妄想別館 弐号棟


ダイヤモンド警備指令 その7


その時だ。合原巡査が戻ってきた。
(巡査)「すみません。通してください。お願いします。ちょっとどいてください」
周りの者は呆気にとられて彼女をただ見送っている。
この乱闘のさなか、場違いな彼女の声に、そのまま部屋の中まで通してしまった。
碧は叫んだ!
(碧)「合原巡査、カバンの中のビンを床にたたきつけて割って、早く」
「はいぃーっ!」
合原巡査は悲鳴のような返事をし、何人かをつきとばし、最後は転びながらもビンを割った。
こちらも粉が舞う。
「ん?」ティンカーたちは怪訝な顔をする。
(T)「何をやってるんだ?」
碧はイエローをつきとばして両手を解放し、粉がさらに部屋中に舞うように煽った。
超能力で風が起きる。粉が部屋中に廊下に舞い上がる。
ティンカーの粉の後に碧の粉が舞って・・・
結果は『ドンペリ』を使った碧の粉の方が強力であった。
そこにいた全員がおかしくなっていった。
碧は『頃は良し』と、思ったのだろう。
這うような格好になって、ゼイゼイあえぎながら、
(碧)「全員あたしの言うことを聞くように。
ティンカーとその仲間はおとなしくお縄につくように」
そう言うと「わかりました碧様」となった。
(碧)「あは、よかった」

いや、あまりよくなかった・・・と、思える・・・のだが・・・
(課長)「副署長、あなた様すごいんですね。超能力も使えるんですね」
(碧)「いや、その、その話はしないように、あっ」
警備課長の顔が赤く、いや真っ赤になっている。
(碧)「なによ、あなたどうしたの、ちょっと、あ」
いきなり合原巡査が抱きついてきた。
(巡査)「副署長好き!大好きです」
(碧)「ちょっと何言ってんの。よして、あー」
警官たちも次々に飛びかかってきて、
「副署長、自分も好きであります」
「自分もです」
「ぜひ付き合ってください。お願いします」
なかには「結婚してください」という者まで現われた。
(碧)「ちょっとぉ、いいかげんにしなさいよ。ゲッ!」
イエローとグリーンも泣きながら、
(G)「碧様ごめんなさい。あたしバカだった」
(Y)「もう碧様のためなら、身も心も捧げます。なんなりとお命じになって」
(碧)「すごい効き目だな。えっ!」
廊下にいた警官たち50名ほどもなんとなく言動がおかしい。
ブツブツ言いながら近づいて来る。
室内にも30名くらいいる。
みんな目つきが尋常ではない。
取りつかれたように何かを見ている・・・何をと言えば、もちろん・・・
碧はゾッとした。鳥肌が立ってきた。
襲われるとはこういうことか。
超能力で追っ払うにも限度がある。
(碧)「ちょっと、ちょっとあんたたち、変な事考えると罰するよ。懲戒処分にするよ」
碧は必死で説得しようとするが、ほとんどの者が、いや全員が迫ってくる。
「懲戒でもなんでもいい、副署長大好きです!」
後ずさりして逃げようとするが、ダイヤの盗難を防ぐために用意された部屋である。
逃げ場所などあるはずがない。
碧は隅っこに追いつめられてしまった。
(碧)「なんで、なんであたしの言うことを聞かないのよ。あーっ、もしかして!」
碧はこの時になってやっと気がついた。
ドンペリの効き目が強すぎたのだ。薬の効き目がすでに、
服従薬 < 惚れ薬、いやもはや、服従薬 <<<<< 惚れ薬、となってしまっているのだ。
誰もが『碧が好き』ということしか頭に思い浮かばなくなっている。
襲われないためには、もはや逃げるしかない。
(碧)「こうなればテレポーテーションを使って・・・あっ!」
イエローが目をトローンとさせながら両足をつかんでいる。
嬉しそうに「どこへ行こうっていうの、あたしを置いてさ」
グリーンも腕を押さえながら、首に手を回してくる。
(G)「逃がさないわよ。あたしの碧様」
(碧)「あああ・・・!」
押し倒されると同時に、室内にいたほぼ全員が一斉に飛びついてきた。
「副署長大好きぃ!」
(碧)「うわー、もういいから、わかったわかった。助けてぇ」
碧は押さえつけられて下敷きになっている。

ダイヤは無事であった。
怪盗たちとは、2人のスーパーガールも含めて、ほとんど碧が1人で戦っていたようなものだ。
署長からは褒められて表彰もされたが、ゲッソリだ。
(碧)「こんなの二度とごめんだよ。散々だったわ」
美穂と夏美は小さくなって、
「申し訳ありませんでした・・・」
美穂はさらに、
「だって・・・夏美が悪いんだ」
夏美は何か言い返そうとするが、
「ごめん悪かった」
(碧)「まあとにかく、ダイヤが無事でよかったわ」
スーパーガールも悪人にならなくて済んだし。
もしダイヤがとられていたらどうなっていたやら。


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