「あーよかった、これで戦闘解除だね。
嘘だよキル、ゴンを殺すなんて。
お前がらしくないことを言うから、ちょっと試してみたんだよ。」


あのヒソカですらゴンを殺す、と言ったイルミに向かってさっきを飛ばしていたのだから、実行されたらイルミも無事ではなかっただろう。


「兄貴から何を言われたから知らないけど、お前は兄貴とは違う。
お前は才能のある立派な暗殺者だ。
そしてさっきのでわかっただろ?
お前に友達を作る資格はない、必要もない。
今まで通り親父や俺の言う通りに、ただ仕事をこなせばいい。」

「(可哀想に、暫くキルは使い物にならないな。)」


イルミの念と親父たちの刷り込みが頭を支配するはずだ。
そう育てられている。

そして試合は進んでいき、キルアはボドロを殺して失格となった。








その後合格者は別室に移動し、ハンターになるにあたり、諸説明を受けることになった。
席はイルミの隣に座る。


「あれ、顔はもういいの?」


俺としてはギタラクルの顔じゃなくてとても嬉しいが、ギタラクルで試験を受けてるのなら素顔は良くないんじゃないのか?


「試験には本名で出してるし問題はないよ。
それに今更でしょ。
そっちこそ俺に話しかけていいの?」


そう言ってイルミはチラリとレオリアたちの方を見る。


「ハンター試験も終わったし隠す必要ないな。」

「ふーん。
いやー、兄貴が止めに入るか冷や冷やしたけどよかった、邪魔されなくて。」


イルミの兄貴、と言う言葉に周りがざわつく。
特にレオリオがうるさくなっている。


「お前とは理由が違うけど、キルは家に戻すべきだと思ったから止める必要がなかったかな。」

「そうなの?」

「いくら変装してたとはいえ、ギタラクルとの実力差を測り間違えたからな。」

「あー、確かに兄貴その辺うるさいよね。」

「それがなかったらいくらでも止めに入ったかな。」

「うっわそれ本当?
よかったよそうならなくて。」


ネテロによる講習が進んでしばらくして、部屋のドアが開かれた。
入ってきたのは控え室で眠っていただろうゴンだった。
彼は力強くイルミに向かっていき、彼に怒りをぶつける。


「キルアに謝れ。」

「謝る?なにを?」

「そんなこともわからないの?」

「うん。」

「お前に兄貴の資格無いよ。」

「うーん、兄弟に資格はあるのかなぁ…。」

「友達になるのにだって資格なんていらない!」


そう言ってゴンは片手でイルミの左手を掴み、投げ飛ばす。
問題なくイルミは着地するものの腕はゴンに掴まれたまま握られ続ける。


「そこまでだ。」


ゴンの腕を掴みイルミの腕から外す。
そしてそのまま後ろ手に捻りあげる。


「アッシュさん!?
なんで止めるの!」

「弟の腕が折られそうだったからね。
流石に止めにも入るさ。」

「弟…!?」

「アッシュは偽名。
俺の本当の名前はヨルイ=ゾルディック、イルミとキルアの兄さ。」

「なっ…。」


これに関しては試験官もが驚きを隠せなかった。


「アッシュさん…いや、ヨルイさんもキルアに人殺しをさせてたってこと!?」

「まあそうなるのかな?
というか、それが仕事なんだから仕方ないと思うけど。」

「キルアはそんな仕事望んでない!
キルアのところに案内して。
キルアを連れ戻す。」


出会って日の浅いゴンが、俺たち家族よりキルアのことを理解しているように語られ正直不愉快だった。


「キルは自分で帰った。」

「でもキルアの意思じゃない!」


頑なに敵視してくるゴンに苛つき、思わず殺気がこぼれそうになった所で、今まで黙視していたらネテロが声を上げる。


「そのことなんじゃが、今審議しとるんじゃ。」


曰く明らかに試合中のキルアの様子がおかしく、その原因が試合中に暗示をかけられたからではないか。
だからイルミとの試合後にボドロを殺したのではないか。
見ようによってはキルアがレオリオを助けたように見えるため、不合格になるのはレオリオではないか。

暗示をかけられた、というのは正しい。
だがそれを認めるつもりもない。


「くだらない、どれも推測でしかない。
そんなことを言ったらクラピカとヒソカ戦はどうだ?
明らかにヒソカが有利だったのに何故ヒソカは降参した?
あんた一体何を言われたんだ?」

「答える義理はない。」

「それなのにキルの試合に対しては文句を言うのか。
それなら仮に暗示をかけていたとしても答える義理はないな。」


根拠のない憶測の話に出口が見えなくなってきたころ、ゴンが再び口を開いた。


「人の合格にとやかく言う必要はない。
自分の合格に不満なら、満足するまで精進すればいい。
それより、もしも今まで望んでいないキルアに無理やり人殺しをさせていたのなら!
お前たちを許さない!」

「ゆるさない、か…。
で?それでどうする?」

「お前たちからキルア連れ出して、もう合わせないようにするだけさ。」

「ふぅん…」


イルミは徐にゴンに向かって手を伸ばす。
その手には禍々しい念が纏われており、何かを察知したゴンは俺の拘束を振り払い背後に飛ぶ。

一旦落ち着いたところで、またもネテロが口を開き、合否を変えるつもりはないことが告げられた。
そして解散を言い渡されたため、ゴンに構うことなく出口に向かう。


「イルミはこの後すぐ仕事なの?」

「うん。
兄さんは?」

「親父に会いに一旦家帰る。
ついでにキルの様子見に行く。」

「まってよ!イルミ!ヨルイさん!
キルアのいった場所を教えてよ!」


あんな怒ってたのに俺たちに聞くの?
ちょっとゴンくんが理解できない…。


「…やめたほうがいいと思うよ?」

「誰が止めるもんか!
キルアは俺の友達だ!絶対に取り戻す!」


理解はできないが、興味はある。
キルは昔から友達が欲しかったが、ここにいるイルミが殺すか向こうが勝手に離れていくかだった。
ゴンはキルが人殺しでも友達だと言っている。
親父だってキルに友達ができることにいい顔はしないし、もしかしたら反対かもしれない。
でも可愛い弟の昔からの願いを叶えてやりたい気持ちもある。


「…ククルーマウンテン。
そこに俺たちの家がある。
キルもそこにいるはずだよ。」

「わかった、ありがとう。」


そう言ってゴンは駆けていく。


「兄さんさっきまで怒ってたよね?
何で素直に答えたの?」

「少し、彼に賭けてみようかなって」

「?」


キルとは生きてる世界が違うことに諦めないかどうかを。
実際に感じてもなお友達だと言えるかどうかかを。





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