妄想別館 弐号棟


ハプニング その5


アナウンスが鳴り響いている。
「3年生女子クラス委員のみなさんのパフォーマンスは第二部に続きます。5分ほどお待ちください。
なおパフォーマンスの妨げになりますので、カーテンから1mくらい離れてお座りください」
椅子があるわけではなく、ベタ座りで下から見上げるように舞台を見物するわけだが、
実際のところ、回転舞台から50pも離れていない。カーテンに顔をくっつけて遊んでいる者もいる。
ザワザワと興奮冷めやらぬ会場。時々叫び声も起きている。
観客たちはスマホやカメラを用意して、今や遅しとばかりに待ち構えてイる。
それはそうだろう。すばらしい歌の感動に加えて、2分間ではあるが、今度はセクシーな水着ショーが行われる。
期待や想像は高まるばかりである。
(理恵)「さあ、第二部が始まるよ。早く衣装を脱いで水着になろうよ」
夏希はうつむいていたが、キッとなって顔をあげると思い切ったように言った。

*****************  作 者 注  *****************
 さてさてこの後、この盛り上がった会場を、さらに盛り上げるハプニングが起きたのである。
 それは何であったのか!
 『衣装の下に水着を着けてくるのを忘れた』とか、
 『水着のひもがきれてしまった』とか、
 いろいろありそうだよね。
 ここの件(くだり)は第二部が始まるところからなのだが、文章演出の都合上、
 第二部の内容については、次ページ以降『その6』から『その8』に述べさせていただきたい。
 誠に恐れ入ることとは存じるが、そちらを御覧じくだされ!
 というわけで、以下は第二部が終わったところからである。
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曲が終わって、回転舞台も止まった。
観客からは嵐のような拍手が沸き起こった。
名残惜しそうな観客たちの前でカーテンは完全に降りた。
観客が見えなくなると、6人ともドッとしゃがみこんだ。
「恥ずかしかった」「疲れたぁ」
みんなぐったりしている。
でも、グズグズしてはいられない。まだ閉会式があるのだ。
外のざわめきはまだおさまらないが、生徒たちはすでに元の自分の席に戻っているようだ。
とりあえずチアガールの服に着替えて、カーテンの外に出てくると、再び割れんばかりの拍手が起こった。
6人は真っ赤になりつつ頭を下げ、決まりがわるいまま自分の席に戻った。
久美子と夏希は少し涙ぐんでいた。
(あかね、理恵、啓、美江)「?」
夏希が泣いている理由は何となくわかるが、気丈だった久美子が泣いている理由は・・・結局最後までわからなかった。
ともあれ、周りからすごい視線を浴びているのがわかる。
(理恵:なんかみんなの目つきが、さっきまでと違うな)
しかしほとんどが、感激や感謝、好意的な視線であった。
彼女たちが席に着くと、閉会式が始まり、やがて送別会は無事終了した。
しかし6人は教室に戻ってからも、浴びるような質問攻でもみくちゃだった。

先生に叱られるか、とも思っていたが、意外にそうはならなかった。
校長先生に呼び出されはしたが「大学生になったら、もう少し分別ある行動をね」と言って笑っていた。
それだけであった。別段お咎めもなかったのである。
そして数日後に卒業式挙行。
6人は無事学校を去っていった。

新学期が始まっても、しばらくの間は送別会の噂でもちきりであった。
いかがわしい写真集のようなものも出回っていたが、すぐに持ち込み・廻覧禁止となってしまった。
やがて彼女たちは伝説のような存在になって、長く語り継がれたという。
ただし理恵たちは、そのことを知る由もない。

追記
なぜ第二部の曲が校歌だったのか?
最初、彼女たちはさんざん揉めた。
「えーぇ!校歌なの、何か別の曲に変えようよ」と、いう意見が大勢であったが、結局、
・ 曲の時間が2分ちょっとと、非常に短いこと。
・ まじめさをくわえることにより、水着というふざけた行為を中和できるであろう、という観測。
・ 学校行事である送別会において、校歌は非常にふさわしい曲である。
ということで決定した。
なお、さんざん揉めて決めたにもかかわらず、第二部で校歌を清聴していたものはほとんど、いや教師も含めて1人もいなかった。
なぜかというと『全裸ショーをやっているのにそんなの聞いていられるか!』と、いうわけである。
せっかくの選曲も残念なことであった。

                                        ハプニング 完

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