妄想別館 弐号棟


報仇雪恨の巻 その5


(碧)「どこだ、ミスターN。出てこい」
碧はたった1人で先へ先へと進んで行く。
じゃまな手下は手当たりしだいに倒し、廊下の扉を片っ端から開けていると、
(ギヤマン)「おいこっちだ」
(碧)「あんたは?あっ、ギヤマン」
(ギヤマン)「そのとおりさ」
(碧:彼もスーパーガールが苦労して捕まえたんだっけ)
しかしあっさりと脱獄されてしまった。
ミスターNも気になるが、こいつもかなりの悪党だ。
(碧)「仕方がない、まずこいつからだ」
(ギヤマン)「こいつからとはご挨拶だな。ほらどうした、おまわりさん。こっちだぜ」
彼が逃げ込んだ部屋はガラスだらけだった。
(碧:なんだってこんなところに?)
非常に動きにくい!
わざわざ邪魔なものを置いてある部屋に逃げ込むとはね。
もちろん格闘なんかできるわけもない。
(碧)「なんなんだ?このガラスは?じゃまだな」
(ギヤマン)「さあ、なんだろうな?当ててみな」
(碧:なんかあるのかな?罠とか・・・あっ)
と、思い出した。
(碧:妖術ガラスか。触ると魂を吸い取られてしまうんだったな。
そっか、これに絶対に触ってはいけないわ)
碧が注意深く一歩踏み込むと、ギヤマンは一歩下がる。
(碧)「待ちなさいよ。真理子を殺したのはあんたなの」
ギヤマンは笑いながら少し驚く。
(ギヤマン)「あんた真理子の友達だったんだ。
直接やったのは僕じゃないが、まあ、知恵を貸したのは僕だな」
碧は「なんだとぉ」といって飛びかかったが、
「おっと」、彼はよける。
(碧)「やっぱり、じゃまだな。よーし」
碧は手をかざして念力でガラス台を倒していく。
床に倒れたガラスが次々と砕け散る。
ギヤマンは少し啞然と見ていたが、
(ギヤマン:すごいなこの女)
スーパーガールでもないのに、こんなことができるとは。
鬼ごっこのような状態が続くが、場慣れしているギヤマンの方が少し有利だったようだ。
それにやはり超能力の使い過ぎだ。
フラフラしだして目まいがしだした。
足を滑らし、よろけたときにガラスを押し付けられてしまった。

ハッとしたときにはすでにガラスの中だった。
(碧:あれ、か、体が全然動かない。まさかガラスの中に・・・)
さらにギョッとした。
(碧:あ、あたしが!)
自分の体が目の前にだらしない格好で仰向けに倒れている。
(碧:もしかしてやられちゃった・・・のかな?)
ギヤマンは高笑いをしながら、
(ギヤマン)「ザマないな、真理子と同じように引っかかってやんの」
そう、碧の魂は全裸の直立姿勢でガラスの中に封じ込められてしまった。
彼はガラスの妖術を得意気に話している。
碧は彼の話を聞いているうちに、
真理子がこの術で体を取られてしまったことを初めて知った。
(碧:なるほどなぁ。そういうわけだったのか)
(ギヤマン)「真理子の魂も最後は粉々に砕けたって話だぜ」
それを聞くと碧はハッとした。
ふざけるな、お前たちは絶対許さないと思うが、
(碧:いったいどうすればいいんだ)
焦りはするが、どうしようもない。
ガラスの中の彼女は何の興味もなさそうな無表情のままだ。
ギヤマンは楽しそうに見ている。
(ギヤマン)「何か考えてるかもしれないが無駄だよ。あんたはもう写真と同じだからな。瞬きすらできないだろう」
まったくその通りである。
(ギヤマン)「なによりも警官の体っていうのはいろいろと役に立ちそうだしな。ほしかったんだよな」
(碧:・・・)

ギヤマンはまだいろいろと話していたが、やがて小瓶をとり出してきた。
魂の複製を作る呪液だ。
(碧:グズグズしてるとあたしの体も取られてしまう。
いや、でもあたしならばできるかも)
(ギヤマン)「へへ、なかなかしまった体をしてるじゃないか。
でも胸が少し小さいかな。割れ目ももう少し長い方がいいんだけどな」
(碧:大きなお世話だよ。なんだよ、どこを見てんのよ!)
ギヤマンはじっくりと品定めをするように、ガラスの中の彼女を舐めるように見ていたが、
(ギヤマン)「それじゃそろそろあんたの体をいただくとするか。
自分の体が乗っ取られるのをじっくりと見ているがいい」
その後でそのガラスを砕いてやるからな」
彼が碧の口を開けて、呪液を注ごうとしたとき、
グッタリしていた碧の体が起き上がり、両手がいきなり動き出し、
(ギヤマン)「え、え、何これ?!」
小瓶をギヤマンから奪い取った。
(ギヤマン)「え、なんだ。どうしたんだ?」
彼女は彼を押さえつけて呪液を彼の口に注ぎ込んだ。
ギヤマンは「オエーッ」と、口を押えている。
彼は体力的にも戦闘能力的にも大しことはなさそうだ。
一方的に碧の体に殴られている。
ギヤマンは何が何だかわからない。
恐怖の顔で「ど、どうして体が勝手に動くんだ。ばかな、そんなばかな」
もちろん碧の魂はガラスの中だ。まばたきさえもしていない。
最後に壁に向かって彼を投げ飛ばした。
ギヤマンが動かなくなると。
碧の体はガラス台に近づいてきて触れた。
(碧)「フゥ、元に戻れた」
血だらけのギヤマンはまだこの現象がわからない。
(碧)「それはだね」
(ギヤマン)「あ、何をする。あーやめろ、やめろぉーー」
碧はギヤマンをガラスに押し付けてしまった。
ガラスにはギヤマンの裸体画ができあがった。
碧は少し覗き込んで「ヤッダー」と言って笑った。
ガラスの中に向かって、
(碧)「簡単な事だよ。あんたサイコキネシスって知らないかい」
ガラスの中から念力で、魂の抜けた体を操ったのである。
(碧)「まあ、自分の体だし、結構簡単だったね。あんたはしばらくそうしてなさい。
さて、ミスターNはどこだろう」

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