ダイヤモンド警備指令 その3
配備の警官には話をつけてあるので、イエローとグリーンはフリーパスだ。
予告状の内容は周知済みであるが、まさか彼女たちが怪盗の片棒を担ぐなどとは、誰も思っていない。
今までの実績と信用がある2人なのであるからして。
2人が金庫室に入ってきた。
(碧)「あ、スーパーガール、ご苦労様」
(G)「ビルのまわりは今のところ異常ないよ」
(Y)「碧、いや、湯村さんの方はどうなの」
(碧)「今のところなにもない。でも何かなぁ・・・どうやってここまで入ってくるつもりなんだろ?」
これだけ厳重な中をである。
(G)「それに、どうやって金庫を開けるんだろ」
碧はチラリと金庫を見る。それなりに厳重なものである。
電子ロック方式、担当者認証も必要で簡単には開きそうもないのに。
しかし、予告まで出すほどなのだから自信があるのだろう。
3人とも首をかしげるが、
(碧)「とにかく、あと1時間ほどで予告の時間だね」
イエローとグリーンはうなずくと、
「それじゃ、あたしたちはまた外を見てくる」
(碧)「お願いね」
2人は部屋の外に出て行った。
1階のロビーまで降りてくると、
「それじゃ、またあとで」と、2人は別れた。
イエローは室内、グリーンは入口の外を見張ることになっている。
建物の外に出たグリーンは、
(G)「さて、姿を隠して見張っていようかな」
あたりを見渡すとちょうどいい具合に茂みがあった。
ビルの入口からはかなり離れていて、警備の警官もおらず薄暗くなっている。
(G)「あのあたりがいいかな」
茂みのあたりまできた時に、突然「あなたがスーパーガールグリーンね」
(G)「え?誰だ!」
振り返って構えると、黒づくめの女が立っている。
(G)「あんたは?ははぁ、あんたが予告状の怪盗ね」
グリーンはこの時に大声をあげて応援を求めるべきであったのだろうか?
いや、そんなことをしても無駄だったと思われる。
なぜか?それはすぐにわかるであろう。
目の前の女は、なにかするでもなく、ただニコニコと立っているだけだ。
本当にこの女が犯人なのかな?
迷いも少しあり、グリーンはそこに油断が生じている。
(T)「あたしの名はティンカーといいます。よろしくね」
(G)「やっぱり犯人か。大胆不敵ね。こんなに厳重な警備の中、ダイヤを盗めると思ってるの」
(T)「もちろんよ。なんで?」
(G)「なんでって・・・それは、それはね・・・だってあなたそれは・・・」
グリーンはなぜか言葉が詰まってしまってうまくしゃべれない。
怪盗とグリーンはしばらく無言で向き合っていたが、
グリーンは動悸がして、息も荒くなっている。
最初はティンカーを睨みつけていたのに、目も合わせられなくなった。
キョロキョロと目線を逸らしては、合わせるを繰り返しだした。
怪盗は「もういいでしょう」と言って歩き出していく。
グリーンは「あ、いやっ。待て。いや待ってぇ!」
あわてて追いかけるが、もう胸がドキドキだ。
(G)「ど、どうしたっていうのかしら?」
怪盗は振り向きながら「ついておいで」
(何を言ってるんだ!)と、思うのだが、口を出た返事は「はい」だった。
2人は並んで歩きだした。
グリーンは手をつなぎたい衝動に駆られている。
(G:ど、どうしたっていうんだ、あたしは)
グリーンは胸に手を当てながら、顔が真っ赤になっているのを感じる。
(G)「あ、あなた本当にダイヤを盗もうってういうの。そうは、そうはいかないわ」
(T)「どうしてよ。あんたはあたしのことが好きなんでしょ」
(G)「え、え、そんなこと・・・なんでわかるの」
もちろんご推察の通りである。
ミス・ティンカーは最初からこの状況を想定していた。
グリーンは狙われていて、茂みに近づいた時に、惚れ薬をたっぷりと浴びていたのだ。
おまけに粉は痛覚性、痒覚(ようかく)性のあるものではない。
つまり痛くも痒くもない。彼女は全く気がつかなかった。
グリーンはどんどんティンカーに夢中になっていき、まわりのことが目に入らなくなる。
(T)「いいこと、あんたはあたしの手伝いをするの。いいね」
(G)「え、ええ、もちろんです。ティンカー様。そのかわりあたしをかわいがってよ」
(T)「よしよし、言うことを聞いたらかわいがってやる」
(G)「わーい!」
グリーンはティンカーの腕にぶら下がるようにじゃれついている。
ティンカーの第一次の作戦は成功である。
イエローはロビーの光の中に隠れていた。
まわりには警官が多数巡回しているが、明かりの中に、体を完全にぼやかしたイエローには気がつかない。
(Y:あれ?)
グリーンが入ってきた。
暗がりの方が得意な彼女は外を見回ると言って出て行ったのだが。
(Y:なんかあったのかな)
グリーンはキョロキョロしていたが、イエローのそばに近づいてきて、
(G)「イエローちょっといいかな」
イエローがスッと、光の中から現われる。
彼女の技を知らない人が見たらギョッとするだろう。
実際何人かの警官は驚いている。
(Y)「どうしたのよ」
(G)「上の部屋で、少しおかしなことがあったの、ついてきてくれない」
「わかった」イエローは何の疑いもなくついて行く。
途中の警官も敬礼をして通してくれる。
そして「この部屋よ」
2人が入るとグリーンはドアを閉める。
イエローは室内を見回しながら「この部屋がどうしたのよ」
「あのね」グリーンは部屋のスイッチを切ってしまった。
室内は真っ暗になった。
「あ!」という間もなく、イエローは動かなくなってしまった。
(Y:グリーン何をするのよ!)
体は全く動かないが意識はある。
グリーンは真っ暗闇の中、イエローに近づいて行き、
(G)「はい、どうぞ」
ティンカーから受け取った粉を、イエローの頭から振りかけた。
(Y:あ、何するの!何よこの粉は)
グリーンは粉の説明をする。そして、
(G)「とりあえず、ティンカー様があたしたちに指示があるんだって。来いってさ」
そしてグリーンが再び部屋のスイッチを入れる頃には、
(Y)「あたしのティンカー様はどこにいるの」
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