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投稿日:2026年01月06日




 エイリーンは、辺りに蔓延はびこっている狼たちを、憎々しげに回視した。
その指先が動くと、周囲の木々の根まで地を這い出し、ガロウを吊り上げる根に加わった。
狼たちを牽制する枝々も、一層数を増やしていく。
長い黒髪を揺らしながら、エイリーンは、明確な殺意を帯びた言葉を紡いだ。

「……うるさい、臭い、鬱陶しい……今すぐ死ね。汚らわしい獣共が……」

 狼たちは、エイリーンの地に響くような声に気圧された様子で、じりじりと後ずさっていく。
屈していないのは、ガロウだけであった。
ガロウは、牙の隙間から泡を吹き出しながらも、酸欠で血走った眼をエイリーンに向け、もがき、抵抗し、自身を捕える枝に爪を突き立てている。

 その反抗的な態度が、気に食わなかったのだろう。
エイリーンの指先に、更に濃密な魔力が集結していく。
リーヴィアスは、慌てて杖先から風の刃を放ち、ガロウを拘束する太い枝を切断すると、両者の間に割って入った。

「ま、待った待った! エイリーン、やめてください! ガロウたちも反撃しようとしないで、一旦落ち着きましょう!」

 リーヴィアスは、ガロウが解放されるや、再び低く唸り出した狼たちに制止の声をかけ、そんな彼らの視界にエイリーンが映らないように立った。
エイリーンは、眠りを邪魔された上、大嫌いな獣臭に囲まれて、不機嫌になっているようだ。
鼻を袖口で覆って、心底嫌そうに吐き捨てた。

「……早くなんとかしろ、と言っただろう。獣風情けものふぜいに、何を手間取っている。さっさと消し飛ばせ」

「獣風情だぁ⁉︎ 俺たちはヴォル・グルの山を統べた古狼王の血を継ぐ一族だぞ⁉︎ お前こそ死ね精霊風情が!」

 リーヴィアスが返事をする前に、人語と狼語が入り混じった反論が、背後からのべつ幕無しに飛んでくる。
リーヴィアスは、トントンと長杖で地を叩いて、その場の注目を自分に集めた。
そして、不満げにこちらを睨んでくる、双方の視線を受けながら、ゴホンと咳払いをした。

「二人とも、口より先に手を出すのはやめてください。私たちは敵同士ではありません。
……エイリーン。あちらは、東方の山に棲む人狼族の皆さんです。一番大柄なのが、今代の族長ガロウ。
……ガロウ。こちらは北の森の主で、現在は古代樹の近くで色々とお手伝いして下さっている、葬樹そうじゅのエイリーンです。
私たちは全員、グレアフォール王の下で締結させた、三種族の不戦協定に賛同した同志ですよ」

 リーヴィアスは、エイリーンとガロウをそれぞれに紹介してから、いきり立つ両者をいさめた。
しかし、ガロウの怒りの矛先は、エイリーンだけではなく、そもそもリーヴィアスに向かっていたらしい。
毛むくじゃらの大きな手で、いきなりリーヴィアスの頭部を掴むと、ガロウは大口から牙を覗かせた。

「なぁにが不戦協定だ、早々に破りやがって! おかげでこっちは、群れの五頭がやられたんだぞ!」

「いたたたたっ!」

 木の実でももぎ取るような勢いで頭を揺さぶられ、リーヴィアスが悲鳴をあげる。
長杖でガロウの太い腕をバシバシと叩き、どうにか拘束から逃れると、リーヴィアスは、首をさすりながらガロウに向き直った。

「む、群れがやられた? 一体どういうことです?」

 ガロウは、唾を飛ばしながら怒鳴った。

「それはこちらのセリフだ! 一月くらい前、俺たちの山に、黒い泥みてぇな連中が入り込んで来やがった。噛みついても引っ掻いても止まらない、くっせぇヘドロみてぇな精霊族だ。そいつらは、俺たちの兄弟姉妹を五頭呑み込んで、今も山に居座っている!
これは一体どういうことだ⁉︎ 俺たちは、他種族の領域に踏み込まないなら新大陸へ渡してやるし、一族の安全も保障してやる、とお前が言ったから、その約束を守って東の山に籠っていたんだぞ。お前は、『同じことを他の種族にも説明している、これから三種族は一切の関わりを断つことになる』、とも言っていたな。あの言葉は嘘か? 決まりに従っていた俺たちが、何故精霊族に襲われねばならん……!」

「ヘドロみたいな精霊族……? それって……」

 呟いたリーヴィアスが、エイリーンの方を見やる。
狼たちと距離を保ったまま、エイリーンは、気のない返答をした。

「手当たり次第に周囲のものを呑み込んで浸食してくるヘドロなら、沼畔ニヴェルであろうな。奴らは沼地に宿る、死骸を喰う精霊だ。近場で山が燃えたり、雷が落ちたりして草木灰が沼に降り注ぐと、その灰を糧に膨張する。雨なんかで増水して水嵩みずかさが増した時などにも、調子づいて広がってくることがある。以前、葬樹の森にも入り込んできた無謀な連中だ」

 ぴくりと片耳をあげたガロウが、エイリーンを睨んだ。

「なんだぁ? やけに詳しいじゃねえか。まさかお前、奴らの仲間か」

「は? 我(わたし)は葬樹だ。あのような悪食連中と一緒にするな」

 エイリーンとガロウの視線がぶつかり、バチバチと火花を散らせる。
割って入り、その火花をかき消すと、リーヴィアスはガロウの方を向いた。

「ガロウ、少し誤解があるようなので、再度説明させて下さい。私やグレアフォール王が提示した『三種族不干渉の誓い』に賛同してくれたのは、『新大陸への移動』を希望した種族のみです。沼畔ニヴェル族は古代樹にも属していない精霊ですし、私たちの意向を理解しているのかどうかも分からないので、その賛同者には含まれません。ですから、現段階では、その行動を制限させることはできないんです」

「なんだと? では、お前らではどうにもできん、ということか? 俺たちは、決まりを破った奴がいたら対処してやると聞いていたから、こうしてお前の匂いを辿って探していたんだぞ」

「無論、人狼族に被害が出てしまったことは問題です。貴方たちの棲家を取り戻すためなら、私も助力は惜しみません。ただ、誓いに賛同してくれなかった種族というのは、すなわち言葉がほとんど通じない方々なので……。ここはガロウたちの山だから撤退してください、と伝えたところで、果たして沼畔ニヴェル族が帰ってくれるかどうか……」

 困ったように眉を下げ、リーヴィアスが口ごもる。
ガロウは、血管の浮き上がった腕をブルブル震わせると、大声で吠えた。

「ならば殺せッ! 言って分からん奴は殺せッ! お前やグレアフォールにはできんというなら、俺たちが奴らに報復することを許可しろ! 賛同者ばかりが不自由を強いられ、非賛同者は何をしても罰せられないというなら、誓いを守るほうが損じゃねえか!」

「お、お気持ちは分かりますが、今だけの辛抱だと思って耐えてください。賛同者は、不自由を強いられているのではありません。言葉による意思疎通と平和的解決の選択肢を持っているから、新大陸に渡れる権利を持っているんです。つまり、ガロウたちが行く新たな東大陸には、話すことで争いごとを回避したい、と考える獣人族だけが集まります。これが実現した未来には、今回のように、貴方たちが他種族に問答無用で襲われるようなことはなくなるでしょう」

「だから今は大人しく引き下がれというのか⁉︎ ふざけるな‼︎ 俺たちは、身内が殺されても黙っているような腰抜けではないぞ!」

「それは分かっています。引き下がれとは言っていません。ただ獣人族が精霊族に報復すれば、種族間の溝がまた深まることになります。無用な犠牲を出さずに解決する方法があるならば、それを模索したいと言ってるんです」

 リーヴィアスは、どうにかガロウたちをなだめようとしたが、その言葉は、彼らの激しい怒号によってかき消され、ほとんど届かなかった。
けたたましい狼たちの吠え声が不快だったのだろう。
エイリーンは、長い耳を押さえて、いつの間にかゴーティやレクエスと共に岩陰の奥まで退避している。

 リーヴィアスは、逃げるように岩陰に駆け寄って、嫌がるエイリーンを引っ張り出した。
そして、騒ぐガロウたちには背を向け、ひそひそと話した。

「エイリーン、今の聞いていたでしょう。巨人リオット族と意思疎通していたような感じで、貴方から沼畔ニヴェル族に、『人狼族の山から出ていって下さい』と伝えることはできませんか? 私やガロウでは、人語を話さない精霊族を説得することはできないので……」

「…………」

 エイリーンは、耳打ちしてきたリーヴィアスを、鬱陶しそうに突き放した。

「奴らは巨人リオット族以上に低脳で排他的だ。対話なんぞ試みても意味はない。退けたいならば、強制的に干からびさせて、微精霊に還すことだな」

「うぅ……そうするしかありませんか? 古代樹の森の外でそういう展開にするのは、極力避けたいんだけどなぁ……」

 その時、激しく喚いていたガロウが、大きな耳でエイリーンとリーヴィアスの会話を器用に聞き取ったらしく、食い気味に尋ねてきた。

「びせいれい? なんだそれは。精霊族の有効な殺し方か?」

 ガロウが口を開いた途端、やかましく鳴いていた他の人狼や狼たちが、ぴたりと黙り込んだ。
先程リーヴィアスが何度なだめても、一切鳴き止まなかったのに、族長が話し出せばすぐに黙る。
よく統率の取れた群れである。
振り返って感心するリーヴィアスの横で、エイリーンはハッと嘲笑した。

「他種族に精霊族を殺すことはできん。出来るとすれば、せいぜい器を壊して、微精霊化させることくらいだが……貴様らでは、それすらも不可能だろうな。能がない、魔力もない、臭くて騒々しいだけの獣風情では」

「ぁあ⁉︎ てめぇさっきから喧嘩売ってんのか⁉︎ 何ほざいてんのかさっぱり分かんねえし!」

 ガロウが怒鳴ると、再び彼の後ろに並んでいる狼たちも吠え出した。
エイリーンは、地べたに這いずる虫でも見るような目で、怒るガロウたちを見据えている。
まあまあ落ち着いて! と何度目とも分からない仲裁をして、リーヴィアスは、エイリーンの方を向いた。

「でもエイリーン、さっき沼畔ニヴェル族は、以前葬樹の森にも入ってきたことがある、と言っていましたよね? その時、貴方たちはどうやって彼らを追い払ったんですか?」

 狼たちの鳴き声が収まってきたところで、エイリーンは答えた。

「侵入したところで、森の主が葬樹であることに気づき、奴らの方から撤退していった。我らは特別だからな。葬樹は、精霊族をも喰らって微精霊ごと取り込める唯一の種。話が通じぬ連中でも、まだ消滅できぬ内は我らから遠ざかろうとするし、逆に寿命の近い連中は寄ってくる。だから弔いの儀が成り立つのだ、貴様も分かっているだろう」

「……つまり、沼畔ニヴェル族は、説得なんかしなくても、貴方を見たら逃げるだろうってことですか?」

「見ただけでそうなるかは分からんが、少なくとも葬樹の力を感じれば、本能的に避けようとするだろう」

「へえ、なるほど! 流石は葬樹の森の主様! 精霊界では、言葉が通じない相手でも撤退させてしまうくらい有名なんですねぇ。……ということなので、ガロウ、安心してください。エイリーンの協力があれば、なんとかなりそうです」

「──は?」

 聞き返したエイリーンとガロウの声が、見事にそろった。
何故か自分が沼畔ニヴェル族の放逐ほうちくに向かう流れになっていることに気づくと、エイリーンは、瞳孔を細めてリーヴィアスを睨んだ。

「おい待て、わたしはそこの獣共に助力してやるつもりはないぞ。人狼族が棲家を失おうが、滅びようが、全く知ったことではない」

「まあまあ、いいじゃないですか。もしかしたら、これはセルーシャの手掛かりに繋がるかもしれませんよ? 先ほど沼畔ニヴェルは、山火事や落雷で発生した灰や雨なんかを糧にする、と言っていたでしょう。しかし、ここ数日、この辺り一帯は晴れていました。つまり、沼畔ニヴェルが突然膨張した原因は、山火事である可能性が高い。山が燃えたということは、近場で竜族が暴れたとも考えられます。そうでなかったとしても、同じように推測したセルーシャが、竜族を探しにガロウたちの棲む山付近に行っているかもしれません」

 大股で歩み寄ってきたガロウが、エイリーンとリーヴィアスの会話に割り込んできた。

「勝手に決めるな! 俺たちも、獣呼ばわりしてくるヤツの力なんぞ借りるつもりはないぞ! よく分からんが、あのヘドロは干上がらせれば退治できるのだろう? だったらリーヴィアス、お前が魔術でどうにかすればいい。なんか、こう、バーンッと炎を吹き出して見せるとか、そういう派手な魔術も使えるだろう」

 肩を掴んできたガロウに、リーヴィアスは苦笑を浮かべた。

「そうやって当てにしてくれるのは嬉しいんですが……私は三種族の不干渉実現を掲げた最初の一人ですから、計画に非賛同の精霊族相手であっても、他種族を攻撃するような真似は避けたいんです。もう種族間で争うのはやめましょう、と言い出した人間が、事情があるとはいえ精霊族に魔力を行使すれば、信用を失うでしょう? 先ほども言いましたが、不戦協定は現状、非賛同者にはあまり効力を発揮できていませんし、だからといって私やガロウが反撃に出ることは、一層の不和の原因になります。だったら、手を下さずとも追い払えそうな同族のエイリーンに出てもらった方が、確実ですし穏便に事が済むでしょう。
エイリーンは、今は人の姿をしていますが、かつては北部一帯を覆っていた広大な死の森を治めていた大精霊です。私なんかよりもずっと強い力を持っていますし、そのエイリーンが後ろについていると知れば、きっと沼畔ニヴェル族も貴方たちの暮らしを脅かそうとはしなくなるはずです。
──人狼族のおきて一! 一族の絆は絶対、仔は宝! それを第一に守るべき長の貴方が、同胞の未来の安寧まで約束された選択をしない理由はないですよね?」

「……ぐ、うぅ……それは……」

 確かにその通りだと納得する気持ちと、不遜な精霊族エイリーンに借りを作りたくないという気持ちの間で、葛藤しているのだろう。
ぐるぐると低く唸りながら、ガロウは返答に迷っている。
いつの間にか当初の怒りを忘れ、まんまと丸め込まれているガロウの姿を見て、エイリーンは、胡散臭げな視線をリーヴィアスに送った。

「それに、人狼族に恩を売ることは、エイリーンにとっても損な話じゃないと思うんですよね」

 続けて、リーヴィアスは言い募った。

「ガロウ、もしエイリーンが沼畔ニヴェルを追い払ってくれたら、今度はこちらに協力してくれませんか? 私達、今話していた通り、エイリーンと同じ葬樹のセルーシャを探しているんです。姿形はエイリーンとほとんど同じで、そう遠くへ行ける移動手段も持っていないはずなんですが……半月ほど前から、行方不明になっていて。心当たりのある場所を巡って探しているんですが、なかなか見つからないんです」

「姿形が同じ……? ということは、お前の兄弟か?」

 エイリーンは、ガロウの質問を無視して、吐き捨てるように返した。

「いらん。情報を集めるだけならば、その辺の木に異変はないかと尋ねるほうが速い。セルーシャを知っているわけでもない、魔力も感知できない、こいつらに一体何ができるというのだ? せいぜい無駄に吠えながら走り回るくらいしかできんだろう」

 鼻面にしわを寄せたガロウを制して、リーヴィアスが答えた。

「いやいや、探しものをするのに、彼らほど心強い協力者はいませんよ。人狼族は、獣人達の中でも特に鼻が利く一族です。現にこうして、匂いを辿って私に会いに来たんです。セルーシャが山一つ、いや二つ分超えた先にいるのだとしても、ガロウたちなら気づけると思います。ね?」

「……まあ、天候や風向きにもよるが。何かを追跡するのは得意だな」

 気乗りはしないが、散々コケにしてきたエイリーンに対して優位に立てたことは、嬉しかったのだろう。
どこか得意げに胸を張り、尾をゆらりと揺らして、ガロウはぺろりと鼻先を舐めた。

「だが俺たちは、そのセルーシャとやらの匂いを知らん。匂いが分からねば、探すことはできないぞ。何かそいつの持ち物とか、身につけていたものとか、匂いが染み付いていそうなものはないのか」

「ああー……セルーシャの匂いは、エイリーンと同じか、あるいはエイリーンの衣に染み付いてるんじゃないですかね。二人は朝から晩まで、本当にずーっと一緒にいるくらい仲が良いので」

「そうなのか……。精霊族は、あまり仲間に執着する印象がなかったんだが、そういう連中ばかりでもないのだな。……仕方がない。どうしても見つからなくて困っているというなら、山の奪還後に協力してやる。精霊族に借りを作っておくのは癪だしな」

「ありがとうございます。ガロウならそう言ってくれると思ってましたよ」

「…………」

 エイリーンはまだ何も返事をしていないのに、リーヴィアスとガロウの間で、どんどん話が進んでいく。
先程まであれだけ牙を剥き出して唸っていたのに、ガロウはもうすっかりリーヴィアスに協力する気になっているようだ。
同じく懐柔されやすい思考回路をしているのか、あるいは、族長の決定が群れの総意なのか、他の狼たちも、特に不満を抱いている様子はない。
エイリーンは、彼らの単純さに呆れつつ、一方で、リーヴィアスの滑らかすぎる言葉運びに、一抹の警戒心を覚えた。

 リーヴィアスは、一体いつから話の流れを都合の良い方向に変える算段を立てていたのだろう。
三種族の和平を理由にグレアフォールにすり寄って、古代樹の一族を良いように動かしているという時点で、最初からきな臭い奴だとは思っていた。
とはいえ、所詮は人間で、弱い上に数十年後には死ぬ存在なので、葬樹そうじゅにとっては何の脅威にもならないと、歯牙にもかけていなかった。
だが、精霊族のみならず、獣人族ともこれほど深く繋がっていて、その生活様式や性質を理解しているとは──。
いや、一連の計算づくらしい行動の裏に何かあるのだとしても、今、人狼族に頼ることで、結果的にセルーシャが見つかる可能性が出てくるならば、自分は一旦この疑念は捨てて、リーヴィアスとガロウの関係を利用してやるべきなのだろうか。

 エイリーンは、セルーシャのように他者の感情を視ることはできない。
しかし、二人の心の内を見定めるべく、リーヴィアスとガロウをじっと凝視した。
不意に、こちらを見つめ返してきたガロウと目が合った。
その毛むくじゃらの手がいきなり伸びてきて、エイリーンの衣を掴んで引き寄せる。
濡れた鼻先が、くんくんと胸に押し当てられた。

 その瞬間、一気に臭ってきた強烈な獣臭さにウッと息を詰まらせると、エイリーンは、叫びながら指先をガロウの眉間にめり込ませたのだった。


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