体屋さん その2
本間家のリビングルームにて。
(真理子)「え、また女性の失踪事件なの?」
(美代子)「いや違うの。今回は少し変なんだ」
捜索願が増えたと言っている。
本当に失踪した者もいるが、どうにもおかしな相談事が多い。
(美代子)「彼氏のようなのができて、そのまま出て行ってしまうんだってさ」
(真理子)「それの何が変なのよ。恋人でも愛人でも当人同士がよければいいじゃないの」
(美代子)「事はそう単純じゃないのよ」
親しい間柄の人、例えば家族や友人などから見ると、ある日ある時を境に、まるで別人のようになってしまうらしい。
(美代子)「記憶喪失とは思えないんだけど、本人の記憶がかなりおかしくなったりして、
そうそう、今までやっていた仕事の内容なんかもまったくわからなくなったり、できなくなったりとね」
(真理子)「ふーん」
(美代子)「それでさ、いきなり家を出て行っちゃったり、会社を辞めちゃったりするんだそうよ」
(真理子)「ふーん」
真理子は実情がわからず、実感がまるでわかない。
(真理子)「だって、間違いなく本人なんでしょ。
病気や事故で記憶が亡くなったとか、催眠術であやつられているとか、そういうわけではないんでしょ。
今までの生活がいやになって、放り出したくなったってことじゃないのかな」
(美代子)「そうかもしれないけれどさ。そういう人がここ数週間で30人くらい出ていて・・・」
次の日、学校に行くと友達の玲子と直美がやってきて「ちょっと驚きの話」と、言う。
(真理子)「なに?」
(玲子)「〇◇研究室のアキちゃんが同棲(どうせい)してたんだって」
(真理子)「え、あのアキちゃんが?」
良家の子で学力優秀。バイオリンが得意なおとなしい子である。
(玲子)「で、アキちゃんがさあ」
玲子が言うには、両親と大げんかをして、どこかの男のところに出て行ってしまったそうだ。
(真理子)「はぁ家出?結構やるね。でもそんなに好きな人がいたんだ。家出かぁ。結構一途でロマンチックだね」
(直美)「いや、それがすごく変なんだってさ」
アキちゃんはバイオリンの発表会が近々有り、毎日遅くまで練習をしていたそうだ。
ところが2日前、なぜかバイオリンが、何というか、全然下手、というより全く弾けなくなった。
調子が悪くて、などの理由ではなく、まったく弾き方がわからなくなってしまったそうだ。
アキちゃん曰く「もう、こんな面倒なことやめた」、だそうだ。
素行も極端に悪くなったとか。食事の最中に出かける。ジャージ姿で外を歩く。
言葉のアクセントも今までとどこかおかしいし、親に対する口のきき方も別人のようになってしまった。
体が不調というわけでもなさそうだが、病院に連れて行こうとしたらけんかになり、
「こんな家出て行く。男の家に行って、もうここには帰ってこない」と、なってしまったそうだ。
アキちゃんの両親は呆然としたらしい。
(玲子)「ね、あんたもおかしいと思うよね」
「はあ・・・」真理子は何と言ったらいいかわからない。
(直美)「なんでそうなったんだろうね」
(玲子)「狐にでも取りつかれた・・・なんてことはないよね」
しかし昨日の美代子の話を思い出した。
(真理子:なんか状況がそっくりだな)
(直美)「それでさ、ご両親が追いかけて行ったら、写真館のあたりで見失ったそうよ」
(真理子)「写真館?」
学校が終わり、真理子は写真館に来た。
館内を一通り見学したが、特に犯罪をにおわせるようなものは何もなさそうだ。
「ん?もしかして地下になにかあるとか」
なにげなくトイレに行くふりをして、地下への階段を降りて行った。
『立入禁止』を無視して、地下階まで来ると、
「ずいぶん長い廊下だな」
廊下の長さから考えると地下階は構造的に広すぎる感じがする。
スススと、あたりに気を払いながら進んで行くと、一番奥のつきあたりに扉がある。
カギはかかっていなかった。
部屋の中に入ると、
「あれすごい。全部ガラスの裸像じゃない。うゎ、よくこれだけ集めたね」
卑猥な感も無きにしも非ずだが、作品としては秀逸だろう。
見事である。結構な美人が全裸を晒している。
「裸体の陳列だけど、きれいだな」と、思った。
手を後ろに組みながら見ていくうちに、
「表裏とも写っているのはどういう作り方なんだろう」と、思った。
ふと、足を止めた。
「あれ、アキちゃんじゃない」
アキの全裸像が封じ込められている。
「アキちゃんのようなコでも、丸出しになるんだ?」
小さめのお〇ぱい。短めの割れ目。後ろにまわると、小ぶりで丸くふくらんだかわいいお尻がある。
顔を近づけながら見ているが、真理子は首をかしげて考えだした、
「なんかおかしいな。なんだって、アキちゃんはこんなヌードになったんだろう」
お金に困っている様には思えないし、男に貢ぐために脱いだ?
(真理子)「やっぱり解せないな。いったいどういうことだろう」
(ギヤマン)「よく来たな真理子、いやスーパーガールR」
いきなり名前と正体を呼ばれた。
いつの間にか、男が立っている。
(真理子)「ん、あんたは?どこかで見たことが有るような無いような」
(ギヤマン)「覚えていてくれたかな。お前たちに殺された、ガラス細工師の弟さ」
(真理子)「あっそうか、なんか知ったような悪人の面影があると思ったわ。
あいつは自爆で死んだんじゃないのよ。まあいいや。
で、なんなのよ、あたしに復讐でもするっていうの」
(ギヤマン)「そのとおり。決着をつけてやる。一言、言っておくが・・・」
このガラス板は人の魂がはいっていること。
割れたらその人間は死んでしまうこと。
その他、呪術ガラスについて説明している。
真理子は驚いた。
(真理子)「はー、信じられないな、そんなこと」
(ギヤマン)「すぐ信じられるようにしてやる。
でも今言った通り、ここで暴れると大変なことになるよ」笑う。
「クッ」真理子は一歩下がる。
(ギヤマン)「スーパーガールRに変身しろよ。呪術の本当の力を見せてやる」
言われるまでもない「変身」と、叫ぶと、
青いベネチアンマスクに銀色のビキニコスチュームに身を包んだスーパーガールRが立っている。
(真理子)「この人たちを元に戻してもらうわよ」
(ギヤマン)「フン、ここは僕のアジトだよ」
一歩二歩とさがり、身を翻(ひるがえ)して隣の部屋に逃げ込んだ。
「あ、待て」と、追いかけて部屋に飛び込んだとたん、バタンと後ろの扉が強引に閉まってしまった。
「あっ」、扉が閉まると同時に、バタンバタンとガラス板が、目の前を塞ぐようにして床から起き上がるように現れた。
あっという間に、ガラス板に四方をかこまれてしまっている。
退路もふさがれて周りにはガラス板。
そしてガラス板何枚かが、同時に倒れ掛かってきた。
(真理子)「あ、し、しまったぁ」
それらのうちの1枚を、思わず手を出して押さえてしまったのだ。
- 2 -
*前次#
物語の部屋 目次へ