妄想別館 弐号棟


倉庫部屋の怪異 その3


数日後のお昼休み。
直美が「榎本さんの失踪、少しおかしいことがあるんだって」
(玲子)「何々どんなこと」
(直美)「係長、書庫内からスマホで友達としゃべっていたらしいんだけれど、
『あれ、ちょっと待って。廊下で』と言った後、それっきりなんだってさ」
スマホは机の上にころがっていたらしい。
(るい子)「通話中に誰かに襲われたってこと」
(直美)「襲われたような形跡は全くないんだってさ。バックもきちんと残ってたし、物取りの仕業ではないだろうって」
しいて言うなら『建物内から忽然と消えてしまった』ということらしい。
(直美)「調べ物の書類や筆記用具、書棚から出した資料も机の上にそのまま置きっぱなし。パソコンも書庫の電気もつけたまんまだったって」
(るい子)「まだ会社の中にいるんじゃないの」
(直美)「そうかもしれないよ。通用門の防犯カメラにも係長が門を出て行った映像はなかったんだってさ」
(玲子)「それ何時頃の話」
(直美)「10時過ぎとか言ってた」
美穂が「あ」と、声を上げた
(るい子)「どうした」
(美穂)「いえ、なんでもない」
と、言ったものの、心当たりがある。
(美穂:10時を少しまわった頃か。私が建物を出たのが10時少し前。もしかして・・・)
美穂は下を向いて青くなっている。
(美穂:もしかしたら、あの夜「待ちなさい」と聞こえた声は係長だったのかもしれない)
美穂を呼び止めようとした後、係長は書庫に戻った。そして友達と通話している最中に何かが起こった。
あの夜のことは、まだ誰にも話していなかったが、思い切って、
(美穂)「みんなちょっと聞いてくれる」
美穂があの夜の出来事を説明すると、
るい子と玲子は「奇妙な話だね」と信じてくれたが、直美はまったくの否定派だ。
なおもワイワイとやっていたが、
(直美)「それじゃさ、これから倉庫に行ってみようよ」
(玲子)「えーあたしは来客があるし、それにちょっと怖いし」
(るい子)「あ、あたしも外に出かけなきゃなんないのよ。まあ戻ってくるけど」
美穂と直美だけで倉庫に行ってみることにした。
執務室の人には適当な理由を言って・・・

(直美)「なによ、全部本物のマネキンじゃないの」
美穂が見たという、人間(のような物)ではなかった。
(美穂)「おっかしいなぁ。たしかにプラスチックのマネキンだよね」
試しにたたいてみると『コツコツ』と、それらしい音がする。
直美は人形をいじくりまわしていたが「でもさこれ、えらくリアルじゃない」と、つぶやく。
顔のつくりはもちろんのこと、髪の毛、指の爪、さらには乳房の形や突起沕、おマ〇コのラインも本物さながらそっくりだ。
それどころか小さな傷痕、ホクロまでついている。
(直美)「ハー、これはすごいねぇ」
おまけに5体のマネキンはそれぞれ全部身長や体形が違う。すべてがそれぞれ別人だ。
(直美)「まさにリアルマネキンだね。でも全部違う作りっていうのはねぇ、ちょっと不思議だよね」
一体一体全部手作りってことだ。おまけにここまで凝った作り方とは。
(美穂)「特注品かな。すごく大変だったんじゃない」
美穂もあの夜は暗くて気がつかなかったが驚いている。
人形を1体1体動かしながら見ていったが、一番奥の人形で、
(美穂)「あれつ、直美ちょっと見てよこれ」
(直美)「ん、どうした」
直美はその人形を見ると「このマネキン、榎本さんにそっくりだね」と言った。
(美穂)「やっぱり、あんたもそう思うよね」
それは榎本さんの顔にそっくりに似せて作ったようなマネキンであったのだ。
いや、身長や体形も、彼女の服を脱がせればたぶんこんな感じだろう。
(直美)「まさかさぁ、榎本さんが人形になっちゃった・・・なんてわけないよね」
(美穂)「うーん、たぶんね」
(直美)「たぶん?『たぶん』って、何よ」
美穂もそンなことはあり得ないと思いたいが、彼女は実際に恐怖の体験をしているのだ。
今までの経緯を考えると『そうだよね。絶対にそんなことないよね』とは、素直に言えないのであった。
(直美)「まあ、いずれにしても、この人形は外に出してさ、誰かを呼んでこようか」
そうすることにした。

榎本さん人形を廊下に置いた、は、いいけれど、素っ裸で、性器もリアルについているので、
(直美)「あたしが誰か呼んでくるから、美穂はこの人形を何かで隠して見張ってて。
マネキンでもさすがに全裸のまま、ほっぽといておくわけにはいかないでしょ。
人が通りかかったら、面倒なことになりそうだし」
(美穂)「わかった、じゃあ待ってる」
直美は通路の向こうに消えて行った。
見送っていた美穂は「さてと、じゃあ何か掛けておくかな」
バスタオルのようなものがないかなと、マネキンを振り返ったが、
「ギャァッ」と、目を見開いて悲鳴を上げた、
「あぁぁぁーーーーーなぃぃぃ!!!」
人形がいない。
2、3歩後ずさりをして、頬っぺたに手を当てた。
「夢じゃないよね」
ない。消えた。この間と同じだ。
「そ、そんなばかな」
まさかとは思うが、美穂は倉庫の中に入り、マネキンを確認してみた。
やはり4体であったのは、なぜか一瞬安心してしまった。
「榎本さんマネキンを運び出したんだから、4体で合ってるんだよね」
その通り。しかし考えると、すぐにまた震えだした。心臓が止まりそうだ。
「今運んだマネキンはどこへ行ったんだ。あり得ないよ。マネキンが勝手に動いて消えたんだよ。
そんなバ・・・え、え?!」
何気なく倉庫にあるマネキンの顔を見てギョッとした。
榎本さんのマネキンだったのだ。
「それじゃ、なくなった1体っていうのは・・・」

美穂は廊下で直美が戻ってくるのを待っていた。
怖いので倉庫の扉は閉めている。
「うわぁどうなっちゃたんだろう」頭が混乱している。
「外に出した榎本マネキンは元の場所に戻っていた。
その代わりに置いてあった他の1体が消えてしまった・・・ってことか」
冷静に推察するとそういうことになる。
「誰が動かしたんだろう。いやそれは不可能だよね。ありえない。それにしても直美はおそいなあ」
もう30分は経っている。
美穂も事務室まで行くことにした。

(係長男)「え、成田さん、来てないよ」
(美穂)「え、そんなそんなぁ。30分くらい前ですよ」
(係長男)「いや、来てないと思うけどな。誰か成田さんが来たの知ってるか」
みんな首を振る。誰も知らないようだ。
女性の主任が顔をあげて「あたしはお昼過ぎからずっと席にいたままよ」
そして「成田さんが来たのは、あなたといっしょに倉庫のカギをとりに来た時だけですよ」
美穂は「そうですか、どうも」と言って引き下がるしかない。
部屋を出たが「どうしたんだろう」状況がさっぱりわからない。
しかし「ハッ、もしかしたら」
美穂は走った。倉庫に行き扉を開けてみた。
マネキンは5体あった。
「あー!やっぱり全部そろってるぅ」
一番端っこ、先ほどまで榎本さん人形の隣があいていたのに、今はそこに1体埋まっている。
恐る恐る顔を見ると「直美ぃ!」

すでに夕方、退社の時刻になっている。
美穂は帰ろうとしていた、るい子と玲子を呼び出した。
(玲子)「どうしたのよ」
(美穂)「いいからちょっと付き合ってよ、お願い」
2人は行き先が例の倉庫と聞き、かなり嫌がった。
しかし美穂も美穂で、いつななく強引だった。
倉庫の廊下前まで連れてきて、今さっき起きたことを説明し始めた。
(るい子)「あんた何言ってんのよ。そんなバカなこと」
しかし2体のマネキンを見た、るい子と玲子は絶句した。
「ちょっとウソでしょ」
美穂もこの光景をただ茫然と見ているだけだ。
(美穂)「どうしよう・・・」
(玲子)「どうしようっていったってさぁ」
その時、後ろの方から・・・

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