「散々な仕事だった…。
いや、幸せだった、最初は。」


あのあと結局じいちゃんに見つかり仕事をさぼっていることに関しての説教という名のデスマッチが始まった。
なかなか決着が着かず、痺れを切らしたじいちゃんが、長期任務に向かった親父の手伝いに俺を回した。
その際先に同伴していたイルミが代わりに俺の仕事を引き受けることになった。
もちろん喜んで向かったとも。

親父と一週間一緒に過ごせてとてもとても充実した日々だった。
しかしアクシデントが発生したりと、話せば長くなるため割愛するが散々な仕事ではあった。

そして仕事が終わり、また引きこもろうと家路につこうとしたら、親父に次の仕事を言い渡された。

そう親父に。

はっきりいって親父に言われたら断れない。
事前に入ってた予定全てキャンセルしたっていい。
というかなんでもやる。
それを分かっててじいちゃんはイルミと俺をわざわざ入れ替えた。


「あの狸じじいめ…。」


そしてなんだかんだで3.4個仕事を回されたため、帰るのが遅くなってしまった。
親父が言い渡した仕事以外にも追加で回されるが嫌だったため、移動は全て公共の交通機関を利用している。
執事たちの送迎を利用して、じいちゃんやイルミに仕事を言い渡されたらたまったもんじゃない。
今もこうして観光バスを利用して試しの門までやってきた。
そうしたら丁度中から門が開いた。
出てきたのはキルアの友達だった。


「まだいたんだ。」


しかしそこにキルアはいない。
中から出てきたのにどういうことだ?


「ヨルイ坊ちゃん!」

「やあゼブロ。
これは一体どういうことだい?」


ゼブロが言うには、キルアに会うために今日まで修行し、ようやく試しの門を開けたらしい。


「へぇ…。
じゃあ約束した通り屋敷を案内しようかね。」

「えっ!?
そんなことしたらまた奥様やイルミ坊ちゃんに怒られますよ!?」


こう言うお家の方針とは違うことをやってしまうため、教育熱心のお袋やイルミにはよく怒られてしまう。
親父はため息をつき、酷い時はゲンコツも貰うが、お袋たちに比べれば愛があって好きだ。


「別に大丈夫だよ。
あ、これお土産の紅茶。
今度遊びに行ったときよろしくね。」

「いつもありがとうございます。」

「あ!ヨルイさん!!
試しの門は開けたよ!!
約束通りキルアの元に案内して!!」


そうして三人を引き連れて、実家へと向かった。














しばらく進むと、目の前に人影が現れる。
少女の形をしたそれは、明確にこちらのこれ以上の進行を拒絶した。


「ヨルイ様、これはどういうことですか?」

「キルの友人がわざわざ会いにきたんだよ。
その案内途中だからここ通っていい?」

「なりません。
奥様と旦那様、ましてや上司からキルア様の友人がいらっしゃる話は出ておりません。」

「この前のハンター試験で知り合って、キルが心配で来たみたいなんだ。
なんなら俺の客人ということで通してよ。」

「えっと…。」


見たところまだ見習いの彼女には判断に困ってしまったみたいだ。
どうしたものかと悩んでいれば、ゴンくんがカナリアに向かっていく。


「ちゃんと試しの門から入ったし、ゼブロさん達が道なりに行けって言ってくれたよ。」

「でも執事室が入廷を許可したわけじゃない。」

「じゃあどうやったら許可が貰えるの?
ヨルイさんが良いって言ってもダメだし、友達だって言っても入れてくれないし。」

「さあ?わからないわ。
許可した前例がないから。
ヨルイ様に関してはキキョウ様達からきつく言われてまして…。
ヨルイ様、申し訳ございません。」


そう言ってカナリアは俺に深々と頭を下げる。
そういえばキルアに関する命令は聞くなとかとか言われてるんだっけ?


「そういえばそうだった。
ごめんね、ここをどうにか通過してくれないと君たちをキルアのところに案内できないや。」

「んだよ長男のくせに使えねえな…。」

「レオリオ!失礼だぞ!
ヨルイさん、他に方法はありませんか?」


クラピカ君は常識を兼ね備えてるようで話がしやすい。


「うーん、俺今キルへの接触禁止されてるしなぁ…。
そこの見習いちゃんには悪いけど無理やりここを通るか、俺がキルをここまで引きずり出すかかぁ…。」

「しかしそのようなことをすれば…。」 

「間違いなく俺は怒られるね。」


間違いなく仕置きと称して拷問される。
火傷は治りづらいから嫌なんだけどな…。
念能力のおかげで跡が残らないからって容赦がない。


「…俺に任せて。」

「ゴン!」


徐にカナリアに近づくゴン。
彼女の脇を通り抜け用とした瞬間、手にあるステッキで容赦なく殴り飛ばされる。
それでも立ち上がって、カナリアに再び近づく。

殴られて、また立ち上がってを繰り返す。


「(いつまで繰り返すんだろ…。
実家の敷地内で野宿とか笑えないんだけど。)」


もう日が暮れ始めた。
カナリアの顔つきが変わり始めた。


「(これだから見習いは…。)」


結果的には本邸へと向かえるからいいが、ゾルディック家としては情が捨てきれてない使用人がいては困る。
その辺はきちんと躾けないといけない。
ゴトーに言っておかねば。

そして先ほどからこちらに近づいてくる気配が二つ。


「…キルア様を助けてあげて…。」


そう言ってついにゴンの侵入を許した見習いに向けて、近づいてきた気配の片方が何かを飛ばした。
それは見習いの頭に直撃し、そのまま見習いは倒れた。


「全く…使用人が何を言っているのかしら?
まるで私達がキルをいじめてるみたいに…。
ただの見習いのくせして失礼な。」


現れたのはやはりお袋とカルトだった。


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