言えないはず。アーベリトの王が死んで、結果的にはシュベルテが勝って王都になったけれど、召喚師の力がどれほど恐ろしいものか、私達はあの時痛感したもの。実際、戦力という形でなら、召喚師は必要だわ。理想論ばかり唱える教会の考えには、同意できない」

 アレクシアは目を細めると、不敵に微笑んだ。

「だからね。今は、召喚師様に従うわ」




- 15 -


🔖しおりを挟む

 👏拍手を送る

前ページへ  次ページへ

目次選択へ


(総ページ数100)