スーパーガールのお酒 その3
夏美が店の裏に回ると、
(店員)「こちらです」
そこは酒蔵であった。
棚には日本酒の瓶がズラリと並んでいる。
奥の方には酒樽もたくさん置いてある。
だけど・・・
実際のところは酒造所のようである。
醸造用の大きな酒桶がたくさん並んでいる。
奇妙に思えるのは、床には大きなプラ船がいくつも置いてあること。
その中は透明な液体でなみなみと満たされている。
店員は何も聞いていないのに「このプラ船の中はすべてお酒なんですよ」と言っている。
(夏美:もしかして、それって違法じゃないの)
と、一瞬、思ったが、それよりも美穂を探す方が先だ。
夏美は「あの、美穂はどこに?」
(店員)「あちらです」
(夏美)「え。あっ!」
奥のプラ船の中に、黄色のベネチアンマスクが沈んでいる。
夏美は驚き、あわてて近寄る。
覗き込んで、マスクを拾おうとしたら、
「あ!」
いきなり突き飛ばされて『バシャーン』と、プラ船の中に落ちてしまった。
(夏美)「なにするのよ!」
彼女はプラ船の中で起き上がったが、全身びしょ濡れだ。
見るとまわりを男たちが取り囲み、プラ船から出られないように威嚇(いかく)してくる。
男たちの中で一番偉そうな男が「ククク」と、笑っている。
何か険悪な雰囲気が漂い始め、殺気も感じだした。
夏美はマスクを手に取り『変身』と唱えて、スーパーガールグリーンになった。
プラ船のまわりを男たちが油断なさそうに取り囲んでいる。
グリーンもすぐに応戦できるように油断なくかまえつつ、
(G)「いったいどういうつもり」
(赤巴蛇)「俺の名前は赤巴蛇(はだ)というんだ。よろしくな」
彼はフンと鼻を鳴らし、
(赤はだ)「おわかりだろう。俺たちは酒の密造組織さ」
彼らは碧たちがここを調べに来たと勘違いしたようだ。
(赤はだ)「まあ、現場を見られちゃ生かしてはおくわけにはいかないなあ。スーパーガールさんよ」
「酒の密造って?」と、思う間もなく、グリーンはガクッとプラ船の中に倒れこんだ。
(G)「あ、あれ。力が入らない」
立とうとしたが、両足で体をうまく支えることができなかった。
プラ船の中で手をついて、四つん這いの姿勢になってしまった。
(G)「ど、どうしたんだ。何で立てない?」
赤はだはニヤニヤしながら、
(赤はだ)「どうして立てないのかって?わかりやすく説明してやる。おい」
男の1人が「へい旦那、持ってきましたよ」
見ると酒瓶を抱えている。
(G)「はぃ?一升ビンって、お酒?えっと、それは?」
こんな緊迫した場面でなんか間が抜けている流れだ。
いったい何のマネだろうか、と、グリーンは思った。
しかし・・・
(赤はだ)「あのな、そのプラ船の中の液体は、スーパーガールを溶かしてお酒にする特別な薬液なんよ」
(G)「え?」
よく見ると、一升ビンのラベルには達筆で『青 柳 美 穂』と、書かれていた。
(G)「は?え、え、それってまさか」
(赤はだ)「そう、スーパーガールイエロー、青柳美穂さんは、この通り、おいしいお酒になりました」
美穂は体を溶かされて、一升ビンに詰められたお酒にされてしまったのだ。
(G)「えーーー!」
夏美はあわててプラ船の外に出ようとしたが、
(G)「???」
手でプラ船の縁(ふち)をつかめない。おかしい。変だ。どうしたんだろう?
右手を見たとたん、ギョッとなった。
(G)「な、ない!」
右手はひじのあたりから、葛湯(くず湯)のようになってトロリ、トローリと溶けている。
溶けて液体になったしずくが、ポタポタと流れ落ちる。
見てる間に手はどんどん短くなっていくが全然痛くない。血もまったく出ていない。
いや血は出ているが、液体に触れるとすぐに透明になってしまうのだろう。
だから気がつかなかったのだが、これは致命的であろう。
この液に触れた体は、白っぽくなって、すぐに透明になって溶けていくのだ。
あわてて体を見ると、両足も含めて下半身もすでになくなっている。
(G)「え、ない!体がないよぉ。え、そんなぁ。助けてえ」
スーパーガールにもあるまじき、悲鳴を上げてしまった。
プラ船から出ようとしたが、もう手遅れ、ダメである。
ズルリと体勢を崩してしまい、プラ船の中にうつ伏せに倒れてしまった。
手足がないので起き上がることができない。
顔を液面に打っ伏し(うっぷし)たまま、少しもがいたが、そのまま動かなくなった。
すぐに完全に溶けて後には、ベネチアンマスクだけが沈んでいる。
(赤はだ)「おい、クスリを入れろ」
合図で、男の1人が何かの粉を入れた。
そして数人でプラ船を持ち上げ、大きな鍋の中に夏美を溶かした液体を流し込み、
火にかけて熱し始めた。毒の成分を飛ばすのであろう。
5分程沸騰させて濃縮して、市販のアルコールを加えて、強制発酵させて終わり。
一升ビンに入れて、おいしいお酒の出来上がりだ。
スーパーガールを原料に造られたお酒。
別の男がビンのラベルに筆で『島 瀬 夏 美』と書いた。
(赤はだ)「これで、イエローとグリーンのお酒ができたな。
もう1人いたあの女もスーパーガールなのかな?」
新参者の碧は、まだ悪人どもに完全には周知されていないようだ。
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