妄想別館 弐号棟


悪人、ゲームで遊ぶ その5


(G:あたしは生きてるの?)
気がつくと、元の位置に直立している。
足を吹き飛ばされて動けなくなったところまでは覚えている。
その後は意識が飛んでしまった。
絶対に死んだと思ったのになんで生きてるんだろう?
いったいこの世界はどこなんだろう?
体が動くと理性がなくなってしまうのはどうしてだろう?
しかし思考が及んだのは、そこまでだった。・・・ゲームが始まった。第二回戦だ。
フッと、理性が飛んで自然にファイテングポーズになると、
(G:頭に来るな。よくもやってくれたわね。今度はこっちから、それっと)
右手を前に突き出している。ブルーには見せたことがない技だ。
手のヒラに粉が載っている。
(B:なにをする気だ?)
と思う間もなく、
(B:あ、なんだこれは!)
体中に黄色と紫色の斑点が浮き出てきて意識を失った。
倒れてもう動かない。ブルーは死んでいる。
先ほどの毒花粉の術である。
(G:なーに?ブルーって結構弱いのね)
いやグリーンが強すぎるのだ。
実際、植物のあるところでは、グリーンはほぼ無敵かもしれない。

第三回戦が始まった。
ブルーは水しぶきをはって毒花粉を避けるようにしている。
隙を見て水鉄砲を撃ってくる作戦のようだ。
(なによ、そんなちゃちな手。あんたは水しか使えないんでしょ。それなら)
ブルーの足元から、突然植物の根のようなものが伸びだして、彼女の体中を覆いだした。
ブルーは逃れようともがくが、あっという間に首から下は根っこだらけになってしまった。
(G:それっ!あの女の体から水分を全部吸い取ってしまえ)
瞬殺であった。もう次の瞬間にはブルーはミイラのようになってしまった。
ブルーの水を出す力も無尽蔵のように思えたが、グリーンの水を吸い取る根っこの量や、吸い取る早さも、これまたすごかった。
干からびてピラピラになったブルーは、パサリと倒れて動かなくなった。

第四回戦。
ブルーは最初から水鉄砲を全圧で噴きかけてきたが、
「う!」と、唸った。
グリーンはこれもまた、今まで見せたことがない、ブルーと同じような構え方をした。
イエローも電撃を出すときにこの構え方をするが、足を開いて両手を前に突き出している。
ただし呪文を唱えているのは2人の場合とは違うようだ。
たちまち大風が吹き起り、ブルーは動けなくなった。
水圧を弱めれば吹き飛ばされる。
ブルーもグリーンも両手を使って、まるでお互いを押さえつけているような感じがする。
しかしグリーンは手がふさがっていても、口で呪文を唱えると、ブルーのまわりにカラフルな草が生えだした。
(B:何だこの花は?)
どんどん伸びて絡みついて来るが、ブルーは手がふさがっていて払うことができない。
そのうち全身に絡まってしまい、ブルーは痺れてしまって、吹き飛ばされて・・・

(ウイス)「ほらもう3勝だよ。3勝1敗」
(ワイン)「そっちのは、すごい必殺技が多いよな。まあいいや。続けようぜ」
再びスタートの画面に戻り、2人は両端に立っている。
ブルーの理性も戻っている。
(B:お願いグリーンさん、やめようこんなこと。いったいどうしたらいいんだろ)
無駄であった。すぐに体が動きだし、第五回戦の開始である。
思考は一瞬で切り替わり、理性が飛んで、もう戦闘のことしか考えられなくなっている。
ブルーは(この女は強い!)と思った。
グリーンの術で、ほとんど一瞬、なんだかわからないうちに負けている。
さらにグリーンの攻撃は四方八方、時には地面の中からも攻撃してくる。
手がふさがっていても呪文の力もある。
加えて、水の能力はグリーンに対して相性が悪いようにも思った。
水の能力は再生もできるし威力もあるし、簡単に勝てるとブルーは思っていたのだが。

ブルーは警官の首を落とした水刀(ウォータージェット)で、グリーンに切りかかった。
グリーンは自分の前の草を一瞬で大きく伸ばして盾のようにする。
盾は幾重にも分厚く重なり、ブルーの水刀でも一気に切り裂くことができなかった。
水刀はグリーンまで届かずに、ブルーは動きを止められてしまった。
(B:うっ、じっとしているとやられる)
すぐに飛び下がり、体勢を整えようとするが、グリーンはすでに何か次を唱えている。
(B:また新しい術か!)
ブルーは完全に草の盾で囲まれてしまっている。
逃げることができないうちに、今度はススキのような草が、ピシと音を立てて切りかかってきた。
ススキの葉は鋭く手を切りやすいが、それを鋼鉄のように固くできるらしい。
すぐに鋭い葉が盾の隙間から入り込んできて、ブルーの体を切り裂いてしまった。
ブルーはバラバラになったが、すぐに体を再生して、再び水刀を突き入れてきた。
再生能力はブルーの得意業である。
グリーンの懐に飛び込むようにして、彼女の顔を少し切り裂いた。
グリーンはまったく動じずに飛び下がる。
(G:よくもやってくれたわね!)
右手を前に突き出した。
(B:?)
地面から芽が出て茎が伸びて・・・緑色に大きく膨らみ、奇妙な袋のような変な形になった。
(B:なんだこれは?)
ブルーは最初のいくつかは水刀で切り倒したが、次々と生えてくる。
そして気がついた。
(B:もしかしてこれは食虫植物!)
口を開けて、いくつかが同時に襲い掛かってきた。
かわしきれずに『カポ』と、ブルーは飲み込まれてしまった。
これでブルーは1勝の後4連敗。
再びリセット、スタートのポジションに立っている。
まだ5敗には至っていないが、ブルーはついに・・・
(B:・・・・・)
記憶が完全に消えたアバターとなり、もう何も、考えることも、思いつくこともできない。
ワイスとワインのコントローラーの通りに動くだけの電子データーになってしまった。
ウイスは六戦目を始めようとしたが、
(ワイン)「くたびれた。ちょっとお茶にしようぜ」
(ウイス)「なんだよ。中東半端だな」
(ワイン)「いやいや、グリーンは強すぎるぜ。少し休んで策を考えさせろよ」
(ウイス)「しょうがないな。でもまあ、そうするとしようか」
機材のスイッチも切らずに、そのまま出て行ってしまった。
小一時間は戻ってこないだろう。

画面は再びリセットされたので、グリーンは意識が戻った。
しかし彼女も、生身の時の記憶がほとんど残っていない。
(G:あの人は誰だろう)
目の前に女性がボーッと立っている。
(G:ここはどこだろう。あたしはなんだろう。なにをしているのかな。
あなたはだれですか。あれ、しゃべれない)
(B:・・・・・)
グリーンは不思議そうに、見つめている。
(G:あなた、名前はどこ。どうですか。あれ、しゃべれないな。ここはどこだろう。あたしはどこだろう)
(B:・・・・・)
立っている女性は全く動かない。
(G:あれはお人形さんかな。なんで立ってるのかな)
思考も意味もだんだんおかしくなっていって、
(G:あなたはなにをやってるのかな。どうしたんだろ。あれ、どこでなんだっけ)
グリーンの頭の中は、靄でもかかったようにぼやけてしまった。ついに、
(G:ここは、あれ・・・)
(B:・・・・・)
(G:変な。どうも・・・)
(B:・・・・・)
(G:・・・・・)

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