ハプニング その4
明けて次の日、前日である。
今日は本番さながらの練習を行う予定だ。
全員がチアガールの衣装を着て、体育館の舞台前に集合している。
(夏希)「あたしの水着が見たいんだって。7枚も紙がきていた」
みんなも口々に「あたしのところにもきてた」「あたしにも」「あたしもよ」と言っている。
(夏希)「みんなの水着姿はともかく、本当にあたしなんかの見たいのかな」
(美江)「変な事考えるのよそう。今日が最後なんだから、さあ練習練習」
まず第一部から、実際に舞台を回しながら歌ってみた。
いやもう完璧の一言である。第一部はまったく心配しなくてよい。
6人はチアガールの衣装を脱いで、革ビキニの姿になった。
第二部の方が・・・立っているだけでいいはずの第二部の方が問題なのである。
練習開始。そして舞台が回り出すと『ああ、やっぱり』だった。
彼女たちの衣装が衣装だけに、ポーズがポーズだけに、
誰かが歩いていると隠そうとしてしまう。
ずれた水着をうっかり直してしまう。
いつの間にか手が下がってしまう。
なかなか集中できずに4回目、5回目、休憩を入れて6回目。
しかし指摘、修正を繰り返していくうちに、美しくすばらしい形に整っていった。
舞台上で6人が手足を大きく開いて立っている様は、舞台いっぱいに、きれいな星が立体的に並んでるように見える。
舞台の回転も加わって水着女性のメリーゴーランド版、と言ったところか。
演出としては万全だろう。
そして9回目、10回目あたりでは、全員が全く動かない。
同じ水着を着た人形がクルクルと回っているとしか、見えないようになってきた。
おみごとである。パフォーマンスの完成だ。
通りかかった1年生たちがギョッとしならが「あれ人間だよな。マネキンじゃないよな」と言っている。
そしてとうとう送別会の当日が訪れたのだった。
体育館に生徒たちがゾロゾロと集まってくる。
「なんだいあれは?!」
座席椅子の後ろには、カーテンを下ろした何かが置いてあった。
理恵たちの『檜舞台』となるべく設置された、例の円形ステージである。
好奇の目で見る者。カーテンをめくって中をのぞく者。いろいろと気になっていたようであるが、さて!
やがて定刻となり、校長先生の挨拶の後、1年1組からプログラムが始まった。
プログラムは順調に進んで行って、理恵たちの出番だ。
アらかじめチアガールの衣装に着替えて、ステージ後ろに集合していた彼女たち。
ササッとカーテンの中に入った。
待っていたようにアナウンスが響く。
「3年生女子クラス委員のみなさんの第一部、歌と踊りは体育館後ろの円形ステージで行います。
速やかに後方に移動してください」
生徒たちは椅子から立ち上がると、そそっと移動して円形ステージのまわりにへばりつくようにして座る。
この中での(水着姿!)パフォーマンスを楽しみにしている生徒も大勢いるに違いない。
彼女たちも気合が入っている。ぞくぞくしてきた。
(理恵:さあいくぞ!)
あかねも啓も久美子も美江も、そして夏希もみんな顔が紅潮している。
各自が定位置に立ってスタンバイのポーズを整える。
カーテンが徐々に上がり始め、6人の姿は足の方から徐々に見えてくる。
彼女たちの着飾った美しい衣装が完全に現れると、あたりはシーンと静まりかえった。
6人とも足を少し開いて、両手はだらりと下げて、首を横にかしげている格好に揃った。
カーテンは完全にあがり終えた。一瞬後、大音響とともに音楽が鳴りだした。
ついに第一部、歌と踊りのスタートだ。
6人同時、一斉にすべるような動きだしが、みごとに決まった。
演出要(かなめ)の円形舞台も軽やかに回りだしている。
舞台上を一糸乱れず、まったく同じに踊っている様は、見事というほかない。
客席からは「オー」とドヨメキが起こったが、すぐにおさまった。
写真を撮る音はどんどん増えていく。
6人は観客たちの、すぐ目の前を回りながら、軽快に歌いながら踊り続ける。
見ている者たちはみな、歌に踊りに衣裳に酔いしれた、と言ったら過言か。
手を胸の前で組んで見とれている女子生徒がいる。
目が衣裳にくぎ付けになっている男子生徒もいる。
さらには、彼女たちの、顔、体、さらにはその下を想像している、いかがわしい連中も多数。
そしてあっという間に、
(理恵:よし順調順調完璧。もう少ししたらフェニッシュだ。1、2、3、そぉれ!)
6人は思い切りバンザイをする。
手足を開いた姿勢、まるで立体万華鏡のように同じ星型模様が6つ、舞台上に連なっている。
第一部終了!
終わった。終わったのであった。割れんばかりの拍手がなりやまない。
カーテンが降りてきて、完全に舞台を覆うと、彼女たちはラストポーズから解放されて動き出した。
目を輝かせながら満面の笑みを浮かべている。
100点、いや120点、いやいやもっと!
完璧かつ最高の演技であった。
「うまくいったね」
あかねが、理恵が、啓が、久美子が、美江が、そして夏希が、
はしゃぎながら、フィストバンプやハグをしている。
しかし夏希はすぐに・・・なぜか下を向いてしまった。
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