妄想別館 弐号棟


報仇雪恨の巻 その7


(Y)「いた!待ちなさいミスターN」
逃げるミスターNと、追うスーパーガールイエロー。
(Mr.N)「お前たち、早く、早く、片付けろぉ」
ミスターNはとなりの部屋に逃げ込んでしまった。
(Y)「あ、待てったら」
阻むようにして、またしても多数の手下が飛び出してくる。
彼女の両手のガントレットが光りだした。
掛かってくる手下たちを、光る手刀で、殴りつける。
だがしかし、まるであとからあとから湧いてくるようだ。
さすがにイエローもうんざりしてきた。
(Y)「きりがないな。よし」
彼女は右手を頭の上に上げてブルンと振ると、光の棒のような物を持っている。
さらに振ると鞭(ムチ)のようにしなり出した。
このムチで手下たちを打ちのめしていく。
しいて言えば『ビームウイップ(光のムチ)』とでも呼べるようなものを。
「ィヤーッツ!」と声をあげて腕をまっすぐに突き出すと、
棒のようになって相手の顔を打ちつける。
引き寄せて大きく腕を振ると、
今度はクルクルと相手の首に巻き付いて引き倒す。
自分で意志を持った生き物のようにユラユラとしなったり棒のように伸びたりと。
光のムチはシュンシュンとうなり、前後左右と周りの手下を次々と倒していく。
変幻自在にムチを操る技、これもスーパーガールイエローの能力の一つである。
手下がようやくいなくなった。
(Y)「まったく邪魔なんだから。あんたたちは」

ミスターNが逃げた部屋に飛び込むと、
(Y)「なんだここは?」
一歩、二歩と進んだが「少し用心するかな」
彼女の体全体も、うっすらと光りだした。
イエローはホタルのように光りながら近づいて来る。
ミスターNは「こいつは人間か?」
あきれたように見ていたが、
(Mr.N)「ケッ」
彼が壁のボタンを押すと、
(Y)「あ、ガラスが」
ガラスの板が動き出して、あっという間に彼女に触れた。
ミスターNは「してやったり」と、思ったのだが、
(Mr.N)「あれ?」
なぜか彼女は、あっさりとガラス板をすり抜けてしまった。
(Mr.N)「え、すり抜けた?今のって・・・いったいなんなんだ」
彼女はガラスの向こう側に立っている。
ガラス板は次々に押し寄せてくるが、いずれもスルリスルリと。
(Y)「なんなのこのガラスは?」
何事もなかったように振り返ると、
(Y)「さあ、おとなしくしなさいよ」
まだ、彼女の全身は光っている。
(Mr.N)「いったいこいつは、この女は・・・?」

建物突入時の移動術や先ほどの光のムチもそうだが、
彼女は光に関して特化した能力を持っている。
今回は自分の体を光のようにしてガラスをすり抜けたのである。
(Mr.N)「ば、化け物だぁ」
(Y)「化け物とは失礼ね」
イエローは「しかしこのガラスは邪魔ね」
右手を前に出しかけて、首をかしげながら、
(Y)「うー、光線では割れないかな。それじゃ電撃で」
足を開き、胸の前で両手を組み「えい!」と、腕を前に突き出す。
両手のガントレットからすさまじい放電が起こり、手前のガラスが台ごと吹き飛んだ。
次々に放電を放ち、部屋の中のガラスは全部割れてしまった。
ミスターNは呆然と立っている。
(Y)「さあ、どうす・・・」
と言いかけた時、放電の影響か部屋の電気が消えてしまった。
(Mr.N)「あっ!」
(Y)「あっ!」
室内はまさに『鼻をつままれても分からない』ように真っ暗だ。

真っ暗闇の中、息を殺しているうちに、お互いの位置もわからなくなった。
彼は「暗闇に紛れて逃げおおせるか?」と、考えてみたが、やはり無理であろう。
ガラスの破片で足場も悪いし、音も出るし、出口に着くまでにたぶん彼女につかまる。
つかまれば腕力ではかなうまい。
ミスターNは覚悟したのだが・・・
(Mr.N)「ん?」
先ほどからイエローは押し黙ったままだ。
攻めてくる気配がない。
彼はスマホをとり出しライトをつけた。
かろうじてあたりが見える程度の明るさである。
暗闇の中、そっとイエローを見てみるが何か様子が変だ。
まるでソリッド液を浴びたように固まっている。
足を開いて両手を前に突き出して、正面を見据えたまま動く気配がない。
ソリッド液を浴びた・・・いやこの部屋の中でそんなことは起きていない。
ミスターNは「???」だ。
しばらく見ていたが、やがて恐る恐る近づいてみる。
しかし、ミスターNが近づいて行っても、彼女ははまったくの無反応。
(Mr.N)「どうしたっていうんだ?」
先ほどまでの勢いがないどころか、人形のように動かなくなっている。
ミスターN、我ながらおかしいとは思いつつも、
「おい、どうした。しっかりしろ」と、声をかけてしまった。
彼女の顔を覗き込み、顔の前で手を振ってみる。
(Mr.N)「やっぱり動かないか」と、いうよりは完全に固まってしまっている。
思い切って、イエローの胸を触って、グリグリと揉んでみたが、揉まれるままだ。
調子に乗り、ビキニのボトムを台座の破片で力まかせに突いてみたが・・・
彼女のボトム、一番大事な部分は破片の先っぽに押されて思い切りへこんでいる。
イエローはガラス台を割るときに構えた格好のままだ。
開いたままになっている足を閉じようともせず、突かれるままであった。
(Mr.N)「こ、こんなことって・・・?」
さすがのミスターNもこの現象はまったくわからなかった。
実は、新スーパーガール、いやベネチアンマスクは、強力な超能力とともに、弱点も併せ持っているのである。
変身状態のイエローは、まわりにある程度の明るさがないと動けなくなるというものであった。
停電で室内が真っ暗になり、彼女は動けなくなってしまったのだ。
ちなみに、グリーンは植物があるような環境でないと、まったく超能力が使えない。
先の通路や室内の場合がそうである。
ただし彼女は生身で妖術は使えるが、美穂はそのような術は何も持っていない。

とにかくチャンスである。
スマホのライトを頼りに、ミスターNはイエローを突き倒して逃げ出した。
イエローは『ドターン』と、仰向きにひっくり返った。
両手を上に上げたマネキンのようになって倒れている。
ミスターNが部屋を飛び出し、通路をしばらく走った時にやっと非常電源がついた。
イエローは、ハッとして起き上がり、
(Y)「あたしはいったい・・・」
彼はすでにいない。
(Y)「しまった!」
首を振って目を覚ますようにして、あわててミスターNを追いかけた。
このハプニングで、ミスターNはうまく逃げおおせた・・・と、思われたが、
残念ながら、今回は彼にツキはなかった。
廊下の角を曲がったところで、碧とバッタリ鉢合わせになってしまった。
(碧)「あ、ミスターN。こんどこそ!」
碧は飛び掛かり、彼を押し倒した。
馬乗りになって殴りつけていたが、追ってきたイエローに止められた。
(Y)「もういいでしょ」
彼は気を失っていた。
ようやく碧は彼を放して起き上った。
(碧)「本当は殺してやりたいほどだけど・・・逮捕します」

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