挑戦 人間円筒 その2
さて当日。
今にも降り出しそうなどんよりとした曇空のなかで運動会は始まった。
順調にプログラムは進み、お昼を食べて午後の競技開始である。
薫は進行係の当番になっていて忙しい。
「100m走に出場の人は、あの白線の内側で待機していてくださぁい」
「1年生は玉入れが終わったら、速やかに客席の後ろに退場をお願いしまーす」
メガホンをもって大声で叫びまわっている。
(お手洗いに行きたいんだけどな)
やっと一息つけて、トイレに行こうとしたら、某先生に呼び止められた。
「リレーのバトンが一本足らんのだが、持ってきてくれんかな」
「は?(それは小道具係に頼んでほしいな!)」
再びトイレにと思ったら、別の先生から、
「この案内放送を至急放送室までお願い」
「え?(あたしは雑用係ではないんですけど!)」
余計な雑用に忙殺されているうちに、クラス対抗の創作ダンスの部が始まってしまった。
(ま、すぐに終わるでしょうから・・・)
結局我慢することにした。
プログラムは、どんどん進んでイき、途中まではスムーズだった。
ところが薫の前のクラスで、ハプニングが起きた。
そのクラスもパフォーマンスで人間ピラミッドを組み入れたのだがうまくいかない。
何回も失敗し、失敗しては再度挑戦を5回くらいやっている。
(さっさとあきらめろよ!)
恨み節がおもわず口から出る。
うすら寒く、雨もポツリポツリと降ってきた。
(いやだなぁ。うー、なんか冷えるし)
結局15分くらい余計に時間がかかってしまった。
(大幅に伸びたな)
観客席からは拍手喝采であったが、薫にとってはうらめしい限りである。
(今の間に、トイレに行ってくればよかったか・・・)
だがしかし、トイレに行っている間に自分のクラスの番が始まってしまってはまずいので、
結局、待機場所でずっと我慢して待っているしかなかったのだ。
(誠二郎)「おし、がんばろうぜ」
薫も土台になる6人に、
(薫)「つぶれないでよ」
(誠二郎)「ああ、まかせとけ。薫こそ落ちるなよ」
曲が流れだしてダンスが始まった。
ダンスの中盤までは薫と6人の男子は気を付けの姿勢で、踊っている連中の後ろにひっそりと控えている。
ひっそりと・・・だが薫はそんな状況にはない。
(しまった。もれそうだよ)
薫はなんとなく手で股の所を押さえたいのだが、気を付けをしていなければならない。
だらしない格好だと減点されてしまう。
(うう!)
なんとなく曲に合わせて、体をくねらせかけたり、前かがみになりかけたり、足をぎゅっと閉めたり。横の6人が気を付けの中1人だけ変な様子で動いている。
しかし見ようによっては、7人中紅一点が踊っているのもパフォーマンスの類(たぐい)か。
残りのクラスメートはダンスの佳境に入り、薫たち、いざ出番だ。
6人の男子が二組に分かれ、円筒をサット組んだ。
ここまで完璧。
あとは薫がこの上に登ればいいわけだ。
ことは簡単そうに思える。
(う、もれそう)
おそるおそる、誠二郎の肩につかまりよじ登ったが、一旦止まる。
股の所に刺激を与えたくない。
降りてしまった。
(誠二郎)「おいおい何で降りるんだよ」
(薫)「だってさ」
そしてうつむいて手で押さえる。
(誠二郎)「早く登れよ」
(薫)「わかってるよ」
再びそーっと誠二郎の肩につかまり腰に足を掛けて、
(誠二郎)「よしいいぞ」
誠二郎の円筒の上にフラフラと立った。
次にもう一組の方に足を掛けた。
これもうまくいった。
薫は、今、両方の円筒に足を掛けてユラユラと立っている。
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