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投稿日:2025年12月31日




第一章──岐路に立つ旅
第一話『選択』




 サーフェリアの王都、シュベルテの南区には、港湾都市ハーフェルンに次ぐ大市場が展開されているが、少し通りを外れると、そこは退廃した貧民街に繋がっていた。
七年ほど前、魔導師団の体制が再建、一新されてからは、闇市での違法売買が厳しく取り締まられるようになり、また、イシュカル教会による救貧活動の功績で、浮浪者の数は目に見えて減少したが、それでも、たった数年で、治安が大きく解決することはない。
南区の裏通りでは、今日も、昼間から濃い酒と煙草の匂いが漂っているのであった。

 ギールが酒場の扉に手をかけると、瞬間、卓についていた男達が、一斉に振り返った。
やかましく笑っていた口を閉じ、皆一様に、ギールのことを睨みつけている。
男達は全員、頬に同じ蛇の刺青を入れた、いかにもガラの悪い風体をしていたが、ギールは動じずに、酒場に入っていた。

「お邪魔します。この中に、ウェイン・ボルトンさんはいらっしゃいますか」

 ギールは、厨房近くの仕切り台で肘をついている、店主らしき男に尋ねた。
店主らしき、と言っても、同じく顔に刺青が入っていることから、一般人ではないのだろう。
この場にいる人間は、ギールを除いて、全員が盗賊であった。

 店主は、酒の入ったグラスを揺らしながら、下卑た笑みを浮かべた。

「おいおい兄ちゃん。ここはなぁ、おめぇみてぇなお子様が来る場所じゃねぇんだよ。痛い目みたくなきゃ、とっとと失せな!」

 言いながら、店主は、酒入りのグラスをギールに投げつけた。
琥珀色の液体が、顔の前に出した腕にかかって、ギールの外套を濡らす。
頭から酒をかぶっても、微動だにしないギールを見て、男達は、手を叩いて大笑いした。

 ギールはつかの間、足元で割れたグラスの破片を見ていたが、やがて、頭巾をとると、酒のかかった黒髪を、鬱陶しそうに払った。

「失礼な、私は成人済みですよ。お子様ではありません。童顔なのは、母譲りなんです。……そんなことより、早くウェイン・ボルトンさんを出してください」

 男達の馬鹿笑いが、ぴたりと止む。
尻尾を巻いて逃げ出すかと思いきや、淡々と返してきたギールの態度が、気に食わなかったのだろう。
殺気立ち始めた男達は、ギールに襲い掛かろうとしたが、しかし、思い止まった。
彼らの中から、帯剣した大男が一人出てきて、ギールの前に立ちはだかったからだ。

「……この俺が、ウェインだが?」

 野太い声で言って、ウェインは、丸太のように逞しい腕を組んだ。
その野牛の如き体躯と並ぶと、先程否定したばかりだと言うのに、ギールのほうが子供のように見えてしまう。
それでもギールは、動じることなく、ウェインの全身を目を細めて見回した。

「茶髪の大男、頬に蛇の刺青、肩に十字の古傷……確かに、証言と一致していますね」

「ああ? 証言?」

 訝しげに問い返して、ウェインは顔を歪める。
ギールは、不意に外套をめくって見せると、自身の腕章を示した。

「私は宮廷魔導師です。ウェイン・ボルトンさん、貴方には複数件の強盗殺害容疑がかかっています。先日、ハワード邸で魔導師を九名殺したのも、貴方ですか?」

 その瞬間、男達の顔が、さっと強張った。
宮廷魔導師とは、魔導師の中でも、特に能力が高い者として選出された、王宮仕えの武官である。
普段は、ただの盗賊討伐に駆り出されるようなことはないのだが、魔導師を九人も斬り殺したウェインの噂を聞いて、ついに動き出したのだろう。
男達は、酒で蕩けていた目を一転して光らせると、そろって席を立ち、各々の剣を構えた。

 ウェインが抜き放った、術式の彫られた大剣を見て、ギールは目を細めた。

「……その剣も、盗品ですね。比較的新しい……ハワード氏の作品ですか。……なるほど。どうせ独学でしょうが、貴方、魔術で魔剣を扱っていたんですね。道理で魔導師が九人もやられるはずだ」

「分かってんなら歯ぁ食い縛んなぁ! てめぇを十人目にしてやるよ! かかれ──!」

 ウェインの合図で、男達が一斉に飛びかかる。
刹那、ギールの手が動き、外套の内側から光が閃いたかと思うと、弧を描いた斬撃が、男達を切り裂いた。
深くはない、だが、見事に四肢の関節部分を狙った、戦意を削ぐ斬り方であった。

 剣を取り落とし、悲鳴を上げながら床に転がった数人を見て、後ろに控えていた男達は、思わず後ずさった。
次に打って出た者は、確実に殺されるだろう。
ギールの牽制に怯まなかったのは、斬撃を魔剣で受けたウェインだけであった。

 ウェインは、魔剣に魔力を込めると、雄叫びを上げて、ギールに斬りかかった。
その様子を見て、周囲の男たちが、ほっと胸を撫で下ろす。
彼らは、魔剣を手にしたウェインの強さを、よく知っていた。
魔剣の放つ衝撃波を伴った斬撃が、どんな強敵でも容易く叩き斬ってきたところを、何度も目の当たりにしていたからだ。

 ウェインの一撃は、宮廷魔導師を剣諸共、真っ二つにするだろう。
そう確信していた、その次の瞬間──。
ギールが、手にしていた剣を翻し、刃先をウェインに向けた。
斬りかかられているというのに、防御をする気配もない、奇妙な構え方だ。
同時に、パンッ、と空気が破裂するような音が響いて、ウェインの魔剣が弾け折れる。
一同は、何が起きたのか理解できず、呆気なく砕け散った魔剣の破片を、呆然と見つめていた。

「……一つ、言っておきますが」

 口を開いたギールが、ウェインに向けて剣を突きつける。
よく見ると、ギールの持つ剣は、不思議な形状をしていた。
一見すると、ただの片手剣のようなのだが、刃渡りに対して、やけに柄が長くて太い。
柄の部分は、一部が空洞になっており、つばの上に突き出した穴からは、ゆらゆらと硝煙が上がっていた。

 ギールは、冷たい声で続けた。

「ハワード氏の作品は、基本的に実用向きでなく、その魔剣も記念品として作られたものです。つまり、魔力さえ強制的に奪えば、観賞用の装飾剣。むねに衝撃を与えれば、簡単に折れます」

 そう言われて初めて、ウェインは、はっと自らの掌を凝視した。
確かに、魔剣に込めたはずの魔力が、根こそぎ吸い取られたかのように消えている。
魔力を吸収する魔術など聞いたこともないが、考えられるとするならば、魔剣を折られた時に何かしら細工をされたのだろう。
ふと、視線を落とすと、床に散らばった魔剣の破片の中に、小指の先程の小さな金属塊が混じっていた。

 ギールは、忌々しそうに鼻を鳴らした。

「そのようなことも分からずに、魔剣を扱おうなどと、魔法具に対する冒涜としか言いようがありません。……貴方には、過ぎた力だったようですね」

 言いながら、ギールが剣を持ち変えると、その刀身が、硝煙と共に不気味な魔力を帯びて光った。
我に返ったウェインが、防御の体勢をとろうと身構えるも、己が手にしているのは、砕け散った鉄塊だ。
瞬間、ギールが閃くように剣を滑らせると、ウェインの両腕が、勢いよく飛んだ。

「────っ⁉︎」

 絶叫が上がり、苦痛に悶えた巨躯が、どしゃりと床に崩れた。
一拍置いて、斬り飛ばされた腕が、魔剣の残骸と共にぼたり、ぼたりと落下する。
立ち尽くしていた男達の身体は、ウェインの腕から噴き出した血でびっしょりと濡れて、真っ赤に染まっていた。

 剣に纏わりついた血を振り払い、ギールが、細めた目を男たちに向ける。
すると、ひっ、と引き攣った声を上げて、数人の男達が、酒場の外へ走り出した。

 もつれる脚を必死に動かして、転げるように扉を押し開ける。
宮廷魔導師を相手にウェインが敗北した今、もはや勝機はないと判断したのだろう。
彼らの表情には、色濃い恐怖が滲んでいた。

 我先にと酒場を飛び出した男たちは、しかし、扉を出てすぐ、そろって足を止めた。
まるで、逃走する彼らを待ち構えていたかのように、一人の女が立ちはだかっていたからだ。

 女は、威圧的な雰囲気を醸している割には小柄であった。
年の頃は、二十代半ばといったところだろう。
被った頭巾の隙間から、編まれた赤褐色の髪が垂れ下がっている。
普段であれば、小刀の一本でもチラつかせて脅してやるところだが、今の彼らに、そんな考えは浮かばなかった。
外套の隙間から見え隠れしている彼女の腕章──宮廷魔導師の証が、男達を震え上がらせたのだ。

 女──トワリスは、鞘ごと片手剣を抜くと、不意に姿勢を低くした。

「大人しくして下さい。抵抗されると、手元が狂います」

 その忠告を理解するよりも速く、繰り出された剣撃が首筋を打つ。
男達は、指一本動かす間も与えられずに、その場で意識を失ったのであった。



 外で控えていた魔導師達に、戦意喪失した盗賊達を連行するよう指示を出すと、トワリスは、酒場の中へと足を踏み入れた。
荒れ果てた店内には、蹴倒された卓や椅子が散乱しており、その至る所に、飛び散った酒と血がこびりついている。
この惨状に、新人の魔導師たちは顔を青くしていたが、今回の捕縛対象は、魔剣を所持した指名手配犯だったのだ。
相手の力量と規模を考えれば、最低限の被害に留められたと言える状況であった。

 気絶したウェインの両肩に止血を施し、魔導師たちに身柄を預けると、ギールは、トワリスに駆け寄った。

「お疲れ様です、トワリスさん。すみません、何人か取り逃してしまって……」

 酒場の外でトワリスに昏倒させられ、確保された盗賊達を一瞥して、ギールが頭を下げる。
トワリスは、小さく首を振ると、ギールに向き直った。

「今回は人数が多かったんだ、仕方ないよ。何人か逃げるだろうってことは予測してたし、想定の範囲内だから大丈夫。むしろ、魔剣の所持者を相手にして犠牲者を一人も出さなかったんだから、上出来だと思う」

 素直に褒めると、顔を上げたギールの表情が、ぱっと明るくなった。
ギールは、つい最近、若干二十三歳にして魔導師団から選出されたばかりの新人宮廷魔導師だ。
宮廷魔導師団に入団を認められたわけだから、優秀な人物であることは確かであったが、その経験の浅さゆえか、はたまた実直すぎる正義心ゆえか、少々無鉄砲さが目立つ若者であった。

 新人らしいと言えば新人らしい、ギールの熱意の空回り具合や、思い込みの激しさは、トワリスにも身に覚えがあった。
だから、しばらく彼を任務に同行させて、独り立ちできるように教育しろと宮廷魔導師団長──ジークハルトに言われた時は、なんだか昔の自分を見ているようで、苦々しい気分になったものである。
しかし、それとこれとは別問題。
命じられたからには、教育係に徹さねばと、この数月、トワリスは持ちうる経験と技術を以って、ギールを鍛え上げてきた。

 最初は、トワリスが直属の上司になると知って、ギールも驚いた様子であった。
なんといってもトワリスは、今から一年ほど前、獣人がサーフェリアに渡来してきた一件で売国奴の容疑をかけられ、一躍"時の人"となった宮廷魔導師である。
元より、獣人と人間の混血というだけでも話題性に事欠かないのに、そこに、単身ミストリアに行って帰ってきたなどという偉業が加わって、トワリスの存在は、良くも悪くもシュベルテ中に知れ渡ることとなった。

 時が経って、今でこそ道行く人々に指を差されるようなこともなくなったが、それでも、"あの獣人混じりの宮廷魔導師"の噂は健在である。
正直なところ、そんな怪しげな人物が教育係と知って、ギールも良い気はしなかっただろう。
だが、行動を共にしている内に、トワリスが売国行為を働くような輩ではないと、ギールは理解してくれているようだったし、トワリスもまた、噂など関係なく、ひたむきに任務に打ち込むギールの姿勢を、好ましく思っていた。

 いつもは、何かしら指摘してくることが多いトワリスに褒められて、嬉しかったのだろう。
照れたような顔になると、ギールは言った。

「魔剣に関しては、僕も対策しなければいけないと思っていたんです。元が装飾剣とはいえ、使いようによっては、こんな酒場程度、一振りで消し飛ばせるでしょうからね。ところ構わず暴れられては、近隣の民家にどんな被害が及ぶか分かりません。ですから、捕縛よりも先に、魔剣を封じることを優先しました。その対策が上手くいったことと、ウェイン・ボルトンが大して魔法具に詳しくなかったこと。今回は、この二点が功を奏したのかと!」

 生き生きと話しながら、ギールは、腰の剣に手を置く。
かく言うギールの剣も、魔剣の一種なのだろう。
彼は、魔法具に精通しているらしく、いつも珍しい武具を装備していた。

 魔法具とは、広義には魔術を込めて使う道具全般を指すが、一般的には、長杖や魔剣といった、魔導師が使用する武器のことを言う。
用途が様々なので、その性能や形状に明確な決まりはないのだが、それにしたって、ギールが持っているのは、トワリスも見たことがない、斬新な使い方をする武具ばかりであった。

 ギールの剣に視線を落とすと、トワリスは尋ねた。

「対策って……その剣で? また随分、柄の長い不思議な剣だね。短い槍にも見えるけど」

 ふと、ギールが盗賊たちと対峙していた時に聞こえた、妙な爆発音が耳の奥に蘇る。
同時に鼻を刺した、硝煙の臭いを思い出していると、ギールが、どこか誇らしげに抜刀して見せた。

「トワリスさん、"銃"って聞いたことありますか?」

「じゅう……?」

 聴き慣れない単語に首を傾げると、ギールは頷いた。

「銃というのは、筒の中で火薬を爆発させ、その勢いで発射された弾を、相手に撃ち込んで殺す道具です。昔、魔導師が少なかった地域では使われていたんですよ。単体でも立派な武器になりますし、魔術と複合して使うこともできます。まあ、弾数に限りがありますし、手入れが面倒なので、今はほとんど見ませんが……。これは、その銃の筒部分の先に、刃を取り付けた"銃剣"と呼ばれるものです。ここから弾を撃ち出すんですよ」

 言いながら、鍔から突き出した銃口部分を見せられて、トワリスは瞬いた。
先程聞こえた爆発音や、煙たい臭いは、この銃剣から発せられたものだったというわけである。
不思議そうに銃剣を眺めながら、トワリスは尋ねた。

「じゃあ、厳密に言うと、魔法具とは少し違うんだ。これが、今回の魔剣対策だったの?」

 ギールは、銃剣を外套の内側に戻すと、首肯した。

「はい。工夫次第では、いくらでも使いようがある武器なんです。例えば、撃ち出した弾が発光するように細工をすれば、合図や目眩めくらましになりますし、今回は、弾が魔力を吸収するようにいじりました。だから、この銃剣に撃たれた魔剣は、魔力を持たないただの鉄同然に成り下がるんです。上手くいくかどうか、一度、試してみたかったんですよね。魔術と複合して使うことも出来ると言いましたが、僕的には、"単体でも武器になる"っていう点が、銃の一番の強みだと思っているので!」

 熱の入った口調で語りながら、ギールは、銃剣の柄を撫でた。
どんな原理かは分からないが、魔力を吸収する弾を撃ち込まれるなんて、魔導師からすると、確かに厄介な話だろう。
──なんて、同じようなことを、一年ほど前にミストリアでも痛感した気がするが。

 トワリスが黙っていると、ギールは、我に返った様子で顔を上げた。

「あっ、長々とすみません。個人的に思い入れがあるというか、試行錯誤して作り上げてきたものなので、つい……」

 眉を下げて、ギールは、再び銃剣に視線を落とした。

「いわゆる魔法具の方が使い慣れてはいますが、相手が魔導師となると、詠唱や術式でどんな一手に出るのか、なんとなく予想されてしまいますからね。僕は皆さんに比べて、目立った才能なんてありませんから、使えるものは何でも使うつもりです。それが例え、時代遅れの道具であっても、意表さえ突ければ優れた武器になる。相手が魔術に精通している者なら尚更……ね。僕は、そう信じているんです」

 不意に、瞳に強い決意の光を浮かべて、ギールはそう締めくくった。
その結論に至るまで、彼にも様々な葛藤があったのだろう。
実際、他の宮廷魔導師たちに比べると、ギールは魔力量の少ない方であった。

 魔力量が多ければ、必ず優秀な魔導師になれる、というわけではないが、周囲と差をつけようと思うなら、やはり平均以上の魔力量を持っている必要がある。
なぜなら、いくら魔導書を読み込んで膨大な知識をつけても、結局のところ魔力がなければ、使える魔術は限られてしまうからだ。
とはいえ、魔力量というのは、持って生まれた時から大きく変動することはないので、増やそうと思って増えるものではない。
故に、魔力量が少ない身の上で、宮廷魔導師を夢見てしまった者は、その夢を追いかけていく過程で、努力ではどうにもならない現実にぶち当たることになるのだ。

 厳しい訓練や試験を乗り越えて、ようやく正規の魔導師になっても、更に上の宮廷魔導師を目指すなら、より過酷で熾烈な経験を重ねなければならない。
その道中で、突出した魔術の才能がない者は、幾度となく己の無力さを自覚し、悔しさに涙することになるだろう。
それでも諦めない、一握りの屈強な精神力の持ち主は、魔術以外で非凡さを見せつけるしかなかった。
トワリスで言えば、獣人混じり故の身体能力。
アレクシアで言えば、透視能力を持った蒼眼。
ハインツで言えば、リオット族特有の頑強さが、それに当たると言える。

 そう考えると、トワリスを含む現役の若手の宮廷魔導師たちは、真っ当な出世理由を持たない、随分な色モノ揃いである。
場合によっては、異端だと指差されてもおかしくはないし、実際に異端扱いされたことは多々あるわけだが、そんな自分達でも、純粋な強さだけで地位を確立して来られたのは、ひとえに、現在の宮廷魔導師団長であるジークハルトが、異端の力さえ才能と捉える稀有な人物だからだろう。

 ジークハルトは、強さの理由を差別しない。
しかし一方で、家柄や性別といった要素を一切排除して、実力だけで相手を評価する、厳正な人物でもある。
つまるところ、気に入られようとか、贔屓してもらおうとか、そういった小手先の技が、ジークハルトには全く通用しないのだ。

 勿論、宮廷魔導師は、ジークハルトの一存だけで決まるわけではないので、彼に選ばれたからといって、出世できるわけではない。
だが、七年ほど前、教会の台頭により、一時解体状態になった魔導師団の建て直しに大きく貢献したジークハルトは、今や軍部では、召喚師に次ぐ影響力を持っていた。
兎にも角にも、そんなジークハルトにも認められて、ここに立っているわけだから、魔力量が並みでも、ギールは実力者の一人と言えるわけだ。
彼にとっては、前衛的な魔法具の扱いや発想が、魔術以外で非凡さを発揮できる手段だったのだろう。
若々しい無鉄砲さはあるものの、一心に走って宮廷魔導師になれたのが、ギールの努力の賜物であることに違いはなかった。


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