妄想別館 弐号棟


凸凹渓谷の決闘 その3


その翌日も美穂と夏美はパトロールをしている。
(美穂)「犯人てどんなやつだろうね」
彼女たちはまだ犯人の顔を見ていない。
(夏美)「さあてね?」
多少武術の心得がある者でも、イエローとグリーンの2人掛かりなら捕まえられるだろう。
2人は自信満々である。
「見つけたら今度こそ、とっ捕まえてやる!」と、息まいていたら、
「あっ!」
突然、その変態があっさりと、しかも目の前に現われた。
「あれ?2人になっている?」
今日はピーイーがツバーンも連れてきている。
2人ともマスクとサングラスをして、さらにツバーンはシルクハットをかぶった洒落た男になっている。
美穂は気がつかないが、夏美はすぐに気がついた。
ツバーンからは妖気がプンプンしている。
夏美が「美穂、帽子をかぶっている方は妖怪だよ」と、叫ぶ。
と、同時にスーパーガールに変身した。
男たちと対峙すると、
(Y)「あんたたちが、最近よく出没している変態犯人ね」
(Pe)「変態とはエライ言われようですが、まあその通りですよ」
(Y)「もう観念しなさい」
(Pe)「実は、お願いがあってきたのです。私のコレクション集めの邪魔をしないでいただきたい」
(Y)「寝言は寝て言いなさい。女性の敵め!」
(Pe)「やっぱりダメですか。それじゃしかたがない」
フフフと笑いながら、
(Pe)「ついでにあなたたちのナニもいただきましょう」
(G)「ふざけんなって!」
イエローとグリーンは構えた。
それを見てシルクハットの男も無言で虹の玉を胸の前に突き出した。
イエローは、それを目掛けて光のムチを振った・・・のだが・・・
まさに男のところに届こうとした時に、
(Y)「あれ?」
ムチの半分が消えてしまった。
(Y)「あれ?どうしたんだろ?」
もう一度やり直し。仕切り直しで振ってみるが同じだ。
イエローは呆然と立って手元を見ている。
(Y)「いったいどうなっているの?」
グリーンが気がついた。
(G)「あ、あの玉だ!」
例の玉、やはり抜群の威力を持っていた。
スーパーガールの超能力を簡単に中和してしまうらしい。

驚き呆気にとられている彼女たちの前に、ツバーンがスイと出てきた。
何をするのかと思っていると、玉を前に突き出して、
(Th)「〇〇◇〇✕▢▢▽▽」と、意味不明な呪文を唱えだした。
そして「これでよし」と、言ってすぐに後ろに下がる。
「?」
イエローとグリーンはその瞬間に『ガクン』と、感じた。
(Y)「何、今の?」
しかし体には別に異常は無いようだ。
(Th)「ピーイーさん、これでスーパーガールたちは、もうただの女ですよ」
(G)「何言ってんのよ」
(Pe)「ハハハ。あなたたちの超能力は無くなったようですので、遠慮なく今度はこちらから」
今度はピーイーが十字架を突き出して叫ぶ。
(Pe)「青柳美穂の●ン●と乳●を切り取り、我が至宝と成したまえ」
イエローは「え!は!何を!」と、真っ赤になって叫び返す。
(Y)「道の真ん中で、何てことを言ってんのよ!」
これにはツバーンも同意見だが、お得意様の前だ。もちろん黙っている。
ピーイーはニヤリとしてイエローを無視する。
すぐにグリーンに向き直り「それじゃあんたも」
(Pe)「今度は、島瀬夏美の●●●と●●を切り取り、我が至宝と成したまえ」
グリーンは、どなりつけるのを忘れてあきれたまま見つめている。
(G)「あんたたち、そんなことしてどうするつもりなの」
(Pe)「いや、もう結構です」
男たちはくるりと振り返ると、背広を着た格好のまま、全速力で逃げ出した。
逃げていく様・・・
すこぶる無様だが、頓着しないでひたすら走っていく。
彼女たちは、まさか逃げだすとは思ってもみなかった。
いままでいろいろな悪人たちと戦ってきたが、
卑猥な一言だけ言って、何の手合わせもせずに逃げだす者なんて始めてだ。
しばし呆気にとられていたが、みすみす逃がすわけにはいかない。
(G)「あ、こら、待ちなさいよ」
2人は追いかけようとしたが、なにかおかしい。
(Y)「力が、力が全然出ないよ?」
100mも走らないうちに息が切れてしまった。
(Y)「どうしたっていうの。なんで?」
ふたりとも苦しそうにゼイゼイしている。
(Y)「ダメだ、もう走れない」
(G)「ええい、もう!」
グリーンは手を振って木の葉返しで男たちの足止めしようとするが、
(G)「あれ、術が・・・術が全然効かない」
イエローも高速移動の術を試みるが全く駄目だ。
高速移動をしようとした途端、つんのめって「うゎっ」と、転んでいる。
要するにだ、
「超能力がなくなっちゃったぁ!」
男たちはあっさりと逃げてしまった。
(G)「どうしよう」
(Y)「どうしようって言ったって・・・」
超能力どころか普段の体力や能力も吸い取られてしまったらしい。
体中がだるくて、なにか猛烈な運動をした後のような疲労感がある。
そして気がついた。
「あーーー!ない!」

夜も更けている。
碧は別の案件の資料を調べるために署内に残っていたが、
(碧)「どうにも気になるな」
落ち着かないし、仕事が手につかなくなった。
(碧)「2人はうまく変態犯をつかまえてくれてるだろうか」
しばらく考えていたら、ドアをノックする音がして、部下が入ってくる。
(部下)「あの、こんな時間ですが副署長にお客が見えてます」
(碧)「お客。誰?」
(部下)「青柳さんと島瀬さんとか」
(碧)「あ、すぐに通してください」

「やられたよぉ」と夏美が泣きそうになっている。
(碧)「やられたって・・・ちょっと、詳しく話してよ」
先ほどの出来事を話す。
(碧)「それじゃ、超能力ごとなくなってしまったの」
(美穂)「そうなんだよ」
いくら変身してもダメだそうである。
いや変身はできるが力が全くでない。
ベネチアンマスクをしたビキニスタイルのただの女性・・・
なにかのコスプレみたいになってしまった。
(碧)「そんなことってあるのかな。でも怪我がなくて、とりあえず無事でよかったね」
(夏美)「無事じゃないんだよぉ」
大事な部分も取られてしまったと言っている。
(碧)「はあ?」
(美穂)「スーパーガールになっても復元しないんだよ」
いくら変身しても、とられたまんまで、復元のきざしはまったくない。
(美穂)「なんとか手を貸してよ。このままじゃやあたしたちの人生は・・・」
美穂まで泣きそうになっている。
それは困ったね。と思うと同時に、
(碧:なるほど。被害者の女性たちの心境は、こんな感じだったのね)
(碧)「わかった。でも何か作戦を考えないと、ちょっと厳しいよね」
さあどうするか?
(夏美)「あんただって、迂闊に近づいたら簡単にやられるよ。あの玉は強力な呪具だよ」
しかし、夏美でもやられるような敵に対して、どうすればいいのかな?

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